12.これからだって…今だって!!

第12話

ずっと想っていて初めて身体を重ねられて凄く痛かったけども嬉しくって幸せでこれが好きな人と結ばれる幸せなんだと実感。

休暇中はサンとイチャイチャ出来ると思っていた。

これが私にとっては学生生活最後の休みであるから楽しみたいと思っていた。だから邪魔が…

そりゃあ、おモテになると思ってますからだいぶ?いやっ少しは……うん。

少しは耐性があると思ってましたけどもまさか

隣国の王女殿下に気に入られるなんて思っても見なかった。

「サン、そなたには愛おしい婚約者が居て私には好いている男性が他の女を好きになっている」

「そうですか」

ナサイウ王女殿下、それはサンの事が好きって事ですよね?

「………っ」

聞きたくないのに。この場を離れたい。

「サン、そなたはそれをどう思っている?」

「リーネ」

サンが王女殿下の言葉を無視して私を抱きしめるから慌ててそして王女殿下の前だから阻止しようとしても手に力が入らない。

「サンロシスト様、おやめ下さい」

「やめない!!お前の震えがなくなるまで」

「ーーっ!!」

震えてる?私…震えてる?そう言われて震えていた事に気がついて目頭が熱くなった。

「ふふっ。今日は帰る」

「俺の家より賓客館で話しましょう」

「そのほうがいいね。邪魔されずにゆっくりサンと話せるとからね」

ナサイウ王女殿下が立ち上がったけど私はナサイウ王女殿下を見れなかった。

「そなたはサンの婚約者として振る舞えるのか?」

体から血の気が引く。

息が上手く出来ない。私は、私は…と混乱して

心が停止する。

すると優しく抱きしめてくれて頭上から愛おしい男性の声が遠くから聞こえる。

「リーネ、可愛いリーネ、息をするんだ」

「……っ」

ガチガチと震えている私の口の中にサンの指が構わずに入り指を噛んでいくけど構わずに私を落ち着かせてくれている。

「リーネ、大丈夫だから。俺がいるよ。リーネ」

サンの暖かい温もりと「大丈夫だ」という言葉にガチガチと震えが徐々に止まっていき涙が溢れる。

「サッ…」

「リーネ、ゴメンな。ナサイウ王女殿下の件

リーネの耳に入れたくないのに…」

「ごめんなさい。ごめんなさい」

サンの背中に手を回して抱きしめて謝る。

「俺こそごめん。リーネ、可愛いくって愛おしい俺のリーネ」

「サン!サン」

私が弱くってごめんなさい。

貴方の側にいる事を許されない立場なんだろうと思うけどもそれでも貴方と離れたくない。

私がまだ子供だからちゃんとした淑女ならきっと堂々とサンの側に居られるんだろうか。

あと1年で20歳になる。サンと同じ20代になる。

「サン、サン」

「リーネ。可愛いリーネ。愛してるよ。大好きだよ。俺のリーネ」

「サン」

その言葉が欲しくて抱きしめて抱きしめてもらってわがままを言っている子供みたいになるけど

安心したいの。

「リーネ、愛してるよ」

「サン、私も愛してる…」

キスを深く何も考えられない様に奥深くまで来て。

「んっ…」

背中から首に手を回して抱き締めるとサンもそれに応えてくれる。

「リッ…」

「サン、サッ…」

貴方に満たして欲しいの。


大人になりきれない未熟者の私を癒やして。

大人になりたい未熟者の私を愛して。


結局、5日間の休暇はナサイウ王女殿下の出現で

無しになってしまってジャック殿下とマリスナ様に凄く謝られたけど「大丈夫」としか…。

「あらっ?もう帰って来たの?喧嘩した?」

「喧嘩してないわよ。お母様」

「おめでとう。あらっ、内緒だった?」

「ありがとうございます。では改めてお母様」

お母様の底抜けの明るい雰囲気が大好き。

「サンロシスト・スゥーカ様と婚約しました。

本当は、サンも挨拶に来たかった…って!!」

「リーネ、義母に挨拶する時は俺もって言っただろ?」

「サン?!忙しいから私だけって思っていたのに」

サンがお母様の後ろから出てきてビックリした。

「お母様!?」

「サンロシスト様も挨拶したかったんですって」

お母様が笑って何かをボソッと言ったけど私は聞こえなかったけどサンは一瞬だけどビックリした顔になった。

「サンタナ…本当に妻にしてるわよ」

「お母様??」

「何でもないわ。親友に報告していたの」

「そう。お母様の親友はどんな方だったの?」

お母様が、嬉しそうに笑顔で言った。

「そうね…。剣術が上手くって何事にも懸命に取り組んでいたわ。だから恋も応援したの」

「お母様、その方は?」

「そうね。子供を産んで少ししたら風邪が元で亡くなったわ。それまで会っていたんだから」

悲しそうに笑うお母様の手を握った。

「お母様、私はその方の分まで幸せになります」

「そうね、そうして。長年のその親友の夢でもあったから」

お母様は、私を見てからサンを見て手を差し出したからサンが手を握った。

「リーネを、お願いします。この子は頑固者で亡くなった夫によく似てるから」

「お父様ってよりお母様だと思うけど?」

頬を膨らませて言ったらお母様は笑顔だった。

「サンロシスト様、聞きたい事があるなら言ってくださいね」

「ありがとうございます。義母さん」

サンもお母様も側に居てね。


「じゃあ、結局の所5日間そのナサイウ王女殿下?に邪魔されたって訳ね…」

「ええっ。そうかな…」

学校が始まってしまって5日間ぶりにフィーネルに会って話しをしていた。今はお昼休み時間だ。

「とりあえず、おめ。良かったね」

「ありがとう。晴れた婚約者になりました」

恥ずかしかったけど報告した。細かい事は省きましたけども。

「隣国の姫って…確かさー…」

「うん」

「フィーネル」

フィーネルが何か言おうとしたらマリスナ様が居て止めた。

「フィーネル、ダメよ」

「ごめんなさい。気をつけます」

フィーネルはマリスナ様に謝ってマリスナ様も空いている椅子に座る。

「リーネ」

何故か青ざめた顔をしたマリスナ様。

「マリスナ様?」

「リーネ、心して聞いてちょうだい」

マリスナ様が私の出している手を握って一呼吸置いて言う言葉が耳から入ってこない。

どうして?何をしたと言うの?

「どうして…?」

こんな時こそ側で底抜けの明るさの雰囲気で笑っていてほしかった。

朝出る時は、いつも通りで帰ったら笑って待っていてくれる。

「行かなくちゃ……」

フラッと椅子から立ち上がってフラフラと歩く。周りが見えない。私の帰る所はそこ。

「リーネ!!」

フィーネルがマリスナ様から了承を得て私を支えてその元へ行く。


「………」

学校から徒歩10分くらいの街中は、ザワザワしていて騒がしかった。

「……嘘だって…」

倒れ込んでいるのを見て足が体がガクガクしてきた。

「リーネ!!」

愛おしい男性の声が聞こえてきてその腕の中に入った。

「見ちゃダメだろ?」

「お母様が…倒れ込んでるから。早く起こして…」

「リーネ!!」

「サン…お母様を、起こして。今日はお母様と一緒に夕食を作る約束を交わしたのよ?」

お母様と一緒に作る約束をした。今日も。これからも。ずっと。私の婚約を喜んでくれた。

「お母様…起きて…」

お母様の側に行きたいのにサンに阻止される。

「サン、離して。お母様を起こして一緒に帰るんだから!!」

「リーネ、一緒に帰れるけどもう無理なんだ」

「サンまで、そんな事言って〜!!お母様、早く起きて!!早く帰りましょう」

サンがギュッと握って私を離さない。喋らない。私は不安を覚えてお母様を見ると流れているそれが応える様に広がっていく。

「お…母様……」

「リーネ」

「いやッ…いやっ…いやっ…」

誰か嘘だと言って。血が流れていて倒れ込んでいるのはお母様じゃないと誰か言って欲しい。

「ごめんなさいね。私に向かって来た賊が貴女のお母様を狙ったらしくって…」

「!!」

ナサイウ王女殿下が扇を拡げて喋りながら私とサンの側に来た。

「サン、私を城まで送りなさい」

「ナサイウ王女殿下、私が送ります」

カルト様が横から入ってきてくれたけどもナサイウ王女殿下はイラッとして扇をパチリっと音を立てて閉じた。

「私は、サンに言っている。賊が吐かない限り私を護るのが役目でしょ?」

「………」

サンは、無言で私をギュッと抱きしめて髪の毛に一房キスを落としてナサイウ王女殿下を見送りに向かった。

「リーネちゃん」

「カルト様、お母様の所に行ってもよいですか?」

「綺麗にしてからリーネちゃんに渡すから今は堪えてくれ」

「ふっ…」

涙が後から後から止まらずに流れる。発狂したいのに発狂出来ずにまだ信じられない。

「今日はサンロシスト様も来るかしらね?」

「サンは忙しいから2人でいいじゃん」

「そうね」

そんな会話をして朝別れたばかりだった。

「………」

綺麗にしてもらい眠っているお母様を見て涙が流れる。

「お……」

膝から崩れる。

「お母様っっーー!!お母様!!起きて!!起きて!!」

ゆすっても叩いても起きないお母様。

「リーネ、義母さんがゆっくり寝れない」

「サ…‥ン…お母様、起きないの…お母様…」

「リーネ!!」

意識が遠のいていく。このままお母様の所に行けるかと目を瞑るけどきっと「来るな」って怒られそうね…と思いながら意識を飛ばしてしまった。



「ここはッ…どこ?」

一面真っ白な所にポツンと立っていた。

「お母様?サン?」

辺りを見回しても誰もいないと思ったら情景がザアッーと変わって一面草原の中にいた。

「……お母様??」

若いお母様がいて産まれたばかりであろう赤ちゃんを抱っこしていて隣にはサンによく似た女の人が笑っていて更に隣に見た事ない女性が居て膝の上でスヤスヤ眠っている小さな女の子。

「サンは本当にリーネちゃんが好きね」

「リーネが俺の妻だ!!」

「リーネちゃんが妻になるといいね」

「ふふ。そしたら嬉しいわね」

私の記憶にない記憶。

「おーい」

と、遠くから声が聞こえて見たらお父様が居てお父様がお母様の隣に座り赤ちゃんは私だと気付く。サンによく似た女の人の所にスゥーカ様が座りもう1人の女性の所に男の人は来なかった。

「………」

自分が成長してから生きているか死んでるか分からないお父様をこの目に映せて嬉しくなった。

「お父様、トゥリーネは19歳になりました。

この度、サンロシスト・スゥーカ様と婚約を運びました」

お父様は気付かないであろうカーテシーをして顔を上げたら目が合った。

「リーネ…」

「あなた?」

「大人になったリーネが綺麗になって立っていた気がしたんだよ。君似のね」

「リーネはきっと綺麗になります。そして、

サンロシスト様を夫にするんですよ」

「なら俺は反対だっ!!って言わないといけないな」

楽しそうな幸せそうな両親の笑い声に涙が流れた。

「リーネ、いい子ね…」

「リーネは、俺の妻になるんだよなー」

「リーネは渡さんぞっ?」

「おじさん!!もうリーネは俺のだー」

小さいサンとお父様が笑ってるから駆け寄りたくなった。

「!!」

「リーネ、行くな」

「サン?」

手を引っ張られたのはいつの間にか後ろにサンが居て悲しそうに涙を流していた。

「サン……何で泣いてるの?」

「リーネ、リーネ」

私の名を呼んでいる。私はココに目の前に居るのにサンには見えてないみたいだった。

「サン!私はココよ?」

「リーネ、俺を置いていかないでくれ……」

サンの涙が止まらないからサンの両頬を触るとサンの涙が私の手を伝わる。

「サン、置いて行かないわ。私はサンの側にいる」

「なら、居なさい。胸を張って堂々としていなさい」

「お母様!?」

いつの間にかお母様もいて険しい顔をしていた。サンから手を離してお母様の所に行こうとしたらお母様に阻止される。

「貴女はまだ来ちゃダメ。サンロシスト様を悲しませるのかしら?」

「サンをっ……?」

涙が止まらないサンを見てサンの胸の中に入る。

「サンロシスト・スゥーカ様を悲しませるつもりはない。私がサンを悲しみから取り除く」

「頑張りなさい。いつまでも見守ってるわ。だって夫婦になったんでしょ?サンロシスト様と」

「お母様…」

ここは、生きている人間が来ちゃいけない場所だと分かった。お母様と話せなくなるのは悲しい。元に戻るのは現実を受け入れないといけないけども…とサンを見るとまだ涙が流れていて死人の様に真っ青だった。

「お母様…私がそっちに行く事があったら沢山話したいわ」

そう言うとお母様は頷いて笑って消えていった。

「リーネ!!」

「………」

次に目を開けたら夢の中で泣いていたのと同じ様に目に涙を溜めていて瞑ればもう流れてきそうだった愛おしい男性の私を覗き込んでいる顔。

「泣いてるの?…サン…」

「リーネ!!心配した!!」

私の両頬を包み込み顔をすり寄せて生きてるかの確認をする。

「何処も痛くないか?」

「うん。大丈夫…よ…。でも…」

「でも?」

「うん。お腹空いちゃったかも…」

「あはは。そうか。3.4日も寝ていたんだ。すぐ用意する」

「うん。ありがとう。サン」

「寝てろよ」

「うん」

頬にキスを落としてサンは部屋から去って行った。

「お母様……」

窓に目を映すと涙が流れてきた。現実に戻りたくなかったけども、サンを悲しませたくなかった。

「お母様、悲しいけど…頑張って生きて来ますわ」

目を瞑って祈りを込めた。両親を失ってしまった。サンが居てくれて嬉しかった。これだけが心の唯一の救いだと思った。


「………」

起き上がれて、学校に行けて婚約者はサンロシスト・スゥーカになって私は贅沢をしてるつもりはないと思うのだけどもどうしてこう厄介事が入り込むのかしら?

「くつろいでいるか?」

「はい。ナサイウ王女殿下」

フィーネルはヨークがまだ終わらずに待っているとの事で1人で帰ろうとした所を連れ去られました。

(私…危機感なしね……)

自分で思って凹んだ。今日はサンが討伐に行っているからそれを狙ったのだろうか。

「そなたの母親には悪い事したな」

「……大丈夫です」

ちゃんと言えただろうか。フラッシュバックでお母様の倒れた姿が映る。

「賊達は隠し持っていたので自害したと聞いた」

「……そうですか……」

お母様の真相が分からないまま自害したとは誰かを庇ってる?と思ってしまって私は気付かなかったのだ。

「サンの婚約者を降りてもらう」

「えっ?」

「きゃあああああーー!!」

「ナサイウ王女殿下?!どうかしたの…」

私が立ち上がったら悲鳴を聞きつけて衛兵達が入って来た。

「王女殿下に何をしたっ!!」

「えっ?」

私は来た衛兵達に捕まえられた。

「怖かったわ。もう平気よ」

「ナサイウ王女殿下!!……リーネ殿?!」

「……ジャック殿下……」

ジャック殿下も悲鳴を聞きつけて走って来て私の姿を見てビックリした顔をした。

「どうして、リーネ殿が?」

「ジャック殿下、この女が私を殺そうとしたんですわ」

「そんな事してません!!」

衛兵に両腕を捕まえられてナサイウ王女殿下に濡れ衣を着せられてジャック殿下は真っ青な顔をしたて目を瞑って腹の底からようやく出した言葉の様に聞こえた。

「…とりあえず連れて行け」

「はっ」

身動きが取れずに牢屋に放り込まれた。

「私はやってない!!」

叫んでも叫んでも衛兵達は無視をする。

「私はやってないって。ちゃんと調べて!!」

「リーネ!!」

「サン!?」

討伐で帰れないと思っていたのに愛おしい男性が牢の向こうから走って来るのが分かったから手を伸ばしたら衛兵に阻止された私とサン。

「サンロシスト騎士副団長様、こちらはナサイウ王女殿下を、殺そうとした人間です。近づけるなと王女殿下からの通達です」

「!!」

王女殿下に嵌められたと気が付いた。

私を殺して自分がサンの婚約者の位置に収まる為に私に濡れ衣を押し付けた。

「……っ」

まさか…まさか…考えたくない事が脳裏をよぎる。

「リーネ!!考えるな!!俺がいる」

「……サン」

サンの言葉で私は気付いてしまった。お母様をどうして賊が殺めたのか。どうして賊が自害したのか…と。

「……お母様もこうやって…」

柵を握ったまま膝から崩れ落ちて座った。

「さぁ、騎士副団長様、王女殿下がお待ちです」

衛兵達に無理矢理連れて行かれるサンの後ろ姿を見ながら涙がまた止まらなかった。

「……ふっ…」

お母様も失ってサンまで失ったら私はどう生きていけば良い?

生きていけない。生きていきたくない。

「サン、サン」

私の泣き声はサンには届かなかった。


「どういうつもりだ?」

「どうって?」

ナサイウが部屋でゆったりと座って扇を煽っていた。

「私を殺そうとした。それが事実よ」

「事実な訳あるか。ジャック殿下と王が調べている」

「調べたってどう調べるの?私は王女殿下よ?」

ナサイウが、扇を閉じて立ち上がって俺に近づき俺の腕を触る。

「サン、私は貴方を愛してるの」

「だから、なんだ?リーネが邪魔だから牢屋に入れたんだろ?」

「そんな事ないわ。邪魔だなんて。酷い言い掛かりだわ」

俺の胸の中に入り俺の胸を撫でる。

「抱かれたいなら抱いてやるよ」

マントを脱ぎ捨ててナサイウから離れてベットサイドに座り手を伸ばす。

「俺が欲しかったんだろ?」

「そうよ。でも抱かれるだけじゃ嫌よ。婚約者として扱ってほしいの」

「婚約者?リーネとは婚約を破棄すればいいんだな」

「サン、今日から貴方は私のよ」

ナサイウが俺の肩に手を置き口づけを交わそうとするから俺はナサイウに聞く。

「リーネの義母の殺しを命じたのはナサイウだな?」

「…ふふっ。どうかしら?ただ、昔から邪魔だったのは確かね…」

ナサイウとキスを交わす。

「昔からはどう言う意味だ?」

「リーネ共々、あの時死ねば良かったのに…」

あの時?ってなんなんだ?

「サン、そんな事は良いから……」

「そうか。でも今日は抱く気にはならない。俺が欲情出来る女はただ1人だな」

マントを拾ってそう告げた。

「サン!!」

部屋を出て外で聞いていたジャックとマリスナ様は頷いて足早に部屋を離れた。



「………」

牢屋の小さい窓から満月が見えて光を照らしている。

「……サン…」

「サンは私が婚約者になったから愛称で呼ばないでくれない?」

「!!」

振り向いたらナサイウ王女殿下がいた。

「私のサンになったのよ?」

「嘘です!!私と…」

「嘘じゃない」

そう言った声はいつも聞いていた声で冷たい目をしていた。

「ナサイウ王女殿下と婚約した。トゥリーネ・ロータそなたをナサイウ王女殿下を殺そうとした罪で断罪する!決行は明日の朝だ」

「!!」

サンは何を言っているの?私は王女殿下を殺そうとしてない。柵を握りしめてサンとナサイウ王女殿下の前で叫ぶ。

「どうして!!私は殺そうとしてない!!」

「ナサイウ、俺はこの女と別れの挨拶したいから先に行け」

「早く、来てね。サン」

ナサイウ王女殿下はいつも触れてるみたいに私の目の前でサンの頬にキスを落とす。

「そう、分かったわ。何も言う事ないです。サンロシスト・スゥーカ様」

サンの目を真っ直ぐ見て答えた。サンは相変わらず冷たい目のままで何も映してなかった。

「俺とナサイウ王女殿下の結婚式に呼べなくて悪いな」

「いいえ。お幸せになって下さい」

泣くもんかと涙が出そうなのを我慢した。

「サンロシスト・スゥーカ様…一つだけ聞いて良いですか?」

「ああ。なんだ?」

「私の事好きでしたか?それとも…それとも…」

その言葉が出る前に涙が溢れてしまった。

「それとも…嫌い…でしたか?」

長い年月ずっと好きと愛してると言ってくれていた愛おしい男性は最後なんて言うのだろうか。

「俺は……」

窓から満月が煌々と照らしてる。

「……そうですか。ありがとうございます」

言ってマントを翻して牢屋から去って行った。

「ふっ…本当に意地悪な騎士副団長様ね…」

見えなくなるまで後ろ姿を見ていた。

涙は止まる事はなかった。

「…お母様、明日そちらに参ります」

天に向かって呟いた。

斬首刑に決まっているから麻袋を顔からかぶって見えなくする。斬られた後は自分が生きてるかの様な感覚に陥ると聞いた事があった。

「首をきり落とされるのね…。ふっ…一番重い罪ねっ……」

涙なんかとうに枯れ果てたと思ったのにまだ流れていた。

「サン……」

私の心は粉々だ。愛おしい男性から拒絶された。

長年の月日ずっと愛していた男性から破棄をつけつけられた。

「もう、楽になれるのね…」

藁の上に横になって目を瞑った。

「………」

どれ位経ったのか分からないけど大好きな匂いが漂う。

「んっ…」

目を開けても真っ暗だったからまだ暗いんだなと寝ぼけながらそう思った。

「リーネ」

「…サン?」

名を呼ばれて愛おしい男性の名を呼んだ。

「リーネ、愛してるよ」

ああッ…また夢を見て自分に都合の良い夢。

「サン、私も……」

手を伸ばしても真っ暗で何処にサンがいるか分からないけど真っ暗の中に手を握ってくれた。

「リーネ、愛してるよ。愛してる」

「サン、サン、愛してる」

真っ暗の中でも、こうやって手を引いてくれる

サンが大好きだった。

「サン、ありがとう。さようなら」

手を離すと愛おしい男性の手が離れた。

「リーネ、おやすみ。俺も行くよ」

遠ざかる足音が夢か現かどっちか分からなくなるけどその後別の足音が大勢聞こえて覚醒すると目を塞がれていたのを改めて知った。

「トゥリーネ・ロータ、処刑を実行する」

「!!」

慌てて抵抗したけど後の祭りで手足を縛られた。

「嫌っ!!嫌だってば!!私はやってない!!」

「黙れ。王女殿下を殺そうとした賊め」

私は誰にも信じてもらえない。誰の言葉も私の心は届かないから叫ぶのを諦めた。

「その女は俺が連れて行く」

「騎士副団長!!」

「!!」

サンの声だったけどナサイウ王女殿下の婚約者だから何も言えない。

「……っ」

愛おしい男性の腕の中に胸の中にいるのに心が壊れてもうどうでもよくなっていく。

「何?トイレに行きたいだ?そんな事許すわけないだろ?」

「……?」

急にサンが叫んだように言ってビックリするけど麻の袋で顔が隠れている私は口も塞がれているから喋れない。

「いやいや、待って!!俺の所にするな。

分かった!連れててやる」

「騎士副団長?!俺たちが連れて行きます」

「いや。この女は俺が斬首台まで連れていく。お前たち、先に行け」

「でも…」

「騎士副団長の言う通りだと思うぞ?」

聞き慣れた声がもう1人。カルト様だった。

「それともジャック殿下に…」

「失礼しました。先に行っております」

辺りは多分抱っこされてる私とサンとカルト様の3人になった。

「サン、ここからはこれか?」

「ああっ。お前にリーネを預けるのは癪だが」

「大丈夫だって!!」

私は、目が見えないままサンの腕の中からカルト様の腕の中に入りいつの間にか手の拘束が外されていた。

「リーネ、愛してるよ」

「サン!?」

麻袋を慌てて取ったらサンは誰かを抱っこしていてマントを靡かせて去って行った。

「良かったよー。無事で。リーネちゃん」

「カルト様?どう言う事ですか?」

「あっー…これはサンに聞いて?」

私…またサンに壮大な意地悪された???と腹が立って来た。

「またサンにやられたって事ですか…」

「あはは。そういう事だね」

カルト様が笑って私を降ろして足の拘束も取ってくれた。

「でも、君のお母さんは……」

「カルト様。ありがとうございます」

頭を下げてお礼をした直後城の窓からわーと騒がしくなった。

「始まりましたね」

「そうだね。始まったようだ」

私の代わりに処刑された人間が誰かなんて聞かない。これから先は見て見ぬフリも大事だと思うから。

「さぁ、真犯人が暴露してくるかな〜」

「カルト様、楽しそうですね」

「あはは。楽しいよ?」

カルト様は嗤っているけど目は笑ってなかった。獲物を追い詰める目をしていた。

(ああっ…この目はサンと同じ。楽しんでいる目)

そう感じた。

〔サンは冷たい男よ…〕

「……ふっ…」

「どうかした?リーネちゃん」

「いいえ。私はサンをどう懲らしめるか考えてました」

「リーネちゃん、怖いっっ」

リサンナさん、サンは冷たい男…そうかもしれませんけど私もサンと同じくらい冷たい女ですよ。

きっとサン達が処理すると思いますけども、それがどう処理するか楽しみで仕方ないですもの。


サン以上に狂ってるかもしれませんわね……。

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