11.ヤッター!!って叫びたい

第11話

もうじき16年の月日に想い続けた俺の気持ちをこの秘壺に吐き出してドロドロにして俺なしだと生きていけないように檻に閉じ込めたい。

「くっ…」

初めて抱き合ってからまだ2日目だけども俺の欲は尽きない。

「大丈夫か?リーネ」

「………」

リーネの身体も気遣えが出来ずに俺の想いを伝えてるからリーネは気を失ってる。

「ごめんな。リーネ」

誰にも取られずに抱きしめて素肌が当たるからまた俺のが成長する。

「ーーーっ」

リーネの柔肌に俺は安心する。

出会った時に俺に笑ってほしくて意地悪も沢山した。それでも、俺を好きだと言ってくれたリーネ。

晴れて!!サンロシスト・スゥーカは

フィーネル・ロータの婚約者になりました。

や…ヤッター!!と叫びたくなる。叫びます!


「俺は休暇中でしたよね?」

「まぁ、そういうな」

「いらっしゃいませ。ジャック殿下」

そう。ジャック殿下が遊びに来ていた。

オブラートに包んだ言い方をしたよ。

「リーネ殿。ありがとう。一段と綺麗になったな」

「ありがとうございます」

リーネがお茶をジャック殿下に出して部屋から去ろうとしたから俺はリーネを膝の上に乗せた。

「ええっーー」

「リーネ殿。そのままで平気だ」

「いえいえっっ!!私は平気じゃありませんっ」

リーネを片時も離したくなく膝の上に乗せた。

「リーネ、殿下は話に来たんだ。静かにしないといけないだろ?」

「〜〜っ」

耳元で言うとビクッと身体が動いて俺を可愛らしく睨む。また可愛らしく睨むからどうするか。

可愛いしか出ない。

「そなた達一段と甘いな…」

「スイマセン……」

「殿下、どうかしましたか?」

リーネが小さい声でお盆で顔を隠しながら言うけど気にせずに殿下に話しかける。

「とりあえずだ。おめでとう」

「ありがとうございます」

俺とリーネが結ばれたのを速攻、父達が飛ばした伝達で知ってるから「おめでとう」だろなぁーと思い、「ヤッター!!」って叫びたいがまぁ、殿下の前なのでそこはグッと我慢する。

「殿下、どうかされましたか?俺は討伐はあと3日間は行きませんよ。リーネと約束しましたから」

「討伐はキツキツだけど何とかまわってるか大丈夫だ。でも、最悪な場合は出てもらう」

「出ません。リーネとの時間が減らされます」

「サン!そんな事言って!!貴方は私の婚約者の前に騎士副団長でしょ?領民達が被害を被るのよ?」

「リーネ、最高だよ」

「リーネ殿、もっと言ってやってくれ」

殿下、黙っていてもらえますかね?俺のリーネなんですよって言えたら楽なのになぁー…と思いながらも見ていたら殿下がくくっと笑う。

「サンロシスト、猫被ってないでどうだ?」

「じゃあ取りますけど、ジャック、俺のリーネだからな!」

「それは分かってるよ…。俺も最初そうだったから…」

「いやいやいやっ…最初だけじゃないですよ。

俺の16年なめないでもらえます??」

「その前に私を離して」

「仕方ないなぁー」

リーネを後ろから抱きしめていたから首が見えたので首にキスを落として俺の跡をつける。

「サンッ!!」

「俺の跡付けとかないとな」

「もおー、バカっ」

と真っ赤になりながら殿下に一礼して部屋を出て行った。

「お前、やりすぎじゃないか?」

「これ位普通ですよ。夜、挽回しますから」

まだ抱き足りない。もっと抱いて抱き潰したい。

俺ってこんな欲まみれだったんだなぁー…。

「で、殿下はどうしたんですか?」

「マリスナと喧嘩した」

「喧嘩なら謝れば良い事でしょ?」

マリスナ様はジャック殿下の婚約者で殿下と結婚するお方だ。

「父上が昨日俺にマリスナがいるのは知っているくせに手違いで隣国の姫を連れて来たんだよ」

「大方、それをマリスナ様に見られたって事ですか?」

「………そうだ………」

どよ〜〜んと暗くなるジャック殿下。

「早く謝ったらどうですか?」

「謝るも何もまた隣国の姫が来るんだよ」

「はあっ…」

「まさか、逃げて来た訳じゃないですよね??」

「まさか………」

殿下の笑いが空笑いしていた。

「殿下っーーー!!!何で俺の家選ぶんですか!!カルトもいたでしょ?」

扉からノック音がして開くとリーネが居てその後ろに見覚えのあるヤツがいた。

「……サン、カルト様がお見えよ?」

「はぁっ?」

「あはっ。ごめんね」のポーズをしていたからコイツを叩き切りたくなった。

「カルト。俺…休暇中って分かってるよな?」

「分かってるんだけどもさぁー…おっ!ありがとう。リーネちゃん」

リーネがカルトの分のお茶を持ってきてカルトの前に置き部屋を再び出て行った。

「リーネちゃん、あーんなに跡ばかりでお前のもんって分かるけどさぁー」

「実際、俺のリーネ。リーネは俺の婚約者」

「お前、長年の想いで重くないか?気持ちがメチャ重くなってる気がする……」

重くはない。こちらとは16年想いを思っていて足りないくらいだ。

「まぁ、リーネちゃんに愛想尽かされないようにな」

「その前に鎖で繋ぐ。一生出れないようにな」

「怖っ。重っ」

「それよりカルト、どうなってる?」

「ああっ…そうだ。殿下は隣国の姫に気に入られて結婚するなら援助を惜しまないって言ってるんだ」

それを言われて俺にどうしろと言うんだ?カルトもジャック殿下も。俺は今、休暇中でリーネと

イチャイチャ過ごす予定を狂わされているんですけどねぇー…とイライラして来た。

すると再びノックの音がしてリーネだと思ったから「リーネ?」と呼びかけたら勢いよく扉が開いた。

「殿下ーーー!!!」

グラマーな身体で色黒の色。長い金髪をなびかせてジャック殿下に抱きついた女性にカルトが、説明する。

「隣国の第一王女のナサイウ・ローニタ王女殿下です」

「ナサイウ王女!!」

「殿下。ここに居るなんて酷いですわ。お探ししました」

「あっー…お話し中失礼します」

「どうした…リ…」

「……ジャック殿下?またナサイウ王女と?」

マリスナ様まで来たよー!!!

「………?」

そして、何故かナサイウ王女の視線がチラチラ気になるんだけど気のせいだろうな…それより俺の休暇中を、返せ!!リーネとのイチャイチャ時間を返せ!!


客間の一部屋に俺、リーネ、カルト、ジャック殿下、マリスナ様、そして…何故か俺にくっついているナサイウ王女。

「そなたはなんて名前なの?」

「サンロシスト・スゥーカと申します」

ナサイウ王女の手の甲を、持ち上げてキスをする真似をする。

実際に手の甲にキスをするのは婚約者のリーネだけ。

「!!」

その光景をリーネが直視していたのは俺から見えなかったけど傷ついた顔をしていたと後で聞いた。

「ふふっ。サンロシスト、私と付き合え。そなたの強靭な体つきが服から分かる。逞しい」

ナサイウ王女、殿下が好きだったんですよね?

殿下も体つきは良い方だと思いますけども。

「ナサイウ王女、俺には婚約者がいるので申し訳ありませんがお断りします」

「ふふっ、知っておる。そちらの女だろ?」

リーネを扇で指して笑いリーネは泣きそうになっていたけど笑って立ち上がって挨拶を返す。

「ごきげんよう。ナサイウ・ローニタ王女殿下。私、サンロシスト・スゥーカの婚約者の

トゥリーネ・ロータと申します。どうぞよろしくおねがいします」

「まぁ、よく出来た方ね。ふふっ…。サン、明日出かける」

「王女…」

ジャック殿下が「ごめん」のポーズを取るが俺は休暇中でリーネとイチャイチャする予定が狂ってイライラしてるのにこの王女と出かけろと??…ナサイウ王女殿下がリーネを見ながら俺の肩に腕を回して抱きつく。

「ふふっ…。いいわね?サン」

俺の愛称で呼んでやがるし。

「……はい」

隣国の王女殿下だ。機嫌を損ねる訳にはいかない。俺の休暇中だろうと。殿下の代わりに…。

「なら、城で待ってるわね。サン」

慌てて来た衛兵達に護衛をされて去って行った。

「…すまない。サンロシスト」

「ジャック殿下、余計な事を持ち込んで…」

「リーネ、ごめんなさい。まさかサンの方に行くなんて……ジャックはモテない要素あり?」

マリスナ様がリーネに謝っていたけどマジマジとジャック殿下を見ていたけどジャック殿下はガックリと肩を落とした。

「俺、モテるんだよ?令嬢方にキャアキャア言われてるんだよ?本当だよ?」

「ジャック殿下!今はそんな事は後回しです!!」

「私は大丈夫ですわ。マリスナ様」

カルト、結構酷いこと言ってる気がするけどスルーしておくよ。

リーネはジャック殿下とマリスナ様の会話に笑っていたけど本当は泣きたいんだろうなと思ったから無理矢理胸の中に入れた。

「ちよっ…サン!!」

「ゴメン…リーネ」

抱きしめるとリーネが震えていた。

「リーネ殿、申し訳ない。2人の休暇中を…」

「大丈夫ですよ、ジャック殿下。隣国の王女を

エスコートするだけです。それだけですから」

笑っているリーネ。でも、嫌だとは言わずに俺の服を握りしめている。

「リーネちゃん。俺も居るから2人きりにはさせないから平気」

「カルト様もありがとうございます」

人前で抱きしめるのは嫌がるのに俺の服を握りしめて離さないリーネの不安を取りたいのにどう取ってよいか分からないけど今夜はリーネの思うままに抱こうと誓った。



「あっ…もっと!サン」

「リーネ」

湯浴みが終わってから俺とリーネは今日もお互いを求め合うけど今日のリーネは寂しさを埋めるように俺をさらに激しく求める。

「サン、サン」

何度も何度も俺を呼び俺の身体に跡を何度も付けていく。

「サン、もっと。もっとがいいの…」

「心配しなくたって俺はお前のだよ」

「サン」

お互いに貪り、一つに溶け合ってお互いの汗が混じり合い媚薬の匂いのような欲を満たしてくれる香りが鼻腔から漂う。

「気持ちいい…リーネ。トゥリーネ」

「私もよ…サンロシスト」

愛称ではなく通名で呼び合いキスを交わして秘壺の最奥に俺の愛を入れ込むとビクッとリーネの身体が震えてはぁはぁと息が上がっていく。

「リーネ、本当に大丈夫だからな」

「……うん。大丈夫だと信じてるけども…」

「けども?」

「王女殿下にまでモテるとは思わなかったよ…」

ギュッと俺を抱きしめて顔を見せないように言った。

「嫉妬だな?嫉妬だろ?」

「もおっ!!意地悪!!嫉妬よ!!服の上から触られて、手の甲にキスをして…」

「リーネ?」

「私のサンなのに!!どうして笑うのよ!!

どうして抱きしめられるのよ!!バカっ!!」

リーネの盛大な大嫉妬にメチャ嬉しくなる俺は

リーネの抱きしめた以上に抱きしめる。

「リーネ、心配しなくたって。手の甲にはリーネしかキスはしない」

「嘘つき」

顔を隠していたけどリーネの上半身を起き上がらせて可愛い顔が見えてリーネの手を持ち上げて手の甲にキスを落とす。

「キスは婚約者・リーネの特権。それ以外は社交辞令」

「………っ」

「抱きしめられたのはゴメン。触られたのもゴメン。リーネの俺なのにな」

「そうよ!!サンは私のよ!!」

リーネが俺の両頬を包んで怒る。

「可愛いなぁー…リーネ」

「あっ…」

俺のが秘壺にまだ入っていてリーネの顔に欲情した。

「やっ…サンッ…」

「俺を鎮めろ。そんな可愛い嫉妬して俺が止められない」

上に乗っかっているリーネの腰を使って上下に動かす。両胸を触りながら腰を使うとリーネが段々自分で腰を使う様に気持ちいい所を、探しているんだろう。腰が揺れる。

「あっ…サン…もっと…」

「リーネ。リーネ」

リーネの不安が消えるならいつまでも抱いてやる。安心させてやる。

でも、俺は抱き合うのも好きだけどリーネと

何気なく笑うのも好きなんだ。

「リーネ、愛してるよ」

「サン、私もよ…」

リーネの胸を弄るとリーネの声が甘く部屋に響きお尻を掴んで上下に動かすとリーネの甘い声が部屋中に更に響く。

「いやっ…いっちゃう」

「リーネ」

「ああんっ、あんッ…サッ…」

激しくリーネを打ちリーネを白い世界に飛ばす。

「サン…ダメ…」

「リーネ…くっ…」

リーネの最奥にまたノックするように俺のが流れ込む。

「リーネ」

イッた同時にクタッと俺の胸の中に倒れ込む可愛いリーネ。

「……」

何の用事があって王女殿下と出かけないと行けないのか分からない。

義母にリーネの事は頼んだけどまぁ、カルトもいるらしいから騎士服で行けば良いか。

「リーネの手の甲にしかキスはしないよ。本当だよ」

気を失っているリーネの手の甲を持ち上げてキスを落とした。

「サ…ン…好き…よ…」

「ふっ…」

俺の夢でも見てるんだろうか。

「俺は、リーネを愛してるよ」

手の甲に、頬に、キスを落とした。



「あらっ?護衛かしら?」

「護衛です」

リーネにこれ以上辛い思いはさせたくない。他の女に気を使うのははっきり言って面倒臭いし、

リーネ以外滅びろってマジ思ってる。だからこれも本当に無駄な時間だと思ってる。

「ふふっ。本当に変わらないわね」

「会った事ありますか?」

「サン、連れて行ってくれるんでしょ?」

「どうぞ」

ナサイウ王女殿下を馬に乗せて俺も乗る。この

王女が「乗馬したい」と我儘言い、それを俺に

指名して来た。リーネともまだ一緒に乗馬した事ないのに初がこの王女とはまた…ため息を、小さく吐き出してしまった。

「婚約者の彼女は可愛いのかしら?」

「可愛いですよ。俺は幸せもんです」

リーネの事を聞かれるなら何だって喜んで答えますよ!!

「サンタナ様の葬儀には行きたかったの」

「!!」

急に知っている名前を出してきてビックリしてしまった。俺はこの王女がどうしてごく限られた人数しか知らない母の名前を知っているのか。

「ナサイウ王女殿下……どうして母の名を?」

口が震える。この王女はどこまで知っている?

「サン、他の兵を撒いたら教えてあげるわ」

「!!」

母の事を知っている事実は知りたいがリーネの為に2人きりになるのは避けたい。

「……」

逡巡しているとナサイウ王女殿下が馬の脇腹を蹴ったから馬がビックリして全速力になってしまった。

「サン!!王女殿下!!」

カルトの声が虚しく小さくなっていく。

「王女殿下!!馬を止めるので喋らないで下さいね」

馬を止める為引き綱をしっかり握る。王女殿下はその隙を狙って俺の胸の中に入り背中に手を回す。

「どうして、もっと早く会わなかったの?私達…」

「王女…殿下?」

馬のスピードが下がるまで走り続けた。


「ここは、リーネとも来た事ない…」

一面草原が広がっていた。先に降りて王女殿下を降ろす。

「覚えてない?私はその当時2.3歳くらいで…」

「俺は5歳だった……?」

蘇るのは、俺と亡くなった母ともう1人女性が居てその女性が赤ちゃんを、抱っこしてその赤ちゃんはスヤスヤ眠っていた記憶だ。

〔ふふっ。サンは、ナサイウちゃんが好きね〕

〔ああっ。大好きだ〕

可愛く眠っているナサイウにツンツンしてもスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。

〔ナサイウちゃんが妻になるといいね〕

〔ナサイウが俺の妻だ!!〕

幼い頃の記憶が蘇る。

「あの時のナサイウか?」

「そうよ?サン」

記憶の中のナサイウは赤ちゃんだった記憶しかないのが、成長して俺と変わらない年齢になっていた。

「母からサンの存在を聞かされて楽しみにしていたの」

ナサイウが俺を抱きしめる。

「サン、今なら婚約やめれるわ。私と結婚しなさい」

「お断りする。俺には妻になる女性と誓った」

ナサイウがあの時の記憶の赤ちゃんで何の為にナサイウの母親は言っていたのか。

「ずっとずっとあなたのお嫁さんになる事を夢見ていたのよ?」

「そうか。でも残念だな。ナサイウ」

「諦めないわよ?あなたのお母様は王妹殿下で貴方は王位継承権を持ってる。」

「それには興味ないから棄権した。持っていたらリーネと結婚出来ない。煩わしい女がドッチャリ寄ってくるのは勘弁だ」

「貴方のお母様と一緒ね。サンタナ様もそれに嫌気がさして貴方のお父様と逃げた」

その言葉に腹がたち鞘を抜いて剣を向けると隠し持っていたであろう剣で応戦した。

「ナサイウでも、父と母の事を悪く言うのは許さない」

「ふふっ…いい血筋を引いてるわね…」

獲物を狙う目つきで俺を見る。

「あの婚約者にも言ってないんでしょ?」

「言う必要はない。」

言って婚約を破棄されたら俺は生きて行けない。破棄されたらアイツを閉じ込めて手足を切り落として俺だけを見る様に監禁するだけ。俺が全部の世話を一生するだけだ。

「怖い目ね…。サンタナ様譲りだわ」

母譲りだと実感する。母も父を凄く愛していた。子供心に2人の仲睦まじい姿が凄く好きだった。

2人の剣の真剣勝負を見るのも好きだったから自然と剣の道に進む様になった。

「今日は、引くわ。明日もよろしくね」

「明日は忙しい」

「そう。なら貴方の家に行くわ」

「ナサイウ!!」

面倒な事に巻き込まれた。丁度話が終わった所でカルトが急いで来てくれて王女殿下は無事と伝えてカルトに後は任せた。

「……」

馬を走らせている時に考えていたのは小さい頃の記憶。

「母さん、俺はリーネを愛してる。だから母さんの形見をリーネに渡そうとしたらリサンナに奪われた。でも、もう一つ形見があるからそれをリーネとの結婚式の時に渡すつもりでいる。それも邪魔されるのか?」

舌を噛むのに喋っていたが俺の愛馬は何かを察知してゆっくり歩いていた。

「……タナ」

母さんの名前を取ってつけた。タナの立髪を触ると急にタナが駆け出した。

「タナ!!待たかっ!」

一直線に何処かに向かってると思ったら俺の家で玄関の門にリーネが立っていた。

「リーネ!!」

「サン」

タナがヒヒーンと声を上げて止まった。

「タナ、おかえりなさい」

リーネはいつの間にかタナと仲良くなっていた。俺以外には懐かないタナが懐いてビックリなんだが。

「サン、おかえりなさい」

「ああっ。ただいま」

リーネに挨拶をされてタナから降りようとしたらタナがリーネの服を引っ張る。

「タナ?どうかしたの?」

「ああっ。リーネ、手を」

リーネが手を差し出したからグイッと引っ張って俺の前に座らせた。

「きゃあ」

タナが嬉しそうに尻尾を振っていた。

「高いねっ…。初めてよ。ありがとう。サン」

「お礼ならタナだな」

「そうだよ」って言ってるかのようにブルルルッと声を出した。

「リーネ、動くぞ」

「うん。サン…」

「んっ?」

リーネがモジモジとしていて俺の顔を見て笑った。

「サンと初乗馬が嬉しいわ。ありがとう」

「リーネ。俺もリーネと初乗馬嬉しい」

パカパカとゆっくり歩いて散歩するように歩く。

「騎士服で行ったのね?」

「ああ。護衛だしな」

そう、護衛。それ以上でもそれ以下でもないが情報は多かった。

「リーネ、距離遠くないか?」

「……‥気のせいだと思う」

バサッとマントがずれたから後ろにやった時に一瞬だがリーネの顔が怪訝な顔になった。

「リーネ…」

「別に。隊服でも浮気は出来るもんねって…」

乗馬した時に抱きつかれて草原でも抱きつかれた残り香が残っていたのかと思いそれに反応してるリーネだった。

「リーネ、何もないよ」

「ないなら抱きつかないよね?」

顔が向こうを向いていたのがこっちを向き目に涙が溜まっていた。

「リーネ!!」

「サンは、私が子供だからって言わないでいてくれるだろうと思うけど…」

「そんな事思ってない。対等な婚約者だと思ってる!!」

「なら!なんで隊服から……ナサイウ王女殿下の匂いがするのよぉぉー…」

涙が決壊して後から後から溢れて来た。

「リーネ、ごめん。ごめん」

「そればっかり。何がごめんよ!」

胸の中に入れようとしたら「嫌」と拒まれてタナから降りて走って行ってしまったから俺も慌ててタナから降りた。タナは俺の匂いで後をついて来る。

「いやっ、来ないで!!」

「リーネ!」

リーネの手を捕まえて無理矢理胸の中に入れる。

「嫌だってば!!サンなんか嫌いよ!大嫌いよ!」

「リーネ、ゴメン。本当にゴメン」

リーネが俺の胸をポカポカ泣きながら叩く。

「リーネ」

「嫌よっ。触らないで。他の女の匂いなんか付いたサンなんか大嫌い!」

リーネが俺から離れようとしたから再び捕まえる。

「逃がさない」

「嫌!サンなんか…サンなんか大嫌いよ!!」

「俺はリーネが好きだ!!」

リーネに無理矢理口づけを交わす。ガリっと唇を噛む野生の猫みたいなリーネ。

「逃がさない。永遠に。お前は俺のもんだ!」

「…ならなんでよ!!なんで触らせるのよ!!」

リーネの気持ちが痛い程分かる。ここで手を離してリーネが家に帰れば良い事だと思うが本能が離すなと告げている。

「離して!!サン!嫌いだってば!!」

「離さない!!永遠に俺のもんだ」

再び無理矢理口づけを交わすと足がもつれて草むらにリーネが下になって倒れた。

「こんな事出来るのはリーネだけだ!」

「嘘つき!サンなんて嘘つきよ!!」

「リーネ、愛してるよ」

「嘘つき!サンもう嫌っ…」

リーネが泣きながら嫌を連呼する。

「サンが好きよ?好きだけど私は王女殿下が入ってこられたら太刀打ち出来ない…だから…」

「リーネ!それ以上言ったらリーネの手足切って一生俺が世話する。俺だけを見させる。俺だけを愛させる」

俺は狂ってると思う。狂ってる程リーネが好きだ。愛してる。リーネしかいらない。他の女なんか面倒なのに更に面倒な事を押し付けられた。

「リーネ…なんで真っ赤になる?」

「……本当にしてくれるの?サン…」

リーネが伏せ目をしてから目の中に俺が映る。

「ああ。するよ。そんな俺は嫌い?」

「好きよ。好きだから全てを捧げても良いと思ってるから婚約した。愛おしい男性から自分じゃない他の女の匂いつけて嫌な気分いっぱいよ」

リーネが俺の頬を触って泣きながら言ったから俺はリーネの涙を拭ってキスを落とす。

「リーネ、ゴメン。隣国の王女殿下だから下手な事出来なくって…」

「頭では仕方ないって分かってるわ。でもね…」

リーネは自分の心臓の上に手を置き一呼吸置いた。

「体が心が拒否する。サンだけに私は生かされてるの」

「リーネ」

「サン、触らせるのは我慢する。それ以上は許さないで。お願い」

「リーネ、ゴメンな。俺が触って欲しいのもキスしたいのもリーネだけ」

そう言いながらリーネは目を瞑って俺のキスを受け入れた。

「ふっ…」

「リーネ」

唇の上で名前を呼び角度を変えて再びキスをする。

「サン…」

ゆっくりだけど俺の背中に手を回して俺を抱きしめる。

「リーネ」

俺もリーネの首の下に手を入れ込んで腰の下に手を回して抱きしめる。

離れないように。

離さないように。


俺のやる事はナサイウ王女殿下をどうするかって考えるだけだ。

リーネがこれ以上不安がらないように。



「ナサイウ王女殿下、俺は休暇中です」

「サン、王女殿下として命令も出来るのよ?」

今日もナサイウ王女殿下が家に来ていて俺の膝の上にはリーネが、座っている。

〈サン、離してっっ〉

〈い・や・だっ!!〉

リーネを、離したらナサイウが俺の側に来てリーネが哀しい顔をするのはもう見たくない。だから俺は俺らしくする。

小さい頃だろうとリーネをあの時から好きだった俺が、確実に実在してるんだしな。

〈離れるならこの場で抱いてもいいんだぞ?〉

〈!!〉

リーネは「抱く」という言葉で顔が真っ赤になり小さくなった。それを見たナサイウが扇を拡げて嗤う。

「可愛らしい婚約者」

「ありがとうございます。可愛いと愛おしい俺の大切な婚約者ですから」

ナサイウにはっきり言っても諦めないのは面倒臭い。

リーネと!!イチャイチャしたいのに、それとカッコいいだろう俺の騎士姿を見せたいのにどうしてこう邪魔が入る??

「サン、そなたには愛おしい婚約者が居て私には好いている男性が他の女を好きになっている」

「そうですか」

ナサイウ王女殿下の言葉は右から左だ。

「………っ」

リーネの体が震えている。

「サン、そなたはそれをどう思っている?」

「リーネ」

王女殿下の言葉を無視してリーネを抱きしめる。

「サンロシスト様、おやめ下さい」

「やめない!!お前の震えがなくなるまで」

「ーーっ!!」

無意識だったんだろう。

「ふふっ。今日は帰る」

「俺の家より賓客館で話しましょう」

「そのほうがいいね。邪魔されずにゆっくりサンと話せるとからね」

ナサイウ王女殿下が立ち上がって、俺とリーネを見て嗤った。

「そなたはサンの婚約者として振る舞えるのか?」

一言余計な事を言って部屋から去った。

「リーネ、可愛いリーネ、息をするんだ」

「……っ」

ガチガチと震えていてリーネの口の中に指を入れるとガチガチと指を噛んでいく。

「リーネ、大丈夫だから。俺がいるよ。リーネ、お前の側に俺がいるから」

ガチガチと震えが徐々に止まってリーネの目から涙がこぼれる。

「サッ…」

「リーネ、ゴメンな。ナサイウ王女殿下の件リーネの耳に入れたくないのに…」

「ごめんなさい。ごめんなさい」

リーネが俺の背中に手を回して抱きしめて謝る。

「俺こそごめん。リーネ、可愛いくって愛おしい俺のリーネ」

「サン!サン」

リーネを守る為には全力でナサイウに立ち向かわないといけないな。


俺の休暇ってなんなんだよー!!

ヤッター!!って叫びたかったのにー!!

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