8.望んでいた

第8話

8歳の時に出会い10歳で好きになっていたけど

気付かないで16歳で「好き」と言葉に出して18歳で再会して最近「好き」とお互い言えて晴れて

両思いになりました………。あれっ?

「どうかしたの?リーネ」

「なんでもない」

立ち止まったらフィーネルに心配されてしまったから慌てて答えて歩き出す。

今は、休憩時間で教室から教室に移動中。

「サンロシスト様の事かしら〜〜?」

「違うよっ」

「そうなのか??」

ヨークが乗り出して聞く。

「違うってば」

本当はサンの事を考えていてそれは「好き」

「愛してる」と言われたけど付き合おうっては

言われてない事に気付いてまた立ち止まる。

「……ヨーク、先に行っていて」

「分かった〜。早く来いよー」

「リーネ、ヨークは居ないわよ?」

「フィーネル!!」

フィーネルをギュッと抱きしめてそのまま話した。

「サンに“好き”“愛してる”って言われた」

「やったじゃーん!!おめでとうー!!」

フィーネルは自分の事の様に喜んでくれた。

「ありがとう」

私も嬉しくなって言ったけど、そこでフィーネルに聞いてみる。

「フィーネル、好きとか愛してるって言われてその後どうするの?付き合ってないわよね??」

「あっー…付き合ってる2人によるんじゃない?

でも大体は付き合ってる認識だと思うけど…」

「そんなもんなの?」

好きと気付いたのも初で好きと言われたのも初めての私には右も左も分かりません。

「さあ、授業遅れちゃうから行くよ」

「うん」

授業に向かう教室に向かって入った瞬間ドクンッと心臓が鳴った。

「きゃあー」

「サンロシスト副団長様ー」

「サンロシスト副団長様ー!こっち向いてー」

サンが、教室に居て呆然としてしまったけど

フィーネルにツンツンとされて我に帰って急いで席に着いた。

「さぁ、授業を、始まるよー。」

〈サンロシスト様が今日の講師かしら?〉

〈そうね…〉

サンが講師に来るなんて初めてで嬉しいけど

クラスの女子達の悲鳴ならぬ小声が凄い。

当の本人は、どこ吹く風だ。

「今日の講師は、サンロシスト・スゥーカ騎士

副団長様です。みんな失礼のない様に」

「サンロシスト・スゥーカです。よろしく。質問は後で受け付けるから今は授業に集中してくれ」

「はぁーい」

女子達の甲高い声が聞こえてサンがいかにモテるかよーく分かった。

「サンロシスト騎士副団長は2時間講師としていてくれるからな」

「やったー!」

「よしゃぁー」

あれっ?今、女子の声じゃないのも聞こえたら男子もテンションが上がっていて男子にもモテるんだな…と思った。

「みんな、燃えてるわねー…」

「そうね……」

なんだろう?私は燃え尽きた感じがするよ…あはは…と笑うしかなかった。

「この敵陣で囲まれたらこの場合どうしたら良いか分かる人いるかな?」

「はぁーい」

「はーい」

「はいっ」

ええっー、みんな分かるの?この問題。私、全然分からないよと呆れてしまったけどふと目線をヨークに映したらヨークが手を上げていた。

「ふぇっー…」

ヨークは確か、騎士になりたかったけどもう年齢が過ぎているせいでなれず衛兵隊になりたいんだっけ?とボッーとヨークを見ていたらサンがそれに気付いたらしく私はそれに気付かない。

〈リーネ!〉

〈えっ?〉

フィーネルはそれに気付いて慌てて私を呼んだけどもう無理だった。

「ヨーク・テントリオ君だったかな?」

「はい。名前を覚えてくれて嬉しいです。サンロシスト騎士副団長様」

なんだか2人の間にバチバチ見えるのは気のせい?

〈男同士の戦いね。楽しいわね〉

〈そうね…ってマリスナ様!?〉

フィーネルだと思って答えたらいつの間にか隣にマリスナ様でその隣にはあれっ?ここの学生じゃないよね〜って言う方がもう1人いらっしゃいました。

〈リーネ殿。元気か?〉

〈はい。ジャック様もお元気そうで何よりです……〉

なんでこの2人堂々と授業受けてるのかしら?そして城の警備ってどうなってるの??と不思議に

思ってしまったけどお2人がお忍び出来る位、

国が豊かで安泰だという事でもあった事を習ったのを思い出した。

(けども、出かけ過ぎですよね??)

当のお二人は楽しそうに授業を受けていた。

「ヨーク・テントリオ君。それだと敵陣に見つかるよね?」

「騎士副団長、周りを囲って挟み討ちすると敵陣を壊滅に追い込めるかと思われます」

「ヨーク、良くやるわね〜」

フィーネルが賞賛していた。気がついたらヨークはサンの隣に居て黒板の敵陣の説明をサンにしていた。

「では、こう敵が攻撃してきたら?」

「そしたらこうして…」

ヨークも一歩も引かずにサンに食ってかかる。

「いい青年だな。よく勉強しておる」

ジャック殿下が感心していてマリスナ様も

「うんうん」と頷いていた。

「好きと言って両思いになったサンロシスト様と今だに想ってるヨーク…どっちが勝つ?」

「フィーネル??そんな事言ったら隣の……」

もう、遅かった。隣の2人がキラキラと目を輝かせて私を見る。

「いつ、お茶会が良いかしら〜」

「マリスナ様、ジャック様、私も参加しますよ」

「あらっ。フィーネル。そうね。貴女もね」

「くっ…」

お茶会という名の魂が抜ける怒涛の質問攻めが始まるから回避したい。

「あっ!チャイムだよー」

丁度チャイムが鳴って気を晒せる事が出来たと思った。

「この続きは次だな」

「そうですね」

2人ともデットヒートを繰り広げていたけど決着はつかなかった。

「……」

挨拶が終わって一気にサンロシストの所に男子女子が、群がる。

「おおっー。壮大だねー」

「………」

サンがモテる事は分かっていたけどあんな姿は見たくない。フィーネルが群がっているサンを見て肘突きながら言った。

「サンロシスト様、リーネが居るけど、括りは独身貴族の騎士副団長だしねー…おモテになる事ですね。リーネ」

ズキッと心臓が痛んだ。そうだ。サンは忘れちゃうけど伯爵で独身で騎士副団長の座位に居る。

私なんて到底手に届かない存在。

「そうね…」

「ちよっとトイレ行ってくる」

居た堪れなくなって教室を出る時にサンを見たら男子女子に囲まれていたのを横目に教室を出た。

「ふぅー…」

お手洗いに行き下を向いて教室に向かって歩いていたら誰かとぶつかってしまった。

「ごめんなさい」

「大丈夫か?リーネ」

「ヨーク、ごめんなさい」

ヨークとぶつかってしまってヨークの腕の中に入っていた。

「サンロシスト騎士副団長は凄いなー…」

「本当ね…。ふふっ…デットヒート凄かったわよ?」

「騎士副団長に負けてらんねぇーなと思ってさ」

「騎士副団長に勝てる訳ないじゃない。

サンロシスト様よ?」

サンが負ける訳がないと思ってる。ずっと小さい頃から見て来てる。負けず嫌いで意地悪だったけど優しくって力強くって。

「痛っ」

「どうした?」

「目にまつ毛が…」

目にまつ毛が入って痛み出した。このパターン

何かしら?何かの暗示?と不安がっていたのが

ヨークに伝わったのだろうか。

「ああっ、取ってやるから擦るな」

「あっ…うん」

目を瞑ったらグイッと急に引っ張られた。

「ヨーク・テントリオ君、レディーに何をしようとしてるのかな?」

「えっ?」

目を瞑っても分かる。この香りと力強い腕の中。

「リーネの目にまつ毛が入って痛いって言うから取ってあげようと」

「サンロシスト様?痛っ」

目を開けようと思ってもまつ毛が邪魔して目を開けられない。

「今、取ってやるから」

「はい。ありがとうございます」

私の目にサンの手が優しく触れる。

「取れたよ」

「ありがとうございます」

目を開けたら周りの女子達が悲鳴を上げていた。

「リーネ!ズルイ〜〜」

「リーネ!!そこ代わって〜〜」

「サンロシスト様、私もまつ毛が…」

「!!」

学校って事を、スポーンと忘れていた自分に恥ずかしくなってしまった。

「サンロシスト様!!ありがとうございました」

「気をつけて。トゥリーネ・ロータさん」

「!!」

サンがフルネームで私の名前を言って心臓が痛んだ。フルネームで言うのはここが学校だからで私とサンは領主とそこに住む住民の娘。

騎士副団長と一介の学校に通う成人したばかりで19歳で卒業する女子。

「ヨーク、行きましょ」

「ああっ。サンロシスト騎士副団長様!次負けませんよ」

ヨークと2人、サンを置いて教室に向かってしまった。

(ダメよ。好きって言われたって、愛してるって言われたって…身分が違いすぎる)

突きつけられた身分違い。知っていたけど知らなかったフリをしたかった。今更なんて嗤える…そう思いながら涙を飲んだ。

「あらっ?サンロシスト様は?」

「えっ?さっき一緒だったけど途中で帰って来たわ」

「リーネが寂しそうに出て行ったのを見ていたから慌てて出て行ったのよ〜〜」

「えっ?嘘っ」

サンが慌てて出ていくなんて思ってもみなかったから私はそんなサンを置いてヨークと戻って来てしまった事に血の気が引く。

「皆んなー。席に着けー」

授業が始まるのに、サンの姿がなかった。

「サンロシスト騎士副団長は今獣が境界線に現れたって事で急遽討伐に行かれたから続きは先生がやるからなー」

「えっ?」

「ええっー。」

「先生じゃ嫌だー!サンロシスト様がいいー」

ザワザワと音が大きいのに私の耳から聞こえるのはドクッドクッと耳元で駆け足で血が巡って心臓が大きく鳴る音だけ。

「大丈夫よ。サンロシスト様よ?」

「うっ…うん」

サンはいつも生と死の狭間にいる存在の騎士副団長。

(サンが望んでくれるなら私を差し出したい)

祈りながらサンが無事に討伐から終える事を願った。

「獣達、最近ザワついているわね…」

「お母様、気をつけてね」

「リーネ、貴女もね。私は貴女の結婚した姿見ないと死ねないからね」

「あっ…うん…」

“死ねない”言葉に心臓がドクンッと高鳴る。

お母様と夕食を食べていてそんな会話をしてるから話を逸らそうとするとお母様は追い討ちをかけるように私の心臓が早く鼓動する。

「サンロシスト様も行ってるのよね?」

「うんっ…」

「騎士副団長様だから大丈夫だと思うけど討伐は困難極めるって聞くしね…」

「……っ」

「でも、騎士はカッコいいわよねー」

お母様がウットリと頬を何故か染めている。

「私がもう少し若かったらサンロシスト様をGETするのにーー!!」

「お母様……!サンは私のものです!!」

「あらっ?言えてるじゃない」

「えっ?」

お母様は、笑って立ち上がってキッチンに行きポットからお湯をコップに注ぐ。

「死にそうな顔をしていたわよ?リーネ」

「えっ?あっ…」

笑いながらお母様はコップに注いだお茶を飲む。

「リーネ、サンロシスト様が好きなら好きでドーンと構えてないとダメでしょ?」

「でも、お母様…」

「“でも”なんて言葉はいらない。貴女がどうしたいかが大事なんじゃないの?」

「サンと好きって伝えあったの。お母様、私は

サンに嫁げないなら修道院に入ります」

「ふふっ…。私はリーネ…」

お母様はコップを置いて私の元に来て頬をさする。

「貴女の味方よ。良かったわね」

「はい。お母様」

手を重ねてお母様の手の温かさを感じると嬉しくなる。いつまでもお母様に居てほしいと願った。

「お母様、大好きです」

「私もよ。リーネ」

お母様の頬にキスをして部屋に戻る。

「……」

部屋の明かりをつけてドライフラワーが飾ってある。

「サン…」

サンがどれも送ってくれたもの。だから大丈夫。なんの根拠か分からないけど大丈夫と言える。

お母様に気付かれない様にするしかないけど体が震える。

「どうして…ここにいるの…ですか?」

「……」

ポタポタと流れている滴が広がっていく。顔はやつれて体は細くて所々真っ赤になって首は縄をくっつけて途中で切られていて片手が肘から下が無いのだろうか。ゴロンッと切られた手を投げる。

「ひっ!!」

声をあげちゃいけないから口を塞ぐ。声をあげたらお母様が気付く。気付かれてはいけない。お母様を守る為にはと頭をフル回転させて考えていた。

「ペンダントの他…に何が秘密が…あるの……?」

「えっ?なんの…事ですか?」

その相手が口を開く。真っ赤になっている体から首に下げられているブルーのペンダントを下げてブチっと鎖を切って手で握る。

「ねぇ…なんの秘密があんの?」

「ひっ…何も…知りません」

怖いのに叫んじゃいけないから口を押さえて首を振りながら一所懸命伝えるのに相手はジリジリと迫ってくる。

「リサンナさん!私、本当に何も知らないんです」

「知ってる…はずよ…。サンのお母様…の形見のその後」

狭い部屋でじりじりと近づかれてドア付近で足が止まる。ポタ…ポタ…と血だろうか…床に落ちて跡になりリサンナさんは私に近付く。

「リサンナさん、サンに聞いて下さい」

「サンは私のモノなの。だからアンタに消えてもらいたいのよ…」

ニタアッと嗤って口からも血が滴り落ちている。

「リサンナさん!」

扉まで近づかれて目の前に血だらけのリサンナさん。

「ひっ!!」

「アンタにサンを…渡さない」

血だらけの手が私の首にくるから身体を交わしたのにリサンナさんの方が上手で片手だけなのに血だらけなのに、力が強かった。

「くっ…」

「死んだら食べて跡形もなくしてあげる。私の中にトゥリーネ・ロータが入るなんて高揚感いっぱいだわ…ふふっ…」

「やめ…てっ…リサッ…」

両手で首を絞めてる手を緩めようとしてるのにビクともしないリサンナさんの片手。

「あっ…」

絞められているのに苦しいより静かにゆっくり意識が飛びそうに目の前が真っ白になっていく。

「サッ…」

最後に浮かんだのはサンの顔だった。

「ごめ……」

「ふふっ…来ると思ったわ。サン」

「えっ?」

サンの名を聞いて意識が少し浮上する。

「リーネに手を出すとはリサンナ・トゥイントゥル、その身その命獣達に食べてもらう」

「……」

意識が朦朧としている中でリサンナさんとサンが話している声が聞こえ私の首からリサンナさんの手が離れて壁に支えられてそのままズルズルと座る。

「私の気持ち……知ってるはずなのに。酷い男ね」

「お前は最初から女避けの女だ。それ以上でもそれ以下でも無い」

意識朦朧としている中で初めて聞くサンの冷たい声。

「ペンダントは貰っていくわ」

「ああ。母に怒られるんだな」

「まぁ、亡くなって…いるのに…」

目の前でリサンナさんが急に両膝をついて倒れ込む。

「トゥリーネ・ロータ、聞こえてるでしょ?サンは冷たい男よ。捨てられない様にね…」

「……」

そのまま瞼が重くなって静かに真っ白い世界に飛ばされてしまった。


「!!」

飛び起きたら目の前は知っている様な部屋の作りだった。

「気が付いたか?」

「サン…」

声が冷たい感じがして血の気が引く。

「リサンナさんはっ…」

首を絞められた事を思い出して慌てて首に手を当てると包帯が巻かれていた。

「殿下の命令で処刑された」

「えっ?」

淡々と話すサンに心が冷えていく。

「トゥリーネ・ロータ嬢に2回も手を出したんだ。処刑されるのが当たり前だろ?」

「サン…」

目を丸くしてサンを見てしまった。いつものサンではない。他人行儀なサンに違和感を覚える。

なら私もそれに準じて対応するしかないと思ったからベットから出て床に座り土下座する。

「そうですか。サンロシスト様、命を助けて頂いてありがとうございます」

「トゥリーネ・ロータ、まだ傷が癒えないから

ここスゥーカ家の客間で休養していくように。

命令だ」

「はい。御心のままに」

「そなたの母親は別の所にいる。そしてあの家は燃やしたから。別の家を建ててる最中だ」

「えっ?」

それを聞いて血の気が引いた。

「サンロシスト様、あの私の部屋にあった…」

「荷物はそれだけだろ?」

そう言って部屋の片隅にトランク3つ分の荷物を言った。

「…はい。ありがとうございます……」

「ゆっくり休め」

「……はい」

まだ、泣いちゃダメだ!!まだダメだ!!そう言い聞かせてサンが部屋から出ていた瞬間涙が溢れて床に落ちた。

「ふっ…」

部屋に飾ってあったサンから貰った花束達が燃やされた。私の想い出の花束達が炎に包まれて燃やされたのだろうと思うと涙が止まらなかった。

「ふっ…くっ…」

両手で声を抑えて泣く。泣けばきっと傷が癒える。私とサンが他人行儀みたいに何もなかった様になってしまったみたいに。

「ふっ…」

まさか、サンに泣いている姿を扉の隙間から見られていたなんて知る由もなかった。

「また、食べてないのか?」

「申し訳ありません。お腹空いてなくて…」

「食べないと生きれないぞ」

「はい。今日の夜なら…」

「そう言って昨日も食べなかった」

ション…サンの弟君もお見舞いに来てくれていてスゥーカ様もそしてお母様まで来て下さっているのに私はここ2.3日食べ物が喉に通らなかった。

「申し訳ありません」

「謝りを聞きたい訳じゃない」

「………」

私だって大ダメージを受けるなんて思っても見なかった。一つも花束が無いなんて…。あの時の心の支えだった私の花束。

「……っ」

いつの間にか涙が流れていた。

「もう、よい。そのまま眠っておれ」

「はい。申し訳ありません」

ベットに横になり目を閉じた。このまま目を覚さなければ良い気がした。サンもこのまま他人行儀な態度も精神的にダメージが来ていた。

「……サン」

「リーネ、何をそんなに悲しませてる?」

夢の中だろうか。サンのいつもの力強い腕の中と心地よいと感じる胸の中に包まれている自分が居た。

「…サン、いつものサンに戻って。淋しいの。私の花束達を返して」

「……」

黙っているから夢の中。夢の中なら言えない事も言える。

「サン、他人行儀はやめて。ヨークとは本当に何もないの。私は10歳から貴方が好きなの。貴方の奥さんになりたいの…」

ギュッと力強い抱擁が私を包む。

「サン…サンロシスト、愛してるわ。でも、身分が、私は一介の娘だからサンに合わないかも知れない」

私は、夢の中のサンの背中に手を回す。本人の目の前で言えない再度、言葉を伝える。

「サンを愛してる。サン…大好きよ」

「リーネ…俺も愛してるよ。だから今はゆっくり眠れ」

頬にキスを優しく落としてくれる夢の中のサン。

「サン、側にいて」

「ああ」

また、眠りの中に入ってしまった。


良い夢を見たからかもしれない。少し食欲が出て来て食べれる様になったけどそれでもほんの少しだった。

「今日は出かけるぞ」

「はい」

サンは、前と変わらない他人行儀な態度だけど夢の中のサンはいつものサンだったから少しは気が楽になった。

「着いたぞ」

サンの家から徒歩5分程だった。

「ここは?」

「お前の新しい家だ」

「えっ?」

前より一回り大きくなっている家にビックリした。前の家と同じ雰囲気が漂っているいてそのまま家に帰ってきた感覚だった。

「リーネ!!」

「お母様!!」

久しぶりに見るお母様に抱きつく。お母様が無事で本当によかったと胸を撫で下ろせた。

「サンロシスト様、ありがとうございます」

「いいえ。領主の息子として義息子として当然です」

「ふふっ…」

最後の言葉がよく分からなかったけどお母様が嬉しそうだからいっか。とりあえずスルーしておきましょう。

「リーネ、自分の部屋は2階よ?」

「あっ…うん」

自分の部屋に行ったってもう花束達は居ない。そう思って扉を開いた。

「嘘っ……」

前の部屋と同じ様にドライフラワーになっている花束達が飾られていた。

「俺が見逃す訳ないだろ?リーネ」

「……」

喋り方が戻っていた。

「いつから?」

「初めて部屋に入った時からかな」

プルプルと体が震える。

「他人行儀だったのは?」

「学校でヨーク・テントリオと教室に戻ったろ?」

「それで他人行儀な態度を取ったの?」

「ああ。ちよっとした意地悪」

ちょっとした意地悪!?って言ってる後ろから聞こえるサンに怒りを覚える。

「サン、こっちまで来て」

「はいはい〜」

軽快に歩いて来るサンに、頬を叩こうとしたら阻止された。

「おっとくらわないよー」

「もおー!!」

秘所を蹴ろうとしたらこれも阻止されて足を持たれて抱っこされてベットにボフンッと落とされた。

「夫婦2人のベットだぞ?」

「はぁ?夫婦って何?」

そういえばベット大きいな…部屋も大きいなー…って思ったのよね…。

「俺とリーネ」

「夫婦になった覚えはこれぽっちもありません」

「これからだから」

「いやいや!なりませんよ?」

「はぁ?“奥さんになりたい”って言ったろ?」

「あっー!!嘘だー!!あれって夢でしょ?」

「夢じゃないか?」

夢じゃない?夢?えっ?どっち?頭がパニックになったけども、夢じゃないと分かる。

「笑ってる…もおー!!意地悪!!」

「意地悪してないよ。リーネが可愛いから」

「それ答えになってない」

ギシッと音が鳴ってサンがベットに上がるからドキドキ心臓が鳴る。

「リーネ、俺の事好きか嫌い?」

「えっ?嫌いよ」

プイッとそっぽを向いたらサンがクスクス笑ったから私の気持ちはバレてる。

「まぁ、追々聞くかな…」

サンの手が伸びて私の頬を触る。

「ーーっ」

ドキドキと鼓動が早く鳴ってる。

「サン、ベットさぁー…んっ!?」

恥ずかしすぎて話を逸らそうとサンの方を向いたら口を塞がれてキスをした。

「んっ…」

「食べないから…心配したんだからな…」

「それは…花束が…って思ったんだから」

「リーネ、心配かけるなよ」

「ならっ…はぁっ…心配かける様な意地悪やめて」

「だから、急いで見せただろ?」

唇の上で言葉を紡いでいく。

「リーネ、愛してるよ」

「私は…嫌いよ」

そう言っても体はサンの背中に手を回すとサンの重みが身体中に広がる。

「んっ…」

「リーネ」

再びキスを始める。今度は深く深く何も考えられないように…ように!?…息が続かないから

タップしてベシッと叩いて“苦しい”と意思表示しているのにこの意地悪騎士は絶対分かってるはずなのにもっと深く深くキスが深くなる。

「はぁっ…くるしっ…」

「もっとだ…」

「んっ…だからっ…」

「リーネ、もっとだ」

舌が入り込み身体がビクッと反応してしまった。

「んんっ…」

「リーネ、リー‥」

キスの合間に何度も何度も私の名を呼ぶから許しちゃうじゃないの!!なんだか悔しいから背中に手を回してギュッと抱きしめた。

「サン…もっと…ゆっくり…好きだから」

「!!」

私の“好き”攻撃を発動しました。

「そんなに煽って。俺をどうするつもりなんだ?リーネ?」

「煽ってるかもしれないよ?」

「だぁっー…」

「??」

ポフンっと頭をベットに叩きつけた。

「お前、本当に襲うぞ?」

「サンならいいよって思ってる…」

顔を右向けるとサンと目が合う。

「だからそんな可愛い事言うなって」

「?可愛い事なんか言ってないわよ」

サンがゴロンと私から離れて横に寝転んだ。

「サン?嫌?」

サンが降りてしまったから上半身だけ起こしてサンの頬にキスを落とした。

「やりたいよ。ぶっちゃけて言うとやりたいけど大事にしたい」

「サンは、私の事好きなの?嫌いなの?」

「好きだから大事にしたい。カタが外れそうなんだよ」

「あっー…そうですか」

ポフンっとサンの胸に頭を置き手を胸に置くとサンが私の頭を撫でてくれる。私の視線先に腰の辺りが膨らんでいた。

「えっー…と…?」

「だからやりたいって言ってんだよ。でも、お前、療養中だろ?そんな病人にしたら俺が親父に怒られるわ」

「じゃあ」

怖いけど、初めてだけど私だって出来るよね?と自分を奮い立たせて起き上がった。

「リーネ?」

「サンは、そのままでいてね」

「……?」

サンは私の言葉通りそのままの姿で微動だにせずに私の行動を凝視する。

「……」

「リーネ!!」

サンの膨らんでる所をソッと触ってカチャカチャとズボンのベルトを外そうとしたらサンが慌てて阻止した。

「リーネ!何やってんだ」

「サンが触れてくれないから…サンのを触れようと…」

「触れてほしかったのか?」

「だから触れて欲しいんだって。」

「俺が親父に怒られるから今日は無理だ。お前はいいから」

グイッと引っ張られて胸の中に入る。

「きゃあ」

「お前の温もりを感じさせてくれ。今はそれだけでいい。ちゃんとゆっくり抱いてやるから。

ゆっくり愛してやるから」

「なんか私が待ってるみたいでいやー」

「実際、待ってるだろ?」

「そうかも知れないけどサンだって…んっ…」

「だからそんな色っぽい声出すなって…」

「そんな…事…んっ…」

愛おしい男性のサンにキスされていると思うと身体が嬉しがちゃうのは仕方ないと思う事だと思うけどと首を傾げたらサンは「くそっ」と呟いて顔を覆ってしまった。

〔トゥリーネ・ロータ、聞こえてるでしょ?サンは冷たい男よ。捨てられない様にね…〕

(リサンナさん…)

サンは、リサンナは殿下によって処刑されたと聞いた。きっとサンも手を下したと思う。

「サン…」

「リーネ」

サンの手をとって絡めてもう一度軽いキスを交わす。

「俺を狂わす魔性の女め〜」

「ふふっ。それを言うならサンは魔性の男じゃない?」

また軽いキスを交わす。


サンは冷たい男なのかも知れないわね。

でも、私はいつ切り捨てられても良いと思ってるけどサンは私と共にする気がする。

「サン…サンロシスト・スゥーカ様」

「どうした?」

「ふふっ…愛してるわ」

「だ・か・らっ〜〜〜」

また再び顔を覆ったサン。


私の体力が戻り次第「抱くからな」と言われて「うん」と頷いて胸の中に入って背中に手を回してサンも私を抱きしめてくれる。

この胸の中は誰にも渡さないと心に決めた日でもあった。


サン曰く、両思いになったから「付き合ってる」でした。

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