6.絡み合って絡みついて…解ける?

第6話

〔開幕・リサンナ・トゥイントゥル〕


「サンロシスト・トゥーカ」

「リサンナ・トゥイントゥルよ」

初めてサンに会ったのは学校が同じクラスになった時で、カルト・サンマーリの経由で仲良くなった。

「きゃあー。見てー!!」

「サンロシスト様よっ」

周りの女子達が騒いでいるからカッコいい。

年下、年上、同年代関わらずに騒がれている。

「キャアキャア騒いでるぜっ」

「ああっ…」

それがずっと続いていて五月蝿かったんだろうと思う。私がサンを見て何とも思ってないのを見ていたんだろうか唐突に言われた言葉に驚愕した。

「なぁ、リサンナだっけ?」

「えぇ。そうよ?」

なんかこの男、上から目線ムカつく気がするけど名前呼ばれたから返事はするわ。

「俺の女避けしない?」

「はぁ?何でよ」

女避け提案する男子が何処にいる?ってココに居たわー!!とサンを見る。

「それがいいな」

「……」

お前は黙っとれ。このバカ。ってカルトを睨んだらすごすごと小さくなった。

「他の女子からのアピールが鬱陶しいだよ。お前が居てくれればなくなる」

「私は伯爵なのよ?成人前に男性となんて」

「俺も伯爵だし?成人前にって別に何もしねぇ」

そう言って私を置いてカルトとサンは歩いて行く。サンは私と会ってものの数秒で『女避け』になってくれて言われて同じ身分じゃない!!

何だか頭きて2人の足を止めた。

「ちよっと待ちなさい!!」

カルトは応えてくれたけどサンは無言。

「どーした?リサンナ」

「いいわよ。なってやるわよ。女避け」

女避けになる事に決めた。

「じゃあ、宜しくな〜」

簡単にヒラヒラと手を振って去って行った。私に最初から興味がなかったサン。

ただ女避けとして側にいる事を許されただけだった。

それが6歳の時の出会いだった。

今思うと6歳児の会話じゃない気がするのは私の気のせいよね……?

6歳でもキャアキャア言われているサンは大人になったらもっとキャアキャア言われるんだろう…

それを側で見たいと思ってしまった。

「こっちだー!リサンナ」

私たちは街中で遊ぶ様になった。騒がれるのは変わらなかったけども、それでも前よりは私がカルトの側に居るから女子達が近付いて来なくなった。

「マジ、助かるわ」

「〜〜っ。言ったんだからやるわよ」

可愛くない事を言ってしまったけどこれ位言ったってどうって事ない!!のに内心ドキドキしていた。

「強気だな。サンロシストじゃくってサンだ」

「サンロシスト…愛称で呼ばせてくれるの?教えてくれるの?」

自分が前のめりになっていた事に気付かずにサンが呆気に取られていた。

「ああ。面白いヤツ」

「……っ」

笑顔が可愛くカッコよかった。サンを好きになるのに時間はかからなかった。

「面白いヤツって何よー」

「あはははー」

その笑顔はズルイ。心臓がドキドキとしてしまうからやめてほしい…けどその笑顔を私だけ特別なんだと思うと嬉しかったけどそれが長くは続かなかった。ずっと側にいるのは私の役目だと思った。サンの女避けになって8年目に差し掛かって私たちは15歳になった。

「最近、ソワソワしてるけどどうかしたのか?」

サンに聞いても「別に」と答えるだけであってそれに比例するかの様にソワソワ…周りをキョロキョロする様にもなった。

「俺、帰る」

フラっと帰ってしまうのもココ最近多くなった。

「カルト、サンは最近何かあるの?」

「さぁ?俺も知らんのだよ」

女の勘なんだけども、サンに女が出来た気がする。サンの側に居たのは私だったのに。それを横取りされるのは嫌。

「後をつけるよ」

「おっ!おいっ!リサンナ」

カルトの手を引っ張ってサンを追いかける。そして、衝撃の光景を目にしてしまった。知らない女と楽しく笑っているサンの姿。

「女連れだったのかー」

「……っ」

サンとその女が笑いながら楽しそうに坂道を下って街中に行ってしまった。

「追うよ!」

「わっ!待てって」

その後を私とカルトは無理矢理だけど追う。街中に用があったのはその女だけらしくサンは泉の所で座っていて待っていた。

「サン」

「カルトにリサンナか…」

いつもの素っ気ない態度。私とあのチビ女とどう変わらないって言うの?アッチはチビ女。

私は女よ?無性に腹が立つ。

「カルトは何か用事なの?」

「ああっ」

素っ気ないサンも大好きなの。全部ひっくるめて大好きなのに私にあんな笑顔を見せてくれた事はない。最初のあの時だけ。だからあの笑顔を引き出したいから女の武器を最大限使う。

「サン〜暇なら遊びに行こう!」

そう言って腕をグイッと引っ張るけどサンは無視だ。

「暇じゃない。待ち合わせ中だ」

「えっー?誰とぉー?」

知ってるけど知らないフリをする。

「あの店の中にいる」

「どれどれー?」

素直に教えてくれるサンにビックリしながらあの店って言うから見たらチビ女が店の中で店主のおばさんと喋っていた。

「ふぅーん。可愛い子かしら?」

「そうだろ?可愛いんだよ」

「……!!」

サンがデレた。今、デレた。ビックリしちゃって一瞬魂が抜けた気がした。座っているサンとカルトは笑い合っていた。

「サン〜〜なんだそのデレ」

「マジ、可愛いから」

「………っ」

何よ、それっ。私に一言も可愛いいって言ってくれてない。

「私にも可愛いって言って?サン」

「はぁ?何で?」

何でって。サンから可愛いって言ってほしい乙女心なのに!!

「終わったか。リーネ」

「……っ」

このチビ女が『リーネ』。覚えたわ。

私からサンを取るなんていい度胸してるわ。

「ゆっくり話してればいいじゃない」

「リーネ!」

あの女…サンが好きなのね。でも、渡したくない。ふたりの背中を睨む様に見つめた。


「リサンナ、これからの進路はどうするんだ?」

「お父様、お母様、リサンナ・トゥイントゥルは剣術の道に進もうと思っております」

サンが剣術の道を進むと聞いたから私も剣術の道を進みたいと思った。

「結婚相手候補だって沢山いるのに…」

「いいえ。お母様。私はもう決めましたわ」

テーブルの上にある鋏を持って腰まであった長い髪の毛をバッサリと切り落とす。

「淑女のリサンナは死んだと思って下さい。剣術を学びに参ります」

両親の反対で剣術を、学びに行く事にした。本当の理由はサンと離れたくなかったから。

「お気をつけて行きなさい」

「ああっ。楽しみにしてるよ」

「ありがとうございます。お父様。お母様」

礼をして、両親と抱擁する。剣術学ぶ為に後3年。残りの時間を両親に楽しんでもらおうと思った。


あっという間に18歳になり剣術の学校に行く事になった。

「大人の仲間ね。リサンナ。しっかり」

「はい」

剣術を学ぶ人間は18で大人の儀式で、ある舞踏会が免除される。その前の歳から剣術の基礎は学んでいるのだけども本格的な事は18歳からなのだ。

「行ってきます」

両親に挨拶をして別れた。サンと一緒に汽車に乗ろうとして行ったのだけども、サンは「もう行った」との事だったからガッカリして歩いていたらサンの姿が見えた。

「サ……」

「いらない」

「リーネ!!」

花束を地面に叩きつけていた所を見てチビ女が顔面蒼白して部屋に戻っていったのを一部始終見れた。

「ここがチビ女の家ね…」

思いがけない情報にウキウキして面白いのを見れて嬉しかった。これでサンが忘れると思ったからだ。

でも、チビ女の事をちょっとでも批判するとサンが怒りを向けるから意地悪だって言いたくなる。

「もう、忘れたいかもよ?」

「リーネが忘れたいと言わない限り俺は忘れない」

サンのチビ女に対する執着に近い想いは私からみても尋常じゃないと思う。

「サンも凄いと思うけど俺はお前も凄いと思うよ?」

「えっ?」

カルトと訓練所に向かう所でたまたま会った。

「サンは?」

「街中」

「そう…」

街中と言って察しが付く。毎年毎年チビ女に年齢の数だが見繕って贈って当日花束を受け取る。

(サン……)

私は、サンの女避けの為だけにいる。でも、でもね…それも苦しい。

「ねぇ、リサンナ」

「?」

「サンロシスト様は毎年この時期になると街中にお一人で行かれるけど何かあるの?」

「それはサンに聞いて」

どうしてチビ女の事を言わないと言わないといけないのよ。口にも出したくないわと怒ってしまったから怒りを鎮めようと黙っていた。

「サンって愛称なの?やはりリサンナはサンロシスト様と付き合ってるのねー」

「……」

付き合ってる訳ではない。イライラするからただ微笑んだ。

「やっぱりー」

「リサンナ、いいなー」

私の微笑みを付き合ってるのだと取って騒がしく去って行ってカルトが慌てた。

「リサンナ、嘘はいけないだろ?」

「あらっ?私は嘘も本当も言ってないわ。微笑んだだけ」

「この策略女〜」

「なんとでも。サンの隣にいる為ならなんでも使うわよ」

「その割には進展してないけどな」

「五月蝿い!」

カルトの腹にアッパーを喰らわしてやった。

「ぐっ…怪力女っ…」

腹を抱えてその場を立ち尽くしたカルトを置いて訓練所へ向かいその日の訓練はサクサク倒せてスッキリしました。

 20歳になり私も騎士団に入れる事に喜びを得た。サンと対等にもなれて認めてもらえると思い女として見てもらえるかもしれないと思った。

「2人ともおめでとう」

「ああ。リサンナも」

「うん。サンも」

「ああ」

それだけだった。まだ対等にも女として見て貰えてない?その一言が物語っていた。私はヨロっと目眩がした気がして壁に手をついた。

「大丈夫か?リサンナ」

「ええっ…」

その言葉をかけてくれるのはカルト。サンは見てるだけ。

「私、戻るわ」

「ああ」

答えるのはサン。サンとカルトで交互に言うのをしてるんじゃないかと思った位に2人は喋らなくなった。相変わらずサンは騒がしく、私が恋人=彼女と言われてるのに気にせずにしてる。所詮、私はサンにとって女避け。その現実が突きつけられていても、恋人になりたいと願う。

「温め酒よ?」

「ありがとう」

サンが騎士副団長になりその日は討伐のお陰であのチビ女に花束を渡さずに済むからスッキリして嬉しくなってサンと夜通し起きてる事にした。

「サン…」

「異性に淫らに触るな」

「ごめんなさい」

手に触ったら怒られた。チャンスがあると思った。もう忘れているかと思ったのに、一気に飲み干して片付ける時に

「リーネ、誕生日おめでとう」

「……っ」

ボソッと空を見上げて言っていたのを聞こえたけど聞こえないフリをした。胸が締め付けられる。

こんなに想っているのにサンは応えてくれない。

「……」

戻ってきて、王都主催の舞踏会に警備として任された。もちろん、サンもカルトも。

「よし。警備につけ」

「はい」

「はっ」

警備に着くけども私の警備場所は舞踏会ホール。

「……」

あのチビ女は、サンを想わせるドレス一色の色。

肌を一切見せずに露出が極端に少な目。それは、もう、既婚者か婚約者がいますという意味も含まれている。

「……っ」

ペンダントを見て驚愕した。ブルーのペンダントをしていた。

(あれは、サンのお母様の形見でサンの妻になる人に渡すもの)

散々、舞踏会前に折ったと思ったのに意外にもしぶとかったらしいチビ女はと私の闘争心が燃える。

「……」

舞踏会は王都主催だからここはグッと我慢なのに、あのチビ女は王都殿下と踊り始めて…。

「………っ」

王都殿下はサンの剣術仲間で学友でもあり私も挨拶をした位だった。

(男爵のくせに………)

怒りで目頭が熱く霞んでいく。私とあのチビ女がどう違うか誰か教えてほしいと思う私は醜いと分かっていた。

「リサンナ」

「はい。副団長?」

急に副団長のサンに声をかけられた。

「王都殿下と婚約者のマリスナ・ロザルトベス様がホールに入ってる。気を抜くなよ」

「はい。副団長、しゃがんで」

副団長の方が背が高いので副団長を少し屈めさせる。

「?なんだ?リサンナ」

「好きですわ」

「リサンナ!!」

耳元で囁いてやった。案の定、サンは激怒。

「いい加減にしろよ」

「本当の事ですもの」

ふふっと笑って警戒に戻る。言いたかった言葉。いつも流されていた言葉を言えてスッキリした気がした。

「これからも責めて行きますわよ。サンロシスト・スゥーカ」

副団長の背中を見つめてそう言った。

「……ふっ」

もちろん、それを見ていたチビ女の目の前でやってあげた。優劣感が迸って嬉しかった。


さぁ、あのチビ女と対決かしらね?

サンロシスト・スゥーカに邪魔されない様にしたいわね。




絡まって絡み合って…解けるかはその行動次第だと思う。

「……っ」

舞踏会は何事もなく終わったから良かったけども、途中で無意識にサンを探してしまったらホールの通路側にリサンナさんとサンが寄り添っていてリサンナさんがサンに耳打ちをしていたのを見てしまった。リサンナがこっちを見ながらだから見せつけてだと思う。心臓が痛かった。そんな2人を見たくなく急いで視線を逸らして明日2人に会いたくないと願ったのに残酷すぎ。

「……」

早朝の家に手紙が届いて開けたら『トゥリーネ・ロータ、ここに』と示されていて今その場所におりますけども、なんの試練なんでしょうか?

「飲んだらいかが?」

「はい。ありがとうございます」

会いたくない1人のリサンナさんとお茶をしておりますが話す事なんてない。昨日の事で心臓がズキズキ痛くまだ治ってないのに。

「サンと婚約者じゃないってバレちゃったのね」

「……」

悪びれる様子もなく淡々と嗤いながら話す。

「貴女より私の方がサンを好きな気持ちは長いのよ?そんな女に…」

ケーキを頼んでおりフォークを、持ってケーキにブッ刺した。ケーキは綺麗な形をしていたのに無惨にも姿形が変わってしまった。

「……っ」

私たちの周りにいた人たちはそれを見てそそくさと会計して出て行く。私もその中に混ざりたかったけど声が出ずに震えていた。

「…そのペンダントの意味も分からないでしょ?ふふっ…」

「……お母様の形見だからって」

「そうね、形見ね。でも、形見だけじゃないわ」

「えっ……?」

形見としか聞いてない。別の理由をリサンナは知ってるの??

「お客様…」

店の店主がおずおずとリサンナさんに言ったら「面倒くさいわね」という顔をしてからお金全額テーブルに叩きつける。

「出るわ」

リサンナさんは、立ち上がって私に「着いて来い」と目配せをした。

「……」

怖かったけど着いていくしか私には判断がなかった。店を出てリサンナの後に黙って着いていく。

「あらっ?リーネ?」

「どうした?マリスナ」

王太子殿下とその婚約者がお忍びで街中に出ていてその2人に見られたとは私は知らなかった。

「今、リーネが…確かサンの部下じゃなかったかしら?あの女性…」

「あの女性?リサンナ・トゥイントゥルか?」

「うー…ん。名前は分からないわ。でも、リーネと一緒にいた」

「サンも知ってるだろう」

ジャックは、マリスナの腰を寄せてピッタリくっつく。

「ジャック?歩きづらくない?」

「王城までだから良いだろ?」

「まぁね」

2人は王城まで帰って行った。ただ、マリスナは疑問を抱えたまま。


「湖畔は良い所よね」

「…そうですね」

2人で湖畔に来ていてリサンナは着いてからはしゃいで遊んでいてリーネは砂浜に足を取られそうになりながらリサンナはリーネの顔を見て嗤った。

「リサンナさん、私に構うよりサンの所に行ったら如何ですか?」

「昨日の耳打ちで好きと伝えたわ。『俺も』って言ってくれたわ」

昨日の事を引っ張り出して「あなたも知ってるでしょ?」という目をして髪の毛を耳にかけながら私を見てまた視線をそらして砂浜と戯れる。それを見てまた心臓がズキズキと痛む。

リサンナさんが、サンの事を好きなのは知ってるのけども、やはり胸が痛い。

リサンナさんは、はしゃいで遊んでいたのをやめて私を見る。

「だから、そのペンダント返して?」

「えっ?」

手を差し出すリサンナさんに「はい。そうですか」と渡す訳にはいかない!とペンダントを握りしめる。

「嫌です。サンから何も言われてません」

「生意気な女ね!!サンからとっくに見切られてんの分からないの?」

そうかもしれないけども、それでも渡すのは嫌だ。

「妹として見てるのは知ってます!!」

「だったら、ペンダント要らないでしょ?貴女にサンの相手は重いのよ?」

「……っ」

「サンの逞しい体の腕の中に抱かれて心地良くって…うふふっ…これ以上は言えないわね。閨の事だもん」

幸せそうに嗤うリサンナに心臓をギュッと掴まれてギリギリと切り刻まれている感覚に陥る。

「それでも、渡せない」

目頭が熱くなって涙が流れて落ちる。

「男爵のくせにサンと釣り合うと思うの?」

「……っ」

身分の事を言われたら何も言えなくなってしまう。でも、サンの事は私だって大好き。

「早く渡しなさい!!この女!!」

「きゃあ」

リサンナさんが急に襲いかかって抵抗しようとしたら砂浜に結局足がもつれて転んでしまった。

「あっ…いい眺め」

「離して下さい!!」

リサンナの足の間にいて同じ女性同士なのに

リサンナさんの方が力が強く、あっという間に

片手で簡単に私の両手を砂浜に縫い付ける。

「離して!!」

「あんたがサンの事を諦めたら」

「嫌です!私もサンが好きなんです」

私だってサンが好き!これだけは譲れない。

「頬を叩きたいけど見つかると面倒ね…。

ふふっ…いい事思いついた」

リサンナさんがゆっくり首元に顔を近づける。

「いい身体ね…。サンが執着するのが分かるわ」

「やめっ…」

恐怖でガチガチと体が震えているのにリサンナさんは嗤って私の胸の輪郭をなぞる。

「ひっ…」

「ふふっ…可愛い反応。まだ苛めたいわね…」

輪郭をなぞってから私の首に片手を嵌め込む。

「リサ……」

「殺しはしないわよ?ただ痛い目見てね」

そう言ってゆっくりと耳元で囁いた。

「いっ…たっ…」

「ふふっ…」

満足な嗤いをしているリサンナさんに私の体の震えが止まらない。

「これサンが来たら「私に渡す」って言ってね」

「なっ…」

ペンダントが倒れた時に服から出てきてしまいリサンナさんはそれを見てからそう言って私から退いたその直後誰かが走ってきた音がした。

「リーネ!!」

「サン?」

「……あらっ?早かった事」

クスクスと笑ってサンが来る事をいかにも知っていた様子だった。そして、またなんの試練ですか?会いたくない人もう1人来ましたよっ。

「大丈夫か?」

「うん…」

私は砂浜の上に座っておりサンに手を差し伸べられて立ち上がれた。

「大丈夫か?」

「うっ…うん…」

パタパタと服についた砂を払われた。

「ねぇ、サン」

リサンナさんが私とサンの側に来てサンの腕を絡めとる。

「ーーっ」

逃げたかったのに足が縫い付けられている様に逃げれない。

「なんだ?リサンナ」

「サッ…」

グイッとサンが私の腰を引き寄せて密着させる。真ん中にサン。右にリサンナさん。左に私の位置になってる。

「トゥリーネさんとお話ししてたのに。どうして分かったの?」

「王太子殿下とマリスナ様が教えてくれたんだ。お前ならその気配分かるだろ?」

「えっ?あの時、王太子殿下とマリスナ様が居たの??」

「リーネは、気付かなくって当たり前だ」

「……っ」

なんか線を引かれた気がした。お前には分からない事だと。

「えぇ。それは分かるわ。だって王都の警備だもの。王太子殿下とマリスナ様を護らないといけないしね…」

そう言ってサンの腕に頭を擦り付けた。

「リサンナ、今日は訓練日だったろ?無断欠勤なんて不正を疑われるぞ」

「あらっ?副団長。私がいつ不正を働いたと?」

「……リサンナ」

リサンナさんとサンの会話に入れなく黙っていたらリサンナさんが私の名前を突如呼んだ。

「ねぇ、トゥリーネさん」

「あっ、はい」

ビックリして慌てて顔を上げてリサンナさんと目が合った。

「私に言いたい事があるのよね?」

「えっ?」

「あるのか?リーネ」

サンが私の顔を見てから急にその一点から目を逸らさないサンの突き刺さる視線。

「サン…?」

「……」

「トゥリーネさん?」

「!!」

慌ててサンの視線から逸らしてリサンナさんを見たら手を差し出していた。

「……っ」

さっき、リサンナさんが首筋に近付いて痛いと思ったのは跡を付けたからでその口封じの為にペンダントが欲しいとの事だと悟った。

「はい…」

「まぁ、ありがとう」

「リーネ!?」

「私にそんな…資格は…ないの」

サンの目の前でサンからもらったペンダント外しリサンナさんに渡すとリサンナさんは喜んで受け取る。

「ありがとう。返してくれて」

「………っ」

本当は返したくなかった。

だってサンの気持ちが入ってると思ったから。

でも、私は…と無意識に首筋の跡を隠して俯いてしまった行動にサンもリサンナさんも見ていた事に気付かなくリサンナさんはペンダントを持って嘲笑いしていてサンは私を射抜く様に静かに怒っていた。

「では、副団長。近々、お家に参りますわ」

「あぁっ。首を洗っておけ」

「はいっ。では、失礼しますわ」

リサンナさんはウキウキに仕事の方に戻っていた。

「私も…帰らない…」

「リーネ」

「きゃあ!!」

サンが急に私をお姫様抱っこをして隣接している芝生に入る。ピクニックするのに丁度良い場所でもう少しすると家族連れで賑やかになるけどこの時間帯はほぼ人は居なくカップルにはもってこいの時間帯だった。

「サッ…」

ドサッと降ろされてまたあっという間に私の両手が今度は芝生に縫い付けられてサンの重みが身体に広がる。

「サッ……」

サンが怒っていた。

「誰に…つけられた?」

「えっ…これは…」

リサンナさん…なんて言えないから黙る。

それが気に食わなかったのかそれとも別の理由かサンは静かに言う。

「そうか…」

「サンッ…」

片手で私の付けられた跡を触り顔を近づける。

「…痛っっ!サン、痛いっ!!」

「お前は俺のモンだ!誰かに跡付けられてるんじゃねぇーよ」

ガブッと噛まれてその跡に更に跡を強く強く付けられ怒ってるサン。

「痛いっ!サン!やめてっ」

「お前が誰にやられたか言ったらな!!」

「いやっ…痛い」

その場所だけじゃなく他の場所もジンジンとしてきて痛くなり怖くなる。

(どうして?怒ってるの?)

怒ってる理由が分からない。

妹ポジションの私に怒る理由はなに?

頭の中がぐちゃぐちゃの私に構わずにサンは次の段階を踏む。

「ここもつけておくか」

そう言って上半身の服のボタンを片手で器用に脱がしていく。

「サンっ!やめて!」

「俺の跡つけるのは俺のだからだろ?」

「俺のって…えっ?」

サンの言葉に耳を疑ったけどサンはここが外だと構わずに進めていき私の胸がプルンッと出て、

ガブッと口に含む。

「んっ」

声を出したい訳じゃないのにサンに触られていると思うと身体が反応する。

「いやらしい身体だな。いつヤッたんだ?俺の

夜勤の時か?」

「ヤッてないわよ!好きな人に捧げると誓ってるんだから!!」

「……そうか。好きな人に捧げるか…はっ。

じゃあ、無理矢理奪うか…」

「サンッ!!やめて…くっ…」

サンの手が私の知らない場所に指が入る。

「狭いな。指一本って所か?」

「痛っ…いやっ…こんな場所で…」

「奪わないと他でやられるだろ?」

「サンッ…サンロシスト、やめて」

「泣いて…何で拒むんだよ!!」

サンが私の両手を離して芝生に拳を叩きつける。

「私だって…貴方だって…後悔する」

「後悔って…俺はリーネと共に居ると約束しただろ?」

「してないわよ!!誰と間違えてるのよ!!」

ムカついたから、そう言えば授業で『襲われたら男性の“大事な急所”を蹴ろ』と教わったから蹴りました。

「ーーっ」

蹴ったら伸びていたのが体を丸めて押さえたから今のうちだ!といそいそと這い出た。

「サンだって!!!好きな人とやるべきよ!私はもう無理ですけどね!」

「リー……ネ……」

急いで服を整えて、サンを見たら押さえたまま私の名を呼んだけどもそのまま無視して家に向かった。

「バカっ!!サンのバカっ!!」

お家に着いてからベットに身体を預けた。

「サン……」

名前を呼んだら涙が流れてきて震えが来た。

「………っ」

怖かった。サンが知らない人に見えて知らない

手つきで怖かった。本当は怖かったからただ抱きしめて欲しかったのに。

「どうして、教えてくれないの?」

ペンダントの件だってそうだ。『形見』としか聞いてない。

「大事な人じゃないからちゃんと言わないのよね?」

シーツを握りしめて声を殺さずに涙が流れる。

「妹ポジションだもんね。私は…」

言っていて涙が出てきて止まらない。

〔返してくれてありがとう〕

「いやよっ…。私も好きなのに…」

シーツをもっとギュッと更に力を入れて握りしめても涙が溢れて止まらない。

顔をベットに押しつけて泣く。

誰にも見せられないよ。こんな泣き顔。

サンにだって見られたくない。

こんなぐちゃぐちゃしてる自分の醜すぎる感情。

「リサンナさんに私のペンダント返してって言いたい」

ペンダントがあった首元を触るけど無いのは分かってる。

サンが帰って来たからもっと楽しい事ばかりだと思ったのにそうじゃなかった。

私の最大の壁のリサンナさんを忘れたかった。

8歳のあの時に会っているリサンナさんを消去していた自分を恨みたいけど出会ってしまった。

サンとリサンナが結婚したら潔く修道院に入ろう…そう思って起き上がった。

「………」

小さい火種はあちらこちらに飛び回っているのだから。

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