4.溺愛したい…

第4話

最初から俺はお前…リーネに惹かれていた。

好きなのに今も言えてない。

18歳で騎士の道に入る時も言えなかった。

「待っていてほしい」と。

リーネ、あの時のお前は俺のいつもの行動に拒否したんだよな。

「………」

騎士だけが入る事の許される宿舎の2人部屋。

俺はベットで母の形見のペンダントを見ていた。

「サン、まだ見てるのか?」

「…あぁ、まただよっ」

俺だって女々しいと思う。

花束を受け取らなかった事にショックで、

1年以上前の事をうじうじ引きずっている。

離れている時こそリーネの誕生日の前々日に

出かけて花束を作って貰う事に決めた。

きっとリーネは貰ってくれる自信があった。 

俺からだと早く気付いて欲しいが案の定、早く気付いたらしい。

「今年は受け取ってくれただろうか」

12歳のリーネの誕生日で俺は19歳。

結婚出来る年齢になったけど結婚なんて言語道断。

「リーネ」

リーネから貰った手紙をまた読み返す。

読み返していてボロボロになっているけどこれは俺の大事な宝物。

「サン、訓練だってよ」

「今、行く」

手紙と形見を胸ポッケにしまって起き上がって

訓練に向かう。

体はあざだらけで体は大きくなる。

「サン、今日は負けねぇーよ」

「俺だって負けねぇーよ」

カルトが居てくれるから対戦相手に困らない。

騎士の事に集中出来る。

「……っ」

学校に行ってる間に親父が再婚して俺に弟が出来たのはビックリしたけど嬉しかった。俺の事を

心配していて再婚を先伸ばしていた親父には幸せになって欲しかったからだ。

半日だけ帰れた時に家に寄って「おめでとう」と祝杯した。弟・ションとも初めて会って可愛いかった。

「お兄様、よろしくお願いします」

「ション、堅苦しいのはなしだ」

俺の小さい頃を思い出すくらい似ていた。

「ションはもうリーネちゃんと仲が良いんだぞ」

「はぁ?」

親父の言葉にビックリ。

「兄様の好きな女性と仲良くするのは弟の役目です」

「いやっ…待て…。親父〜〜」

弟にまでバレてるって事は…と義理母を見たら苦笑。

「兄様!!逐一報告します!!」

と敬礼までされたのはここ最近の良い思い出だ。

「そこまで」

監督に言われて対戦が引き分けで終わった。

「お疲れ様。サン」

「あぁ」

対戦終わった直後にリサンナに声をかけられた。

「はい。タオル」

「ありがとう」

リサンナがタオルを持っていてそれを受け取って俺の隣に来て喋る。

「2人とも凄かったわ」

「ありがとう」とカルトが自信満々に言っていたけど俺は無視して顔を頭を拭く。

「サン、凄かったわ」

「あぁ」

2度も同じ事を言うリサンナ。

「……」

リサンナとカルトを、置いて歩いて行く。

カルトにもリサンナにも付き合ってらんない。

俺はリーネの為に強くなると決めたのだ。


それから訓練、訓練の日々。体力強化をこなして騎士になる為に、リーネに相応しい男になる為に訓練・実践をこなして行く。

「おりゃあ!!」

自国のフロータリーニ国は獣達が多く出る。

森の奥深く行く程デカくなる獣達。

「今日は森の奥深くか…」

「あぁ…」

物音を立てずに剣を握り心臓がバクバクしてるが落ち着かせる。

(こんな所で死ねない)

一歩一歩と森の奥深く入って行く。今居る場所も自国の領域だから獣を討伐しないと一介民達に

被害が被る。

「リーネがもし危ない目にあったら…」

そう思うと防げるなら事前に排除して、自分達の領地を護りたい。引いてはリーネを護りたい

その一心で歩を進めていた。

「いたぞっー」

「行くぞっ」

「あぁ」

カルトに言葉をかけて剣を鞘から抜き走り出す。

「!!」

予想以上のデカい獣。足が震え体が震える。

「はぁっ。こんなもんか?」

デカい獣の前で震えている自分を叱咤する。

「これ倒さないとリーネに顔向け出来ねぇーよなー。俺!!」

叫びながら獣に向かって行く。獣の咆哮と

剣の音、カルトと目配せして獣にダメージを

与える。

「カルト、こっちから行くぞ!」

「おぅ。俺はコッチからだ」

俺たち以外にも学友仲間とその獣を倒して行く。

「はぁ…はぁ…」

無我夢中で倒したから最後の方は覚えてないのが本音だ。ただ、先生から褒められて父の方に倒したと言う手紙を送ったと言うのは目覚めてから聞いた。

「……っ」

「派手にやったよなー」

「お前もな」

2人…それ以外も他のデカい獣に戦いを挑んだ

学友達も傷だらけになった。骨折はしなかったのが幸いだ。

「サンロシスト・スゥーカとカルト・

サンマーリ」

「はい。先生?」

カルトと笑いあっていたら先生が入ってきたが

俺たちはまだ動けないからベットの上。

「2人ともおめでとう。騎士団入団だ」

「「へっ?!」」

2人して間抜けな声が出た。

「先生、マジですか?」

「あぁ、おめでとう。2人とも。そして本当によくやった」

先生の言葉が遠く聞こえる。カルトが喜び泣きしてる。

「おまっ…泣いてる…あはっ」

「お前こそ…泣いてるよっ」

「えっ?」

カルトに言われて初めて気付く。涙を流していた。

「あはははっ…やったぜっー!!」

嬉しくって怪我してる腕をスッポーンと忘れて上げてしまった。

「痛たたっ…。夢じゃないな」

「あぁ…。現実だな」

2人で泣き笑いしてそれを見ていた先生は呆れ顔で笑っていた。

「リーネに報告出来る!!」

「リーネちゃん、嬉しがるだろうな」

「ああっ」

リーネに報告出来る事が嬉しかった。騎士団に

入れる事も嬉しかったけどそれ以上にリーネの

相応しい男に近づいた事が、嬉しかった。

「リーネ……」

リーネから貰った手紙を開いたらボロッと破れた。

「はぁっ!?」

「どうした?サン」

「リーネからもらった手紙が……」

「お前、それ何百回も見てて討伐の時も持って行ってるだろ?」

「でも、リーネの手紙だぞっ?大事な…」

「リーネちゃんに書いて貰えば良いだろ?」

「リーネは書かない…。これもやっとの事で書いてもらってるんだ」

リーネのお母様に「手紙はお金の問題なしに俺に送って」と伝えていたが一向に来ないからリーネは恥ずかしがり屋なのだ。

「これは大事にしまっておくよ…。母の形見と一緒に」

リーネから貰ったクッキーの箱にしまった。

「おぃぃっ。それもボロじゃねぇーか!!」

「?。当たり前だろ。これもリーネが10歳の時に持ってきた箱だ」

「はぁ?!」

リーネから貰ったクッキーは激辛だったけど全部食べた。その時に貰った手紙と箱は取っておいて騎士の道に入る時も持ってきたからボロだと思うが俺にとっては大事な大事な宝物だ。

「お前のリーネちゃんに対する執着が怖い」

「俺は普通だよ」

普通だと思うよ。怪我なんて治して早く領地に行き、リーネに報告したい。

「よしっ!怪我を早く治すぞ!!」

意気込んでも怪我してるから痛いものは痛かったけどな。


「その花とそれと…それを、13本で包んで下さい」

「はい」

今日は学校が休みで、明後日リーネ13歳の誕生日だから街中の花屋に来ていた。リーネの好きな花が増えて色とりどりの綺麗な花束になっていく。この情報はリーネのお母様からだ。

「これをスゥーカ領地のトゥリーネ・ロータに」

「畏まりました」

「これも。入れてくれ」

「はい。お入れします」

カードも添えてもらう。

ワザと『騎士団に入る事になった』とは書かずに直接リーネの目を見て口を見て身体を見て伝えたいから『チビー。チビー。重っ』と毎年書いたのを添える。

(綺麗になったんだろな…)

ふっと思ってしまった。会った時は8歳。

あれから俺は20歳になりリーネは13歳になる。弟・ションに監視をしてもらってるが、リーネに学友が出来たと報告してきた。

「ヨーク・テントリオ〜〜!!」

ぼそっと店中で呟いてしまった。

リーネの側に大体はいるとションから報告が来てその時の討伐は鬱憤を晴らすようにサクサクと倒す。

「サンーー!!」

カルトに抱きつかれたが無視。倒す敵は他の男。

「送っておきます」

「よろしくおねがいします」

金を払って花屋から出た。届くのはリーネの

誕生日の当日の朝だ。

「サン」

「リサンナか」

リサンナが俺を待っていた様に隣に来た。

「また、いつものかしら?」

「お前に関係ない」

聞かれても答える義理はないから答えない。

「リーネちゃん、もう忘れたいかもよ?」

「リーネから忘れたいと聞いてない」

「…そうね…。騎士団入団おめでとう」

「あぁ」

これがリーネに言われたらもっと嬉しかっただろう。

領地に戻った時に言おうと思っていたがリサンナも一緒に領地に戻って何かとあれこれ連れ回されて結局リーネの所に行けずに騎士宿に戻った。


そして、20歳になって無事騎士団に入団出来た。カルトも、リサンナも一緒だ。入っても最初は

見習いだがこれも基本中の基本で、基礎でもあるから先輩達の戦い術を盗んでいく。

リーネに相応しい男になる為に。

「14本の花束で包んでくれ」

「畏まりました」

リーネが14歳になり俺は21歳。もうとっくに

結婚しても良い年齢だが妻はリーネと決めているから親父も何も言ってこないが周りの女共が

五月蝿いのは仕方ない事なんだろう。

「恋人はいいぞー」

「はいはい」

カルトは21歳で恋人を作ってまた俺と同部屋なんだが2日に1回は帰って来なかった。

「………」

そんな時、俺は1人でリーネから貰ったボロボロの手紙を箱から出してそれを持ってベットに寝転がりながら見る。

「リーネ…。好きだよ」

手紙に何回キスを送ったか分からない。リーネにキスを送ったのはリーネが10歳の時に頬に一瞬

送っただけだった。

「くっ…」

俺も正真正銘の健全な男だ。

「リー…ネ…」

キスを思い出すだけで下半身が疼いて熱をもつ。

「くっ…」

愛おしいリーネを思いながら自分のを鎮める。

「リーネ…」

リーネは段々と女性らしい体つきになっていき

唇はふっくらと髪の毛は艶々に綺麗だろうと…

身体は華奢で抱きしめると壊れるだろう…と想像しか出来ない。

「くっ…」

「サ…ン」

「リーネ…」

こうやって甘い声で俺を呼んで、俺に触れて、

キスを送って、腕を回してくれて全身を俺に預けてくれて俺の下で可愛い声でないてくれるだろうか…。

「ーーーっ」

手の中に俺の熱い想いが掃き出された。

「はぁ…リーネ…」

リーネを貪りたい。俺の気持ちをぶつけたいと思うのに距離が邪魔して年月も邪魔してる。

「リーネ…好きだよ」

もう一度、ボロボロの手紙にキスを落とす。

「花束は、15本で」

「はい。畏まりました」

リーネ15歳になり15本の花束。俺は22歳。

今もヨーク・テントリオが付き纏っているらしいがリーネは何とも思ってないとションから聞いてウキウキして討伐はやはりサクサク終わる。

「お前、絶好調だな」

「まぁな」

「そして、よく続くなー」

「なにがだ?」

カルトと訓練しながら喋っていた。

「リーネちゃんとだよ」

「リーネとか?8歳で会ってるからかれこれ…」

「9年!?お前、マジ凄いわー」

カルトが関心していた。

俺は花束を送る時カードに、

『リーネに、会って話したい事が沢山ある』

と書いたが消した。何だが恥ずかしくなったからだ。

「あれっ?そういえば…」

ふっと思ってしまった。消したカードが手元にない。

「しまったー!!」

「今だ!」

俺の不意打ちを打ち取って勝ったカルトだが俺はそれどころじゃない。

「勝ったけどお前は負けた悔しじゃないな」

「リーネに書き損じを送った…」

「あはははー。ドンマイ」

カルトの笑いに腹が立ってもう一回勝負を挑んで俺が勝ったのは言うまでもないけどな。


「獣の群れが自国の境目まで接近してる」

「マジかよー」

「これから討伐に向かう。サンロシスト・

トゥーカ」

「はい」

団員全員を集めていて説明をしていた時に突如団長から名前を呼ばれて前に出る。

「サンロシスト・トゥーカ…お前を副団長と任命する」

「ありがたき。自国…フロータリーニ国の為に

この身尽くします」

最大級の礼をして副団長として任命された。

俺が23歳。リーネ16歳だった。

「いざ、討伐へ」

副団長として一介の民達を護る為夜通し見張る事になる。

「………」

月が、てっぺんまできて時刻が変わる。

「リーネ、おめでとう」

空を見上げてリーネに届く様に伝える。今回は

リーネに花束を包んでもらえなかった。獣の接近で命令されており2.3日前から街中から離れていた。

「サン、温め酒よ?」

「ありがとう」

リサンナが温め酒を持ってきて俺は一気飲みしてからをリサンナが受け取る。

「獣の動きまだね」

「あぁ。でも、夜行性もいるから気は抜けない」

「そうね……」

俺は、遠くの森を見てそう言った。

リサンナは隣に座って手を握ってきた。

「何だ?」

「なんとなく?」

「なんとなくで異性に触れるな。リサンナ、お前に感謝してるけどそれ以上はない」

「知ってるわよ」

そう言って手を離した。何かしら俺に触れてくるから距離を取るのは大変だ。

一瞬気を抜いた時だった。遠くでキラッと光る。

「!!皆、起きろ!!獣達だ!!」

「サン!」

「リサンナ、団長に報告だ」

「はい」

リサンナを団長に報告しに行かせて俺は剣を

抜く。獣達が接近してくる。地響きが体中に浸透する。

「さぁ、来い!!」

剣の音と、獣の咆哮。体に傷が増えていくがこれ以上は行かせられない。

「副団長!!」

「そっちは任せた!!」

「はっ」

副団長と呼んでくれる事に嬉しさが込み上げる。

「サン!」

「カルト!こっちだ」

「任せろ!!」

カルトがいつも通りに俺の呼吸を読み動いてくれる。

「くっ…」

今回の獣達は前みたいに思い通りには行かないがここで食い止めるのが俺たちの義務。

「リーネ!リーネ!」

愛おしい愛おしい女性の名を呼んで獣に向かって行く。どんなに離れても俺はお前の…リーネのものと。

「ふぅー…」

団長もリサンナも入り全部の獣を倒して気付いたらもう明るみが見えかかっていた。

「よく止めた!みんな無事か?」

団長が労いの言葉をくれた。

「サンロシスト、よくやった!」

「ありがとうございます」

本当だったら今日の朝には16本の花束が届いているはずだったけどその後報告書に追われて仮眠をとって起きたらもう夜になっていた。

「リーネ…ごめん」

16歳の時だけリーネに花束を送れなかった。

次の日に送ろうと花屋に行ったら花屋が定休日で副団長になったらなったで休みが極端に減り仕事が増えて討伐の回数も増えて行った。

副団長の23歳の時は副団長任務は激務で1年が

あっという間だった。

「17本で花束に」

「畏まりました」

丸々1年空いてしまったけど17歳のリーネに送れる事に安心した。カードにいつものを書かずに『16歳の時はごめん。ちゃんと謝りたい』と素直な気持ちを書いた。

副団長は嬉しかったけど、リーネに16歳の花を送れなかった事がずっと1年、後悔三昧。

「これも一緒に」

「はい。入れておきます」

花屋に渡して花屋を出たらまた居た。

「領地に帰るのかしら?」

「あぁ。なんでだ?」

「偶然ね。私もよ」

リサンナが笑ってそう言ったが追求は面倒臭いからしなかったのを後悔した。

まさか、リサンナと帰って街中で2人で歩いていたのを領地の住民がリサンナを婚約者と噂をしてるなんて俺は後で聞いてゲッソリした。

本当は、リーネの元に行きたかったのにリサンナに朝から晩まで邪魔されて結局行かれずに帰って行った。

(前と一緒じゃねぇかっ!!)

「……リサンナが、邪魔でしょうがねぇ」

「あははは。今更か?」

「リーネに逢いに行きたいのに行けなくって街中でたまたま男と居た所を見てしまったし……」

「あっーくそっ」と言ってベットに寝っ転がった。

「リーネに早く会いたいのに」

月日がもどかしい。

17歳だからリーネが結婚出来る年齢にあと1年でなってしまう。

「舞踏会で社交デビューで成人だよな?」

「そうだな」

カルトは剣を磨いていて答えた。

「だよな……」

溜息を溢したらカルトが剣を鞘に収めて俺の元に来た。

「うおっ。何だ?」

「サン、マジでリーネちゃんとの結婚考えてんのか?」

「あぁ。初めて会った時からリーネは俺のモノ」

真面目に答えたのに、カルトが溜息ついて俺の胸に頭をつけた。

「お前さー…どうしてそんなに一途なの??」

「はぁっ?リーネに一目惚れしたからだろう?

他に何がある?」

カルトはたまーによく分からん事を言うなぁーと思う。

「他の女で発散はしたいと思わないのか?」

「なんで思うんだ?リーネがいるのに」

リーネの為に、騎士になり鍛練・実績を積んで

副団長になった。

それ以上、リーネの為に相応しい男になる事が

俺の今の夢だ。リーネを想って発散してる…と

言うと後々面倒くさくなるからこれは言わないと心に決めた。

「聞いた俺がバカだった」

「お前は恋人と発散してこいよ」

「サー……ン」

何か嫌な予感がするから俺は逃げようと思ったが、逃げれない。

「俺、俺、」

「あーー……」

察した。別れたんだな。

「次の女見つければ良い事だろ?」

「簡単に見つけれる訳ないだろ?」

「そうか?」

俺はリーネ一筋だからこの気持ちは分からんけどまぁ、辛いんだろうな。

「サーーーンっっっ」

「カルト、抱きつくなよっ!!」

ジタバタしてもカルトが離れない。

「ねぇー。サン、カル…」

ガチャッと扉が開いて俺たちの姿を見られる。

「!!」

「リサンナ、どうかした?」

「えっ?えっ?2人ってそういう関係だったの??」

「副団長ー?団…」

もう1人入ってきて俺とカルトの姿を見て固まった。

「あははっ。失礼しましたー」

「うふふっ…私も失礼しましたわ」

静かに扉を閉められた。

「最悪だっーーー!!!」

「何がだ??」

俺の上にカルトが居ただけであって。

「お前、それが最悪だって言ってんだよ」

「??」

「あっー…分からなくっていいよ。気にしなそうだもんな」

カルトの目が遠くを見ていた。後々分かったけど、俺はリーネ一筋だからそんな噂気にしなかったけどカルトはメチャ気にしていた。


「サンロシスト・トゥーカ、王城の警備を任せる」

「はい」

重要な場所での警備で、責任は重大だけども、

王城の警備と言ったら領地に戻れる。

リーネと11歳で会ったきり会ってないからかれこれ6年ぶりにリーネを見れる事に腕の中に入れられる事に嬉しくなる。

「カルト・サンマーリ、サンロシスト副団長の後に続け」

「はい」

「リサンナ・トゥイントゥル、サンロシスト副団長の後に続け」

「はい」

結局、2人は俺の軍団にそのまま入った。

切っても切れない縁とはこういう事だな。

「いよいよ、帰れるな」

「あぁ。リーネに会えるよ」

ウキウキと荷物を片付けていた。リーネに会える事。リーネの為にここまでしてきた事。

「俺〜〜嬉しいわーー!!」

ヤッホーと年甲斐なくジャンプしてしまった。

(こんな気持ちは遠足の前の日以来だな)

と、ウキウキして荷物を入れて行く。

「帰る時はリーネちゃんの誕生日だろ?」

「お前……」

問答無用で剣を抜く。

「はぁ?何で……剣を……抜くのかなぁーー??副団長……??」

カルトが真っ青な顔になって俺を見る。

「お前、リーネを狙ってるのか?」

殺気を乗せて剣を構える。

「はぁ?何でだ」

「リーネの誕生日を覚えていただろう……」

「いやっ!待て!!お前が毎年言ってるから覚えるわー!!」

「あっ。そっか」

殺気をしまって剣を鞘に戻す。

「お前がリーネを狙ってるかと思ちまったよ」

「まさか…死んでも無理だな」

「はぁ?リーネは可愛いだろっ?」

再び殺気を乗せるとカルトがまた真っ青になる。

「可愛いよ。リーネちゃんに会うんだろ?花束送るのか?」

「いいや。18歳の時は送らない。これを送る」

「あぁ。そうだな。ちゃんと受け取ってくれるといいな」

「あぁ」

これを送って俺の気持ちを伝えたい。


家に帰ってきてションからリサンナが先に帰ってると聞いて嫌な予感がしたからリーネの家に行ったら「リーネにお買い物を頼んだわ」とお母さんに言われたから急いで街中に向かう。

「リーネ!リーネ!」

周りを見渡してもリーネの姿もリサンナの姿も分からない。

「サンロシスト坊っちゃん、おめでとうございます」

「坊っちゃん。おめでとう」

みんなから祝福されるけど今はそれ所じゃないのにと思いながら「ありがとう」と伝える。

「リサンナ!!」

街中で歩いているリサンナを見つけて名を呼ぶ。

「あらっ。サンロシスト副団長」

リサンナの手に花束が握られていたから只事じゃないと思ったからリサンナの手を引き街中から抜け出し人通りの少ない路地に出る。

「なんでお前が?」

「あらっ?今日はリーネちゃんの誕生日でしょ?だからリーネちゃんにって」

わざわざ18本の花束にしていた。

「わざとかっ?」

「サン、私は昔から貴方が好きなのよ」

リサンナの気持ちは分かっていたけど答えるつもりは無い。ずっとリーネの為に頑張ってきたのだ。

「お前の気持ちに答えるつもりはない」

「それでも、好きなの。18歳の舞踏会だって私たちは王城の警備なのよ?エスコートも出来ないのよ?」

「……」

リーネが18歳の時の舞踏会は王城の警備が入っているからエスコートは出来ない。他の男と踊るリーネを見てないといけない胸の張り裂けそうな

気持ちは痛い。

「それでも、リーネが好きだから、お前には応えられない」

「サン!!」

手を掴まられていたが手を振り解く。

(こんな気持ち嫌だ。リーネは何処にいるんだ?)

リーネに会いたいと逢いたいと願って願ってリーネの為に頑張ってきた。

「!!」

急に誰かがぶつかってきて相手は転びそうになったから慌てて支えた。

「…っと。危ねぇーな…」

「……!!」

確かな温もりが俺の腕の中で広がる。求めていた温もりが今ココにある事に胸が踊る。ドクンッと心臓が嬉しく鳴る。

「変わらないな。小さいまんまか?」

「……っ」

いつも通りの軽口を叩いてやる。腕の中の女性は震えている。どうして震えている?その言葉が出てこずにその相手がゆっくりと顔を上げてお礼を伝える。

「ありがとうございます」

涙目で笑って答える愛おしい女性の名前を呼ぶ。

「リーネ」

「サンロシスト様…」

やっとリーネに会えた。逢えた。

「サンロシスト様っ!!」

無意識にリーネを抱きしめていた。

「リーネ!!リーネ!!」

「サンロシスト…様っ……」

リーネもおずおずと俺の背中に手を回してくれた。柔らかく折れてしまうんじゃないかと思う華奢な身体。そして、ヤバい…下が熱をもってきたよ…あははっ。ここは気を紛らわせよう。

「なんで敬語になってる?」

「だって…騎士副団長になって手の届かない所に…」

俺の腕の中で泣きながらリーネが伝えるから涙を拭って笑う。

「リーネ、騎士副団長になろうと俺とリーネの仲だろ?それとも…」

「??」

ニヤッと嗤ってリーネの両脇を抱える。

「ちょっ…サッ」

ヒョイッと持ち上げた。俺より目線の高さだ。

「サン、敬語は使わないからっ」

「それなら良し」

リーネをお姫様抱っこして歩く。

「……分かったから離して?下ろして?」

「…い・や・だ」

「はぁっ?この格好、恥ずかしいっっ」

リーネは顔を両手で隠したからリーネの顔を俺の肩にくっつけて「これなら恥ずかしくないし見えないだろ?」と言って湖畔まで歩く。このまま腕の中に入れておきたい。

(このまま抱きしめていたい。やっと逢えたのに)

想いが爆発しそうになっていく。

腕の中にいる愛おしい愛おしい女性が俺の腕の中でスッポリ入っていて艶やかな黒髪は長くなっていて胸も膨らんでいて唇はぷっくりして黒目はぱちくりと涙で濡れていてメチャ綺麗だった。

(これを、あの男がいたって事かっ〜〜)

思い出したら腹が立ったけどこの気持ちは隠しておかないとヤバいので隠しておく。

「ここならゆっくり話せるだろ?」

「……うん」

ベンチがありそこにリーネをそっと降ろす。

目の前に湖が広がる。

ゆっくり話せると思い隣に座り逃がさない様にすかさずに手を繋ぐとリーネはビックリして俺の名を呼ぶ。愛おしい女性から聞きたかった俺の愛称。抱きしめたくなるのをグッと我慢した。

ここでまた抱きしめたら警戒されて逃げられてしまう。

「サンッッ!!」

「んっ??」

だから知らないフリをしたまま何事もなく進める。


この目の前のリーネが嘘じゃないように。

目の前にいる愛おしい彼女が夢じゃないように。

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