3.離れていて…再会しましたよ

第3話

「またな。リーネ」

「あっー…はいはい」

サンと私の砕けた言葉使いしてるのはお母様も当主様も知っていて「気にする事はない」になった。

サン曰く、「壁作ってるから嫌だ」と私には難しい事を言うからまぁ、いっかと思った。

「淋しくなるわ。サンロシスト様」

「まぁ、早くて7.8年だと思います」

「当主様と同じ道に入るんですものね」

「はい」

早くて7.8年?何の事だろう?そしてなんで意地悪ばかりするサンと挨拶してるんだろうと思ってしまったわ。

お母様とサンの話が分からなくってつまらなく

していたらサンがお母様と会話を終わらせて私に向き合って花束を差し出した。

「リーネに」

「…要らない!!」

「今度は何もない」

「…それでも、要らない!!」

散々、意地悪してきて今度こそ騙されないと

思ってそんなに強く振り払ってないと思ったのに花束は地面に落ちて花びらが散らばってしまった場面に胸が痛くなったけど私は悪くない!!と先に思ってしまい意地を張った。

「リーネ!!」

「………!!」

母親に名前を呼ばれて怒鳴られたけど今度こそ

意地悪はされたくなかった気持ちが大きくて謝らずに走って家の中に入った。

「申し訳ありません。サンロシスト様」

「俺の日頃の行いですよ。大丈夫です…」

リーネの母親はサンロシストより先に地面に叩きつかれた花束を優しく拾った。

「リーネに渡しておきます」

「いいえ。これは俺が持って帰ります」

サンロシストは、慌ててそう言ったけどリーネの母親は首を振った。

「…サンロシスト様、リーネがサンロシスト様から直に花束を貰わなかった事を後悔するような立派な騎士になられて下さい」

「そうですね。リーネが後悔する様な騎士になって帰って来ます」

サンロシストもリーネの母親も笑った。

自分だけは笑顔で送ろうと決めていた。

きっとリーネが失礼な事をすると感じでいたけどそれが当たってしまった。

サンロシストはリーネの母親に一礼をして自分の家に帰って行った。

「サンロシスト様…本当に申し訳ありません」

リーネの母親はサンロシストの背中を見て頭を下げてそう言った。本当は意地悪だろうとリーネがサンロシストから直に貰って欲しかったのをリーネの母親は知っていた。

前の日に、サンロシストがリーネに内緒でリーネの母親に「リーネの好きな花はなにか?」と聞いていから察してリーネの好きな花を教えた。

そして、今日それを持ってきて出立の挨拶に来てくれたのだった。

「リーネ!!」

「なによっ!!お母様!!私は謝らないわ」

サンと挨拶が終わったのだろう母親が花びらが欠けている花束を持って部屋に入ってきた。

「……リーネ」

「………」

母親は怒らずに私の側に行き座り花束を私に見せた。

「これが何か分かる?」

「なんの変哲もない花束でしょ?それがどうしたのよ」

「リーネ…。サンロシスト様は意地悪だったかもしれないけどちゃんと出立の挨拶くらいするわ」

「えっ?」

お母様は今なんて言った?出立?誰が?

母親の持っていた花束をもう一度見て気がついた。

リーネの年齢11本花が入っていて自分の好きな花だった事。

今日が自分の11歳の誕生日だった事。

「お母様…」

「そうよ。サンロシスト様は騎士の道に入る為

領地を離れる。その前に挨拶にきてくれたのよ?」

「嘘っっ…!どうして言ってくれなかったの?」

「リーネ…貴女は人を責める前に何を

サンロシスト様にしたの?」

「……!!」

母親に言われてリーネは、サンロシストが渡してくれた花束を…今母親から渡してもらった花束に目線を落とす。

「私、最低な事をしてしまった…お母様…」

「後悔するといいわね。サンロシスト様はリーネが可愛くって仕方なかったと思うから意地悪していたと思うわよ…」

「お母……様……」

リーネはサンロシストから直接、素直に貰えなかった花束を抱きしめた。花びらが1枚1枚ヒラヒラと落ちてくる。

「サン…ごめんなさい…」

もう謝ってもサンロシストには届かなかった。


「はぁぁぁぉーーー」

「何回、ため息ついてんだよ。サン」

騎士の為だけに作られた3両編成の特別な電車に

揺られていた。

「ため息つきたくなるわ……」

「あっ……察した。ご愁傷様」

親友でこれから一緒に学ぶカルトに「ドンマイ」な目をされてイラッとした。

「お前の日頃の行いだろ?」

「それを言われると…」

図星を突かれて口が閉じる。

リーネに今日“離れる”とは言ってなかったから

自業自得かも知れないけど言いたくなかった。

「騎士になって実績上げて迎えに行くしかないな」

「まぁな」

カルトが“ごめん”みたいな顔をしたから不思議に思ったけど見解が違った。

「…俺それ以上だと…」

「迎えに行くだけじゃねーよ!!リーネを俺の妻にするんだよ。父さんにはもう言ってある」

「根回しいいな……そこまでもう言ってるんだな……」

カルトの遠い目に気づかない俺は恋の熱に浮かれていた。

領地に戻り次第リーネに告白して結婚すると決めていたから父にも言っておいた。

「25歳になったら…お相手はいくつなんだ?」

「リーネか?18歳だな」

スラスラと年齢が出てくる時点で引いている

カルト。

「なーんの話を、してるのー?」

「リサンナ」

もう1人、サンの剣術仲間で街中であったリサンナが入って来た。リサンナの問いかけにカルトが

答える。

「コイツの恋バナ」

「えっ?恋バナ??」

「あぁっ…。砂糖が吐きそうほど甘すぎで気持ち悪い」

「お前、聞いといてそれはないだろ?」

「マジだろ?」

男2人がギャアギャアとしていた時にリサンナが

固まっていたのを気付かなかった。

「恋バナ?サンが??」

ぷっーと笑われてしまったけど何処にそんな笑いがある?と不思議に思った。

まぁ、リサンナを他の女避けにしていただけだから俺が本気の恋なんて有り得んって思ってるな。

「サンに本気の恋が、あり得ーーない」

当たったよ。

「はぁっ?」

「そうだよなー。俺もそう思う」

カルトとリサンナはうんうんと頷く。

「待て、お前ら。俺は本当にリーネを妻にするんだぞ」

「……っ。サンったら。リーネってあの街中で

会った小さい女の子の事?」

リサンナが引き攣って笑いながらサンとカルトの対面の所に席が空いていたから座る。

「ああっ」

「でも、コイツ振られたんだよー。笑えるだろ?」

カルトが笑いながら俺に肩を組みながらリサンナに笑って言う。

「そんな意地悪ばかりしか聞かないもん。それは振られるよね……」

「………」

リサンナが言った言葉に体が重くなる。

「リサンナ!!それは禁句だよ」

「………」

俺は立ち上がって「空気吸ってくるわ」と2人に

言って席を立つ。


電車の中は騎士ので貸し切りだったので通常の

椅子に座りながらポッケの中から紙を取り出した。

「リーネ…」

あの時の激辛クッキーの中に入っていた手紙だった。

『サンへ。

 ケーキ嬉しかった。ありがとう。紅茶も美味しかったよ。今度はちゃんとしたクッキー持ってくる』

と書かれた手紙を広げて読んでいた。

「クッキーは会えた時に貰えるかな…」

クッキーも手紙も結局もらってなく淋しい気持ちになる。

「リーネ…俺は騎士になるよ。お前の為に。

そしてお前を迎えに行くよ」

手紙を綺麗にまた畳んで大事に胸ポッケの中に入れた。

「サン」

「リサンナ。何か用か?」

サンは、リサンナが来て少し嫌な顔をしたけど

リサンナは気にせずに隣に座った。

「サン、大丈夫よ」

「?」

リサンナは胸をポンッと叩いて意気揚々いきようように言った。

「見返してやればいいじゃない?」

「リーネのお母さんにも言われたから見返すつもりではいるよ」

「!!」

リサンナはドキッとしてしまった。

もう、そこまでそんな話が出ているとは思わなかったから慌てて別の話をしようとして逡巡しゅんじゅんしていたらサンがペンダントを出してきた。

「……サンのお母様のね…」

「ああっ…。母の形見」

綺麗なブルーのペンダント。サンのお母さんは

ブルーの瞳の綺麗な人だった。

「妻になる人に渡すんだっけ?」

「お前、よく覚えてるな。感心する通り越して

怖いわ」

「女性に向かってなんて事言うのー??」

「あははは」

こんなじゃれ感がリサンナはすごく好きだった。

「見て。サンロシスト君とリサンナ仲良いよねー」

「本当に」

こうやって他の女子の牽制になるからだった。

サンは気にしてなかった。母親の形見を大事に

胸ポッケに入れた。そこにはリーネから貰った

手紙も入っていた。

「………」

ペンダントを見てサンの口から違う女性の名前が出るのは今は目に見えているから

「妻にするのは誰?」と聞きたかったけどもう

今は答えは分かっているから今は我慢した。

離れてる間にきっと忘れる…そう思いたかったから。


「………」

一年長いなー…。と思いながら窓辺で空を眺めていた。考えるのはサンの事だった。

「もお、なんでサンの事なんか……」

考えていた事に焦り顔が真っ赤になるのをパタパタと手で仰いでいると外から母親に呼ばれた。

「リーネ」

「はい?お母様」

窓辺から離れて母親の元に玄関に向かった。

「はい。リーネ」

「これは?」

「おめでとう。13歳」

「ありがとうございます。お母様」

渡されたのは花束だった。今日はリーネ13歳の

誕生日だった。

「リーネ、もう一つ報告よ」

「?」

リーネの母親は嬉しそうにリーネに言う。

「サンロシスト様が騎士団に入ったわ」

「そう。サンが…騎士団に……」

「あらっ?嬉しくないの?」

「嬉しいわよ。領主様のご子息が騎士団に入るなんて並大抵じゃないと思うもの」

花束を見てそう言った。

「……」

その中に入っていたブランド色の花を見つけて

笑ってしまった。

「リーネ?」

「お母様、この花束はサンからよね?」

「えっ?なんで?」

「なんとなくよ」

母親に言ったら母親は「お手上げよ」と顔をした。

「まさか…去年も?」

「そうよ。サンロシスト様から貴女の誕生日にいつも花束が届いてるわよ」

お母様からもらった花束だと思っていたけど

違ってサンから貰った花束だったと

知ってビックリした。

「リーネ、何かお礼の手紙は書いたの?」

「……書いてないわ」

書く紙も届けてもらうのもお金がかかる。

ウチにそんなお金はない。

「スゥーカ様がいつでも届けて下さるって言ってるから甘えれば良いと思うのだけど」

「そんな甘えられないわ。サンに騎士に励んでもらわないと」

そう言って部屋に戻って行く。

「……サン」

花束を見つめてブランドの花をツンツンと突っついた。

「去年もくれたね…一昨年も…」

壁にドライフラワーになってしまった去年もらった花束を見つめた。

「サン…私の好きな花ばかり…」

花束を、顔に近づけてそっと口づけをする。

「サン…好きです。11歳の時は本当にごめんなさい。言葉ではまだまだ伝えられないけど私は貴方と会った時から」

この気持ちを自覚してしまったからもう止められない。

「でも……男爵と伯爵。騎士と一介の市民だと…」

身分の差がありすぎて凹みそうになった。

身分に相応しい所と結婚するのが当たり前の時代。

「サンが結婚したら私は修道院に入ろう。でも、ちゃんと確かめてから」

花束をギュッと抱きしめた。

「私が13歳だとすると、サンは20歳かしら?」

数えたら13本で笑って花束を見た。

母親に言われて毎年の自分の誕生日が楽しみになっていった。


それから怒涛どとうに月日は過ぎていき私も学校に入る様になり友人も増えていった。

「リーネ」

「あらっ。ヨーク。学科は一緒なのね?」

「ああっ」

ヨーク・テントリオ(男)で学友だ。サンが

ブランドの髪の毛ならヨークはシルバーの

髪の毛。

「お姉ちゃん」

「あらっ。ション」

スゥーカ様(当主様)は、1人でサンを育てていたけど20歳になる前に再婚してサンに弟が出来た。

ション・スゥーカ(男)でサンによく似ている

ブランドの髪の毛。サンを小さくした感じで

意地悪な事されなく慕われている。

「お兄様が昨日帰ってきてお姉ちゃんの事聞いていたよ?」

「まぁ、サンが?」

昨日帰って来たなんて知らなかった。

一目でも空いたかったけど家族団欒を邪魔したらいけない。

「そしてこれ、お兄様から手紙」

「ありがとう。後で見るわ。ション、授業があるでしょ?大丈夫かしら?」

今だに後ろから私に抱きついたまま手紙を渡したションに伝えるとションは

「ヤバい。では、またお姉ちゃん」

と慌てて離れて戻った。

「サンロシスト様の弟君だろ?」

「うん。とても可愛いわ」

サンから貰った手紙を大事にカバンに入れて

ヨークと教室に向かった。

「お兄様と一緒に来た女の事は言ってないからね。お兄様」

ションが足を止めて私の背中を見ながらそう言ったのを聞こえなかった。

「お姉ちゃんの側にいる男はちゃんと見守るから!お兄様!!お姉ちゃんが俺のお姉ちゃんになるんだもん」

兄弟ふたりで…サンとションで結託けったくしてリーネを護っていたなんて知らなかった。


「毎年毎年…本当に……とう」

今日は14歳の誕生日だから14本の花。

これまた好きな花ばかりそして、いつまでも素直に喜べないのもあった。

「トゥリーネ、おめで……」

「あらっ。ヨーク」

玄関で花束を受け取っていたらヨークが来て

リーネの腕の中にある花束を見てガックリ肩を

落とした。

「また先越された…」

私にはヨークがなぜ落ち込むのか分からなかった。

「リーネ、おめでとうー」

「ありがとう」

「あらっ?またかしら〜」

「うん。毎年飽きないよね」

苦笑いして友人に言ったら友人はニヤニヤ。

「苦笑いして〜嬉しいくせに〜」

すごく嬉しいけど素直になれない。

「今回はなんて書いてあるの?」

「いつもの事よ」

「??」

花束と一緒にカードも届く。

「あははっ。これ見るとサンロシスト様の目線

変わるわー」

「でしょー」

カードには毎年恒例の“チビーチビー。重っ。”の変わり映えのない言葉。

「21歳になったのだからもう少し大人らしい言葉を送ってほしいわ」

「あはは。サンロシスト様の照れ隠しかもねー」

友人と話してる時にヨークはずっと遠い目をしていた。

「ヨーク?」

「あはは。ヨーク、壁は高いわねー」

「うるせぇ。ほっとけ」

「お姉ちゃん!!」

「あらっ。ション」

「おめでとうー」

ションは誕生日になるといつも来てくれて頬に

可愛くチュッとしてくれる。

「あらっ?牽制かしら?」

「……?」

友人がずっとニマニマしてヨークはガッカリしていた。

15歳の誕生日も同じ事の繰り返しだった。

私が15歳になったら15本の花。サンは21歳。

毎年ガッカリしているヨーク。

ニマニマしている友人。

いつもと同じ文面のカード。

頬にチュッてしてくる可愛いション。

「………」

部屋にはドライフラワーの花束が増えて来た。

「いつになったら会えるの?サン…」

いつもと変わらない誕生日に必ず年齢と同じの

花束と変わらないカード。

「いつも誕生日にありがとう。サン」

人前じゃないとちゃんとお礼の言葉が言える。

「来年は、16歳だから2回目の手紙を書こう。

うん。そうしよう!!」

誰も見てないのは分かっているのだけども照れて真っ赤になった花で顔を隠した。

「サン、会いたいと言ったら会ってくれる?」

花束に聞いてみたくなってしまった。

「んっ??」

カードもいつもと同じだと思ったけど、消した痕があった。

「これは……何て書いてあるんだろう?」

サンがちゃんと消さずに送ってしまったのをサンは知らない。

“リーネに会って話したい事が沢山ある”

そう書いてあったのを、リーネはサンの口から聞くまで知らなかった。


「今日は来てないよ。リーネ」

「そう。ありがとう」

今日は私の16歳の誕生日。

サンは23歳になったんだろうか…。

「リーネ…お買い物お願いして良いかしら?」

玄関でサンからの花束を待っていたけど呆然と

立ち尽くしていたら母親から声をかけられた。

「はい。お母様。行きますわ」

「お願いね。来たら即、知らせるわ」

「大丈夫よ」

母親から籠とお金を貰って街中に買い物に出かけた。

「………」

歩いていてもサンの事ばかり考えている。

花束を貰わなかっただけでこんなに寂しい気持ちになるの?と思っていた。

「バカね…私…」

涙が出そうになったけど街中だから涙を出す訳には行かない。

「坊っちゃんが一昨日帰って来てリサンナと結婚だって?」

「えっ?」

歩いていたらそんな会話が聞こえた。

「リサンナと坊っちゃん仲良く歩いていたもんな。指輪を見ていたしな」

「……!!」

嘘だと信じたかった。

「それに、副騎士団長にもなられてトゥーカ様、鼻が高いだろうに」

街中でサンが結婚、副団長になられた事を…

嬉しい事と悲しい事のいっぺんに聞くなんて!

「……ネ。リーネ」

「はい。ごめんなさい」

いつもの店の中に居ておばさんに声をかけられていた。

「心ここにあらずね」

「あっ…何でもあり…」

ポロッと涙が出てしまった。

「サン坊っちゃんの事は坊っちゃんにちゃんと

聞きなさい」

「……はいっ…」

街中の大人たちの会話に涙が出てきてしまった。本当は信じたくないのに自分の誕生日に限ってそんな事を聞くなんて思いもよらなかったから

心が溢れてしまった。

「今は辛いかもしれないけどサン坊っちゃんを

信じてあげなさい」

「はい……」

涙を拭って無理矢理笑顔を作った。家に帰って

声を殺して大泣きしたのはお母様にもサンにも

内緒。次の日にみんな祝ってくれたけどサンの

お花だけないのが寂しくって悲しくってやはり

泣きそうになったけど涙は止めた。

「はいはい。泣きな」

「……」

友人にはモロバレで隠れて友人の胸を借りて泣いた。

「やはりアンタはサンロシスト様が好きね」

「うん。好き。好きなの…。離れても思い出さないなんて事ないのに…」

「そうね。意地っ張りなリーネだもんね」

「そうね…。意地っ張りな私ね…」

泣きながら友人と笑った。

心が軽くなった気がした。

「ション君に聞いたの?あの噂」

「ううん、聞かない。サンを信じてるって言えば信じてくれる?」

「うーん…どっちもどっち。」

「フィーネル…」

フィーネル・サルカタナ(女)は金髪で私の親友。

「友人歴は短いけどリーネは素直じゃないのは知ってる」

「もぉっ」

フィーネルが居てくれて本当に良かった。

「さぁ。行こう」

「うん」

笑って涙を拭いて立ち上がったら目の前にションが居た。

「お姉ちゃんー」

「ション!!」

ションが、今度は泣いていたから抱き止めた。

「お兄様の婚約者でもなんでも無いです!!あの女性はお兄様と同じ部隊に所属していて、お兄様がお姉ちゃんに会いたいのに邪魔ばかりするんです。」

「ション……」

ションが泣きながらそう言っていたから撫でる。

「私は大丈夫よ。サンに女性が居たって平気よ」

笑ってションに答える。

本当は胸が締め付けられるけど、ションの言葉に「会いたいのに」って言って思ってくれてたのが嬉しかった。

「ション、遅れるわ」

「ううん。本当にお兄様は…」

「サンロシスト様の弟君のション様。遅刻しますよ?」

「ヨーク…」

ヨークが低い声でションに伝える。

「ション、大丈夫だから」

「うん。お姉ちゃん、大好き」

「私もよ」

ギュッと抱きしめあってションは駆け出した。

「サンロシスト様の事は本当だと思うけどな」

「ヨーク!?」

ヨークがそう言って吐き出したから反応したのはフィーネルだった。

「同じ身分の女性を連れて帰って来たら誰だってそう思うだろ?」

「そうね…」

「だったら、俺と…」

ヨークがどうしてそういう事を言うかは分からない訳じゃない。

「私は、サンの口から本当の事を聞くまで信じない事にしてる。ごめんね。ヨーク」

「……っ」

悔しい顔をして先に行ってしまった。

「リーネ」

「サンが好き。これだけは譲れない。最低な女?」

「んな訳ないじゃん。よく言ったよ」

フィーネルに抱きしめられて抱きしめた。

このぬくもりがサンだったら良かったのにと思いながらまた涙が流れた。


悪い事は続くと言ったもので、続きます。

何の試練を与えられているのでしょうか?

「……」

「……」

16歳の誕生日の時は花束は来なかったから信じようと思った。

17歳になって「リーネ」とお母様に呼ばれたら

いつもの変わりのない様に17本が全部が好きな

花束。言葉は、変わっていて

『16歳の時はごめん。ちゃんと謝りたい』と

謝罪の言葉だった。

18歳になって誕生日の日にまた来なくってサンを信じていたけども、もう信じる要素がなくなったと思った。

「こんにちは。トゥリーネ・ロータさん」

「こんにちは」

昔、サンと街中で喋っていた女性だと勘が働く。

「私は、リサンナ・トゥイントゥルよ」

「なんの御用でしょうか?」

「綺麗に成長したのね。舞踏会はこれから?」

「はい。一応男爵の娘ですので」

18歳になったら成人としての儀式の為に舞踏会に行かないといけない。男爵の娘なので行かないといけなくそこで婚活を始める。

「そう。その日私たちは警備につくのよ」

「私たち?」

「そうよ。私たち部隊は舞踏会の警備なの」

ションが言っていたのを思い出した。

この女性とサンは同じ部隊に居る事に心が凍りつく。

「それを言う為に待ち伏せでない訳ですよね?」

「ふふっ。単刀直入に言うわ」

「はい」

もう、言われるのは分かってるから逃げたかった。逃げてもいいと思ってるのに足が縫い付けられているみたいで動かない。

「サンの事が私は好きなの。身分も伯爵同士釣り合ってるのに!!」

「……っ」

リサンナさんは、きっとあの時より前からサンが好きだったのかも知れない。

「好きと告白したら…どうですか?」

憎い恋敵に何て事を言っているんだろうか?

私は。でも、これしか言葉が出てこなかった。

「これはなにかしら?」

「!!」

リサンナさんの手にあったのは18本の花束。私の好きな花を詰め放題だった。

「どうして、リサンナさんがそれを?!」

信じられなかった。リサンナさんが持っている事が。リサンナは私の質問に答えずに私の心にヒビを入れる。

「16歳の時に贈らなかったでしょ?その日、サンと一夜を共にしたの」

「!!」

体が震える。ジリジリと足が動いて後ろに下がる。

「もう、サンは私の旦那になるのよ?」

「……嘘っ」

涙でリサンナさんが滲む。

「嫌っっ」

その場から逃げ出してしまった。

「嘘っ!!嘘っ!!」

16歳の時に心を傷つけられてそれでも信じて

そして18歳でさらに心を抉られてなにを信じて

良いかもう分からない。

「あっ」

誰かにぶつかって転びそうになった。また痛い目を見ると思った。サンが居ない時に何回も転んであの腕のぬくもりが欲しいと思った。

「…っと。危ねぇーな…」

「……!!」

痛い感触が伝わらずに誰かの腕の中にいる。

この温もりを求めていた。

「変わらないな。小さいまんまか?」

「……っ」

頭上から低くなった声が聞こえる。

涙が出てきてしまった。

早く離れないといけないのにこの温もりが欲しくて欲しくて離れたくないけどこの腕はもうリサンナさんの。

「ありがとうございます」

腕の中で涙を急いで拭いてお礼を言った。

「リーネ」

「サンロシスト様…」

こんな再会望んでいなかったのに本当に悪い事は続くものよ

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