第20話
おまけ(side 悠)
意識を手放して横たわる響の一糸まとわぬ姿を、悠はスマートフォンで何度も撮り続けていた。
シャッター音が寝室に広がるが、寝付きが良すぎる響は簡単に起きないので特に気にしていない。
「響の白い肌に赤い痕が映えるな」
悠は体を重ねた後、深い眠りに就く響の裸体を人知れず盗み撮りしていた。その類の画像は三桁に入るほど膨大だ。
悠としてはリベンジポルノに利用する気は毛頭ない。ネットにばら撒き、数多の害虫が響の肌を目にするなど狂気の沙汰だ。
響の様々な姿を収めて、自分だけが独占していつでも見られるようにしておきたいだけだ。
どれだけ貫き、己の色に染めても、変わらず一点の曇りすらなく清らかな体がそこにあった。
「響は本当に無垢だ……俺の言うこと疑わずに信じてさ」
友人がいない響は、悠の言ったことを疑うことなく聞き入れる。
響にした行為が世間一般のカップルが皆行われているだの、回数を重ねれば感度は落ち着くだの。
響ほど無垢ではない者なら、すぐにバレる真っ赤な嘘だ。
気の済むまで撮り終え、スマートフォンをヘッドボードの引き出しの中に入れる。
悠は今度は網膜に焼き付けるように、響を凝視していた。
今回は響に無茶させてしまったと、悠は内心反省していた。
離れたところから響が自分の誕生日プレゼントを探しに行く様子を見つめていたが、川端とメッセージのやり取りをしたり、男の店員に愛らしい微笑を見せていた響に、苛烈なまでに嫉妬心を滾らせていた。
それ故、響が懇願するまで焦らしに焦らしてしまった。
響から欲しいと懇願を受けた刹那、悠の脆い理性は呆気なくを霧散した。
あまりの快楽に艶が孕む嗚咽を零し、許しを乞う響を執拗に突き入れ、掻き回した。響の可愛さは天井知らずであまりにも罪深い。
この夜、いつも以上に響を求めてしまった。
(可愛い響、俺だけの響、誰にも渡さないよ)
悠はそっと響の下腹部に己の手のひらを置く。
今ではすっかり己の形に馴染んだ響の中。
全てを掌握しても……したからこそ、掌中の珠のごとく害虫から守っていかねばならない。指一本も触れることは赦さない。
万が一、響を手篭めにする害虫が現れば、悠は惨殺など厭わぬ悪鬼に成り果てることだろう。
(何はともあれ、今年も最高の誕生日だった)
親による弟との扱いの差を見せつけられて、惨めな感情に支配される日は、響が祝ってくれるようになってからは待ち遠しいものと変わった。
ずっと響を見つめている内に、悠は眠気に襲われた。
響を抱き寄せて、瞼を閉ざす。
すると、響は夢の中にいながらも悠に擦り寄ってきた。
重なる体温は、欲情より充足感で満たされていった。
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