第19話

「もしかして、一人で探しに行ったの?」

「そうだよ」


 正直に頷くと、悠は響を引き寄せてきつく抱き締めてきた。


「変な奴に声掛けられたり絡まれたりしてない?」

「大丈夫だったよ」

「良かった……来年は俺もついて行くよ」

「それだと、サプライズの意味がないよ」

「響が何事もなく笑ってくれたら、それで充分だよ」

「悠くんは心配性だね」


 真剣な物言いの悠に、だんだんおかしくなって、響はくすくすと笑っていた。

 ひとしきり笑った後、響は目を細めて破顔した。


「悠くん、お誕生日おめでとう。来年も、再来年もお祝いさせてね?」


 その時、前触れもなく唇が重なり合った。触れるだけだったが、この日最初のキスに響の胸は甘く締め付けられた。


「響を食べたい」


 そっと耳打ちされた発言に、響の胸の鼓動が暴れ始める。


「……いいよ。私を食べて」


 背中に腕を回し、ぎゅっと力を込めて抱き締め返すと、響の視界が天井に切り替わった。

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