第4話
「そんなに落ち込むなって。休み時間お前んとこ行くし」
修也はぽんと真綾の頭を撫でては宥めた。
「ありがとう。あたしも迷惑じゃなかったら修也くんに会いにいってもいい?」
「おう、いつでも大歓迎」
にかっと白い歯を見せて笑う修也を見て、真綾も釣られるように破顔した。
クラスを確認した後、一緒に二年のフロアがある三階へ向かおうとした時、突然修也は話を切り出した。
「そう言えば真綾のクラスの担任、新しく赴任する先生らしいぞ」
「そうなの?」
「担任の名前も載っててさ。ええと確か……笹山、なんとか」
修也はそのなんとかを指で空中に“尚”の字を書いて見せた。
“笹山尚”
真綾は粗方教師の名前と顔を一致させているので思い起こして見たが、その中に該当する教師は見当たらなかった。
「元々いる先生じゃないみたいだね。赴任早々クラスを受け持つなんて大丈夫かな……」
「鈍臭い教師じゃねえといいな」
「そう祈るしかないよ」
真綾は乾いた笑いを零した。
「じゃあな」
「またね」
修也はB組の前まで着いて行ってくれた。
真綾は手を振りながらA組へ向かう修也の背中を見つめていた。
(修也くん、優しい……もしかしたクラスが別れたのは、修也くんに甘え過ぎだって神様が教えてくれたのかもしれない……)
両親を亡くして、去年の今頃全く笑えていなかった。
しかし、修也はそんな面倒くさい自分の傍にいて根気よく支えてくれた。
修也がいなければまだ殻にこもったままだと思う。
(これからはあんまり頼らないように頑張ろう……自立して修也くんを安心させよう)
真綾は右の拳を握り締めて小さくガッツポーズを取って、自分自身に誓いを立てたのだった。
まずは新しい友達を作ろう。
心の中で決意をすると、緊張した面持ちで教室に足を踏み入れた。
(うーん、あんまり喋ったことのない子ばっかりだ)
きょろきょろを辺りを見渡して知っている子を探してみるが、面識のない者ばかり。
しかし、ふと、前方に目を向けると、窓際から三列目の最前列に知っている顔を見つけた。
真綾よりも小柄で、ふんわりした栗色のボブの女の子。
(やった!)
真綾はいそいそとその場所へ向かい、彼女の肩をぽんと叩いた。
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