第3話

「おはよう、修也くん」


「真綾、はよ」



短髪の黒髪が似合う凛々しい顔が、くしゃくしゃに破顔した。

その笑顔に真綾の鼓動は暴れ出す。



彼は朝倉あさくら修也しゅうや

同じ高校の同級生であり、小学校から仲のいい男友達だった。



一人暮らしをすることになり、アパートが決まったのだが、修也の自宅の近くだと判明した。

それ以来修也は、一緒に登校したり、母親が作ったおかずを届けたりと何かと甲斐甲斐しく気にかけてくれる。



そんな修也に、友達以上の感情を抱くのに時間はかからなかった。



「行くか」


「うんっ」



二人は肩を並べて学校までの道のりを歩き始めた。



「部活どう?」


「新入生の一人がもう部活に参加してんだけど、すげえ上手いの。なんでもそいつの親父が外国人で元NBAの選手だってさ」


「NBA! すごい……」



バスケットボール部の修也は、高校をスポーツ推薦で入った口だ。

勉強が不得意な修也だが、バスケットボールに関する知識は豊富で、よく真綾にレクチャーしてくれた。



真綾は楽しそうに話す修也がとても好きだった。



学校に近付くにつれて、真綾の顔に緊張の色が濃くなっていく。

なぜなら、今日は新学期でクラス発表があるからだ。

一年の頃は修也と同じクラスだったが、今年はどうなるだろうか。



「修也くん、今年も同じクラスになれるかな」


「さぁ、どうだろうな。まあ、別になっても遊びに行くから心配すんなって」


「わわっ」



修也は大きな手で真綾の髪をわしゃわしゃと撫で回した。



「もうっ、ぐしゃぐしゃになったじゃんか」



真綾はぷくっと拗ねるように頬を膨らませるが、内心は構ってくれることに喜びを感じていた。



「ははっ、悪いって」



修也は笑いながら真綾の乱れた髪を直してくれた。






学校に辿り着き、レンガが敷かれたレトロな道を歩いていくと、掲示板の前に群がる人だかりを見つける。

おそらく、クラス表が貼られているのだろう。



真綾と修也もその人だかりに近付き、クラスを見ようとするが、女子の平均よりやや低めの真綾は背伸びしてもよく見えなかった。



「修也くん、見えた?」


「ああ、残念だけど、オレはA、お前はBだった」



(そんなぁ……)



隣で離れていないだけマシと言い聞かせて見るが、別になってしまったことにショックを隠すことが出来ず、真綾は項垂れた。

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