第46話
「おい!優也!これじゃ使えない!もっとデカいの持ってこい!」
「はい!」
「遅い!たかが機材ひとつ運ぶのに何分かかってるんだ!」
「はい、すみません!」
カメラマンの人の怒鳴り声と優也の真剣な声が交互に聞こえる
多分、このギャラリーの中で優也を見ている人間は私達の他にはいないと思う
皆、温かいベンチコートを着て、ストーブの前で座っている、今日撮影するイケメンモデル目的だろう
でも、私にはモデルの人よりも、真剣な目をして、真冬なのにも関わらず、汗だくになって走り回っている優也の方が何倍もかっこよく見えた―――…
でも、それは私だけではなかったようだ
現に、さっきまでキャピキャピと騒いでいた由香達も、息を飲んで優也を見ている
「…優也くん……、こないだと全然違うね……。……ますます好きになりそう……」
不意に私の横で由香がそう呟いた
―――まさにその通りだ
私は優也の事を何も分かってなかった―――
夢を持たない適当な人だと思い込み
夢の話を聞いても、こうやって見るまで、いまいち信じきれてなかった
いつも、あんな感じだし、夢を持ってるって言ったって、その夢に対しても適当なんじゃないかって
でも違った
全然、違った
優也の夢は適当なんかじゃない
私のヘアメイクアーティストになりたいって夢と同じくらい強い夢だ
誰にも負けないくらい、強い夢だ
そして、優也はその夢を叶えようと、誰よりも努力をしている
私はこの時、初めて優也の事を尊敬の目で見るようになった
そして、それと同時に、優也の事をもっと知りたい。
そう強く思った―――…
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