第81話
わたしが思わず言うと、黄薔薇は大人びた、優しい笑みを浮かべた。
「与えられたものでも、愛は愛です。白薔薇と出会い、彼が育ては育つほどわたしは愛しました。彼は素敵な薔薇です」
でも、と続けようとしたが、そうしなかった。黄薔薇の微笑みがそうさせなかった。彼女は自信に満ちた表情をしていて、わたしの言葉がそれを揺るがすのは難しいであろう気がした。
わたしは黄薔薇に次々と物語を読んだ。長い児童文学も読んだ。「あしながおじさん」や「秘密の花園」などを。黄薔薇は喜んだ。わたしは彼女の喉が、次第に膨らんでいることに気づかないふりをしながら、日々を彼女と過ごした。
*
雨だ。梅雨の季節は湿気と驟雨に始まり、それらは次第に強くなり、雨は豪雨となる。屋根を持たず、森で暮らしている黄薔薇たちはどうしているのだろうと、わたしは思った。
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