第74話
初めて聞く、白薔薇の感情的な声だった。わたしは胸をえぐられる思いでいる。黄薔薇は白薔薇の背中に腕を回し、声を上げて笑う。
「どうして? わたしたちは子孫を残せるのよ」
「君がわたしの仲間のようになるのが辛いんだ。喉が腫れ、顔がなくなる。君が醜くなってわたしよりも早く死んでしまうなんて嫌だ」
「わたしは子孫がほしいわ」
「子孫のために早死にしたいのか?」
「薔薇とはそういうものだわ。受粉して、子孫を残し、次の世代の体の中に生きていく。それが薔薇ではないの?」
「わたしたちは薔薇ではない。ヒト薔薇だ」
こちらが息を飲む勢いで白薔薇が叫んだ。わたしは泣きそうになりながら静雄の顔を見た。何かを決意した顔だ。
「ヒトと同じように感情を持ち、自由に動くことのできるヒト薔薇だ」
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