第71話
白薔薇は何でも聞く。黄薔薇がつまらないと言ってやめさせる話も、その間際まで少し微笑んで聞いてくれる。本当は楽しくないのかもしれない。白薔薇は感情をあらわにしないから、それがわからないだけかもしれない。多分黄薔薇が楽しいのなら何でもいいのだろう。
「いばら姫」の物語の豪華さに、黄薔薇は心惹かれたようだった。出だしの無邪気な微笑みは、終わりのころにはうっとりとした表情に変わっていた。王子がいばら姫に会いに来ると、いばらは次々に道を開き、導く。王子がいばら姫に口づけをすると、城全体が目覚める。いばら姫と王子は、末永く幸せに暮らす。
「美しい話ですね」
黄薔薇がわたしに笑いかける。「白雪姫」のときも、「灰かぶり姫」のときも、「千びき皮」のときも、「親指姫」のときも、「ナイチンゲール」のときもそう言っていた。「青い鳥」などはこれらの童話に比べて時間がかかるのだが、読み終わると長い時間考え込み、最後にはやはり「美しい話ですね」と微笑んだ。ペローは残酷だから気に入らないようだった。グリムもものによってはまあまあ気に入った。アンデルセンは手放しに喜んだ。しかし一番好きなのは、ワイルドの童話のようだった。耽美なワイルドの童話は、黄薔薇の趣味にあうようだった。黄薔薇は度々言った。
「ワイルドの『ナイチンゲールと薔薇の花』はとても素敵です。心を鷲掴みにされます」
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