第69話

スラブ民族向けチャンネルの少女がどうしているのか、わたしは考えなかった。「ロミオとジュリエット」も読まなかった。わたしは静雄と会い、散っていく薔薇たちを眺め、黄薔薇たちに物語を読み聞かせしていた。


 静雄はあれ以降わたしに対して特別なことを何もしない。髪に触れることもないし、あのピンクの薔薇について何か言ったりもしない。ピンクの薔薇は少しずつ散っていく。次の季節に備えて、眠る準備を始めている。わたしはあれ以来この薔薇が愛おしい。わたし自身であるかのように思える。散っていく薔薇を、惜しいと思う。


 静雄は何か考え込んでいる様子で、ぼんやりすることが増えた。何を考えているのか、わたしは訊かない。お互いの異変を言葉で伝え合うのは、互いに苦手だ。いつか行動に起こすなり話すなりしてくれると思う。


 薔薇園は次第に彩を失っていく。静雄は新しい種を得るために、薔薇を受粉させる。彼は薔薇にオリジナリティーを求めない。丈夫であり、親の美しさを継承していれば充分だと考えている。そのせいか、彼は脆い青薔薇を育てようとはしない。

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