第62話
「受け入れるんだ。受け入れれば、辛さは減る。それに、恵理もゆかりもお前を愛していたよ。それだけは変わらない事実だ。大丈夫だ。大丈夫」
落ち込んでいるはずの父は、わたしを励ますのに精一杯の優しさをわたしに見せてくれた。わたしと父のわだかまりは。これで解けた。わたしは、生母を失ったわたしを励ますために明るく振舞う父を憎んだことを恥じた。父が義母を盲目的に愛していると思い込んでいたことを恥じた。わたしが子供であることを恥じた。わたしは受け入れて大人になることに決めた。
次の日の朝、わたしは義母が用意したワンピースを着た。長いまま放っておいた髪も、頭の上のほうでまとめてお団子にした。わたしは義母の言葉を思い出し、義母の言葉に素直に従うことにした。
*
わたしが池に向かうと、黄薔薇と白薔薇は戸惑ったようにお互いを見た。わたしはこの間の苛立ちを思い出したが、態度には出さずに二人に近づいた。黄薔薇は珍しく笑顔がなく、白薔薇は陰鬱な顔をしている。どうしたの、と訊く。二人はもう一度顔を見合わせると、白薔薇がこう言った。
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