第60話
わたしは心臓が破裂しそうになった。生母は生きている。わたしを置き去りにして。わたしの記憶をなくして。
「お母様はどこのチャンネルにいるの?」
わたしが訊くと、父はわかっていたかのようにすぐに教えてくれた。わたしは父がわたしのリングに送ったURLをクリックした。画面には、気の遠くなるような数の本が並んだ書架が無数にある、広大な部屋が映し出されている。図書館だ。わたしは生母が図書館にいると知って涙が出そうになった。活字が好きな生母。わたしに同じ趣味を植えつけた生母。彼女が見当たらないので公式サイトのトップページに行く。公式サイトは地味で、このチャンネルを様々な民族の子供たちが集まる寄宿学校を舞台にしたものだと説明していた。生母はそこの図書館で司書をしていた。生母のカメラが映し出す映像を観るため、彼女の顔写真をクリックする。写真で見る彼女は少し老いていたが、確かにわたしの生母だった。改めて見ると、思っていたのとは違って普通の顔立ちだ。わたしは彼女がわたしに似て醜いものだと思っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます