第59話
わたしは、と言おうとして、唇をつぐんだ。わたしは、あなたのように簡単に受け入れることはできない。そんな安易な選択はできない。そう言いたかったけれど、義母を失った父を攻撃することは控えた。すると父はこう言った。
「受け入れないといけない。沙良。お前はそうしたくないだろうけれど、そうしなければ。恵理は受け入れなかったからここから出されてしまったんだよ」
恵理? 生母の名前だ。わたしは信じられないものを聞く思いで父を見た。父は軽々しく口にしたのではないことを示すように、わたしの目をじっと見つめていた。生母は義母のように死んでしまったのではないのか?
「恵理は会社に管理されることを嫌がっていた。何度も抵抗し、そうだね、お前のようにカメラを叩いたりしていたし、堂々と会社を悪く言っていた。わたしたちはとめたものだよ。わたしや、隣の敬子さんたちは。でも、やめなかった。公式サイトの掲示板で視聴者と口論をしたし、会社に自分をここから出すようにメールを出したりした。最初は面白がっていた視聴者も、次第に彼女を厄介な登場人物として嫌っていった。視聴者から彼女をここから消すように声が上がって、会社はその通りにした。彼女は別のチャンネルで別の登場人物として生きているよ。わたしたちが彼女のことを話さないのは、そのせいなんだ」
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