第50話
ウォークインクローゼット内の両側に並ぶ、義母の華やかな服の中から彼女が取り出したのは、淡いピンクのワンピースだった。フリルやレースこそないが、色と形が少女趣味な感じがして嫌だった。これも、着ることはない。わたしは気まずく黙る。
「沙良さんはいつも地味な色の服を着ているから、女の子らしい服を着ているところを見てみたいの。きっと、可愛いわ」
可愛くなんかない。わたしは苛立ち、ますます仏頂面になった。義母は戸惑ったようになり、どうして?と言った。
「沙良さんは女の子として一番素晴らしい時期に入ってきているのよ。どうして自分のよさを認めようとしないの? わたしは沙良さんのよさを知ってるわ。あなたは、とても思慮深くて可愛い女の子よ」
わたしと義母の間に、沈黙が落ちた。義母は真顔でわたしを見ている。若くて美しい義母。彼女にそのように言われると、わたしは上から見下ろされているような気持ちになり、不愉快になった。ウォークインクローゼットから出た。義母は取り残され、わたしは去った。
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