第49話
翌朝、義母はいくらか元気そうに見えた。わたしはさりげなく義母の持とうとした皿を手に取り、運んだ。義母は気づいていないと思う。気づかれたら、何となく困る。
「あなた、昨日は少し大変だったの。お腹が痛くて」
父がぎょっとした顔で義母を見る。それに対し、義母は微笑んで言う。
「でも、沙良さんが励ましてくれたから助かったわ。もう、痛くないのよ」
「そうか」
父はほっとしたように笑った。わたしはいつものように腹を立てながら食事をした。わたしが言ったのは、励ましの言葉ではなかった。わたしにはもっと言うべき言葉があった。
「沙良さん、ありがとう」
義母の笑顔から、わたしは目を逸らした。自分でも、冷たい仕草だと思う。
昼に義母がわたしを彼女のウォークインクローゼットの中に呼んだ。これはよくあることなので、わたしは何の期待もせずに中に入った。ウォークインクローゼットは父と義母の寝室に備わっている。だから必然的にその部屋を通ることになるので、それだけが嫌だった。
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