第47話

ドアを出た途端、廊下の向こうにいる義母に見つかった。わたしは腹立ちまぎれに「別に」と答えた。最近のわたしは彼女の親切さに応えたがらない自分に苛立ちを覚えていた。それがますます彼女への怒りとなり、理不尽にぶつけられた。そう、理不尽だとは自分でもわかっていた。


「育ち盛りの女の子が、こんな時間まで起きていては駄目よ。何をしてたの?」


「何でもないわ。お義母様こそ、赤ちゃんがお腹にいるのに夜更かししてもいいの?」


 義母は不安げな顔になった。それを見て、わたしはふとおかしな気分になったが、それを彼女への心配だとは認めなかった。


「お腹が、痛くて」


「え?」


「何故か少しお腹が痛くて、心配で眠れないの。お父様は眠っているし、どうしようかと思って」


 わたしは一瞬、おろおろした顔になっただろう。しかし薄暗くてわたしには義母の顔が見えないように、義母にもわたしの顔が見えていない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る