第46話

「あれ以上手を加えてやりたくない。自然なままでいさせたいんだ」


 そう、とわたしはがっかりしたような声で答える。静雄はわたしの様子を見てほっとしたようだが、わたしは、断固として実行するつもりでいた。


 庭一杯に広がった静雄の薔薇たちが、風にそよそよと揺れている。


     *


 ヒト薔薇について、インターネットで調べた。発売されたばかりの品種だからか、情報が少ない。わたしたちの庭に黄薔薇たちがやってきたのは、視聴者への宣伝のためなのだろう。しかしヒト薔薇の開発会社のホームページには、受粉の仕方がきちんと載っていた。何だ、普通の薔薇と一緒じゃない。わたしはそうつぶやき、立ち上がった。深夜二時。ぬるいココアが飲みたかった。


「あら、沙良さん。どうしたの?」

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