第45話

十二月ごろ? わたしは驚き、恐ろしくなった。今年以内に、彼女は死ぬのだ。一般的な薔薇は何年か生きる。一本の幹なら四年くらいだ。ヒト薔薇は作られたばかりの品種だから、寿命が短いのだろうか。わたしは黄薔薇の顔を思い出した。美しい黄薔薇。無邪気で明るい。黄薔薇がさっき言った言葉がわたしの中を行き来する。すると、わたしの中の汚い誰かがわたしの唇を動かした。


「黄薔薇を受粉させたら、どうなる?」


 静雄は眉をひそめながらわたしの目を覗き込む。わたしはきっと、ぎょっとするような邪悪な目をしている。


「喉が腫れて、醜くなるよ。大きな実ができるから」


 醜くなるのか。いいじゃないか。わたしはそっと微笑む。


「なら、黄薔薇に受粉させたいわ」


 不可能ではないけど、と困惑しながら静雄が言う。


「だって。植物って、命を繋がなければならないんでしょう?」


「そう言ったけど」


 でも、と静雄が口ごもる。

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