第45話
十二月ごろ? わたしは驚き、恐ろしくなった。今年以内に、彼女は死ぬのだ。一般的な薔薇は何年か生きる。一本の幹なら四年くらいだ。ヒト薔薇は作られたばかりの品種だから、寿命が短いのだろうか。わたしは黄薔薇の顔を思い出した。美しい黄薔薇。無邪気で明るい。黄薔薇がさっき言った言葉がわたしの中を行き来する。すると、わたしの中の汚い誰かがわたしの唇を動かした。
「黄薔薇を受粉させたら、どうなる?」
静雄は眉をひそめながらわたしの目を覗き込む。わたしはきっと、ぎょっとするような邪悪な目をしている。
「喉が腫れて、醜くなるよ。大きな実ができるから」
醜くなるのか。いいじゃないか。わたしはそっと微笑む。
「なら、黄薔薇に受粉させたいわ」
不可能ではないけど、と困惑しながら静雄が言う。
「だって。植物って、命を繋がなければならないんでしょう?」
「そう言ったけど」
でも、と静雄が口ごもる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます