第41話
少年と決めつけたのは、彼の顔立ちが面長で、黄薔薇のような甘い顔ではなかったからだ。表情もどことなく静雄に近いものを感じる。しかし彼には人間の生殖器に似たものはなく、黄薔薇と同じような中性的な体型をしていた。薔薇が分かたれた性別を持たないように、ヒト薔薇も両性を持つのだった。静雄は丹念に白薔薇の体を点検していた。その様子を見ても、黄薔薇のときのような不快感はなかった。
「ヒト薔薇は、手入れいらずだね」
静雄が白薔薇に笑いかけ、白薔薇は無口に彼を見つめた。静雄はわたしにも視線を向け、わたしは彼がわたしの存在を許していることに安堵していた。そもそも、あのような些細なことに動揺するわたしが滑稽だった。
「ヒト薔薇は、虫もつかないし病気にもならない。羨ましいよ。おれの薔薇たちも同じくらい丈夫ならいいのに」
静雄の薔薇。ふと隣の薔薇園を見ると、完全に満開のときよりも少し劣るくらいの色合いで薔薇が咲いていた。満開まであと何日だろう。
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