第40話
「沙良さん!」
思考を遮る声に驚く。立ち上がって窓の下を見ると、黄薔薇がいた。笑っている。わたしは、どうして来たの、と慌てて尋ねる。
「白薔薇が話したんです。わたしの名前を呼んだんですよ」
何のことだかわからない。とにかく両親に黄薔薇を見られたくはない。知ってはいるだろう。けれど彼らが黄薔薇の存在を目にすると、面倒なやりとりに発展するだろうことが嫌だった。
「わかったわ。すぐに池に行くから帰って」
黄薔薇はにっこりと笑い、走っていった。その姿は以前と変わらず美しく、中性的だったが、どこか大人びて見えた。黄薔薇の精神はどれくらい育ったのだろうか。わたしは考えながら身支度をし、家を出るべく部屋のドアを開け、歩き出した。
池には、三人の人影が見えた。黄薔薇がいた。静雄がいた。もう一人、白い花弁が短い、少年のヒト薔薇。
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