第38話

「ただ馴染めないだけよ。それだけ」


 静雄がため息をつく。わたしはそれに少し傷つく。


「話したいことがあったけど、やめておくよ」


 静雄は立ち上がった。わたしは不安な顔を隠せずに、彼を見上げた。


「今の沙良はおれの気持ちなんてわからないよ。歳が離れてるから、仕方ない」


 わたしは子供だというのか? わたしは充分に成熟した心を持っている、と思う。静雄が隠したがる酒や煙草のことだって、話してくれればわかる。


「話す前に、ヒト薔薇たちは死んでしまうかもしれないな」


 それは、どういうこと?


 わたしの唇が動く前に、静雄はドアを出た。わたしは一人、取り残された。


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