第36話
「お父様が静雄さんにお茶をお出ししなさいとうるさいものだから」
にっこり笑って静雄の前のテーブルに湯気の立つ緑茶を二つ置いた。濃い黄緑色。わたしは微笑んでお礼を言った。静雄の顔が明るく変化し、わたしはそれが気になった。
「ぼくらは話をしているだけなんだから、ゆかりさんも信行さんも、気にしなくていいんですよ」
「そんなことを気にしてるんじゃないのよ。ただ、話が込み入っているようだから」
義母は微笑みながらそう言ったが、それにしても義母がわたしの部屋に入るのは珍しい。
「お腹の赤ちゃんは何ヶ月でしたっけ?」
静雄が訊く。義母はことさらに笑みを深くし、七ヶ月、と答えた。静雄が同じように嬉しそうな顔をする。何が嬉しいんだろう。
「赤ちゃんが生まれたら、そうね、弟でも妹でも、沙良さんともっと仲良くなれると思うわ」
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