第34話
「静雄さん、煙草は吸わないの?」
静雄が顔を上げた。困惑した顔。
「いつも家で吸ってるんでしょ? どうして吸わないの?」
「染みつくんだよ、煙草の匂いは」
静雄は小さな声でつぶやく。
「酒は? いつもどれくらい飲んでるの?」
「ビールを一缶くらいだよ。そんなことに興味あるの?」
批難するようにわたしを見る。わたしはうなずいた。
「だってどうして静雄さんが酒や煙草を嗜むのか、知りたいもの」
今時、酒はともかく煙草を嗜む人間は少数派だという。静雄がその少数派に属する、具体的な理由が知りたかった。静雄が口から煙を吐き出したあの光景は、酒を飲んで酩酊する彼をイメージさせ、わたしを戸惑わせた。穏やかな彼にはそのどちらも似合っていなかった。
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