第31話
「わたしと静雄さんもまだ子供だわ。それに黄薔薇はどう見たってわたしたちと同じくらいの年齢じゃない」
静雄は黙った。考えるように視線を斜め上にやって、次に地面を見遣って、うなずいた。
「この話題は終わりにしよう。じきに黄薔薇はおれたちの精神年齢を超えるんだから。おれたちがまだわからないことを、黄薔薇はわかるようになるよ」
それを聞くと、黄薔薇の寿命が気になった。静雄の薔薇と同じように短い年月を生きるのなら、それは少し、淡い同情のようなものを感じさせる。黄薔薇の生き死になど考えたことがなかった。生まれたばかりの黄薔薇にそんなものが付随しているようには、とてもではないが考えられなかったからだ。
黄薔薇は何年生きるの?
わたしは訊こうとして、黄薔薇の存在に気づいてやめた。それくらいの分別はある。静雄のほうは、何か隠しごとをしているようだ。ベージュの作業着のポケットに手を入れ、それをむやみに気にしている。
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