第26話

黄薔薇が足を水耕栽培の池に浸している。その姿はどう見ても絵になる、美しいものだった。足から栄養を摂取しているだけだとはわかっている。それでもその美しさは醜い感情を抱くには充分だった。わたしは彼女から目を逸らして暗い森を見た。風によって運ばれてくる森の空気は、湿っている。


「楽しいですね、沙良さん」


 黄薔薇はあの正確すぎる声で、そう言った。わたしはちょっと彼女を見ただけで、無視した。


「どうして無視するのですか?」


「そんなこと、どうでもいいじゃない」


「緑、美しいと思いませんか?」


 わたしは苛立った。木々や花々を素晴らしいと思う感情くらい、わたしも持っている。


「葉緑体がわたしの体に光を運びます。健気です。それと同じようにこれらの植物たちにも葉緑体があり、働いています。それを美しいと思いませんか?」


「思わないわ」

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