第25話

わたしは彼女を他のチャンネルで見たことがある。どういう内容かは忘れた。遠い昔の記憶だからだ。わたしは会った瞬間、奇妙な顔をしたのだろう。義母に問い詰められた。説明したら、義母はその場でリングを操作し始め、しばらくして絶望したような顔をした。自分があちらこちらに売り渡されるような存在であることを知ったのだろう。わたしもそのときに知った。自分の存在は、カメラの向こうの存在よりも軽いということを。


 しかし、義母だけではない。生母もそうだ。静雄の父も。要するにここの生まれでない者は全員そうだ。わたしだって、このチャンネルの人気が落ちて、登場人物が全員ばらばらになり、それぞれ売り渡されるということを考えないわけではない。わたしたちの体は売り買いされているのだ。


 わたしたちの関係は、人の手で作られている。


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