第23話

わたしたち家族は、一階の大広間で食事を取る。わたしと義母は、厨房の隅に置いてある銀色で真四角の食物合成機で作られた食事を、大広間の長いテーブルに運ぶ。父は義母ばかりを手伝う。妊娠しているのだから仕方ないといえば仕方ないのだけれど。


 わたしたちは日本食ばかりを食べる。父は胃が丈夫ではない。日本食はあっさりしていて彼の胃に向いているから、彼はそれしか食べない。だからわたしたちもそれに従わざるをえない。


 生母がいたころ、彼女は平気で別のものを食べていた。しかも、行儀悪くリングから出した物語を読みながら。わたしもその習慣を受け継いで、時々「マノン・レスコー」を読みながら吸い物の三つ葉を咀嚼する。


「お行儀が悪いわよ、沙良さん」


 おっとりとした義母さえも注意するのだから、父の怒りはいかばかりだろう。しかし彼はわたしに何も言わない。彼はある時期からわたしに干渉するのをやめてしまったのだ。それをわたしは関心がなくなったのだと捉えている。

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