第14話

そのときから、あのサイトは覗いていない。見て、どうなる? 自分がどう言われ、どう求められているのかを知ったところで。わたしや静雄の家族が見られていることを確認したところで。


 わたしは「マノン・レスコー」を消した。そして立ち上がって小さな空中小型カメラをてのひらで叩いた。苛立つと、わたしはよくこうする。カメラが壊れたって、どうにもならないのに。


     *


 森に囲まれた庭。この庭での生活は楽しいものではない。もっとも、わたしはここの外の世界がここより楽しいかどうかは知らない。


 日本民族向けチャンネルの、登場人物としてのわたしたち。わたしたちを見ている人々は、わたしたちを当たり前のように観察している。気が向けば誰かのカメラを追い、飽きたらしばらく見ない。わたしたちはわたしたちの生活をやめることはできないのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る