第9話
ホールの真ん中を突っ切り、そのまま階段に足をかけて上る。二階の図書室を目指していた。そこには紙でできた本が充分ではないがたくさんあって、わたしをいつも満足させていた。本は読まない。活字を読みたければ手首のリングを使えばいい。リングに触れるだけで、小さな穴から好きな物語が光の平面として飛び出してくるからだ。
最近は「マノン・レスコー」を読んでいる。原始的な小説で、後の時代のものとは作りの精巧さが比べ物にならないがなかなか面白いと思う。今の家族はあまり物語や詩を読まないので、それらを共有するのは難しい。わたしに文学の愉しみを植えつけたのは、生母だ。生母はいつも何か読んでいた。そして父に疎まれていた。
「あら、沙良さん。外から帰ったの?」
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