第8話

「ああ、うまく育ってるじゃないか」


 拳大の白っぽい種の殻が破れ、飛び出した中身がヒトデのような形になっていた。わたしは無関心にながめていたが、静雄は眉をひそめ、何か考えている。


「ちゃんと世話をするわよ。静雄さんの薔薇みたいにするわ」


 静雄の沈黙に退屈してそう声をかけると、静雄は少し笑って、そうだね、と答えた。そして軍手を外して裸になった、傷だらけの手を水に浸し、種から出てきたあの奇妙な中身に触れた。それは動いた。ゆっくりと、手足に似た部分を交互に動かしたのだ。わたしはどきりとして、静雄の顔を見た。静雄は微笑んでいた。


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