第4話

家の前に、見事な薔薇園がある。まだ蕾だが、時期が来れば一斉に満開になり、自己主張の強い香りを放つ色とりどりの薔薇が植わっているのだ。薔薇を育てるのには手間がいる。静雄は薔薇園で長時間作業服を着て世話をしている。


 わたしは大股に歩き、薔薇の茎にアブラムシを除ける薬剤を霧吹きで散布している、静雄に近づいた。そのまま何も言わない。静雄は黙っているが、わたしが来たことに気づいている。わたしはじっと静雄を見つめた。短く刈った襟足から、長い首が伸びている。一重まぶたの優しい目。華奢で背も高くないけれど、軍手の下の手だけはごつごつしている。薔薇の棘を触り、土をいじっていれば自然とそうなるのだろう。爪にはよく泥が入っている。汚いとは思わない。ただ、静雄からは時々妙な匂いがして、わたしはそれが気になっている。

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