第3話

わたしは庭と森を観音開きの窓から見ていたが、それをやめてあちこちにステンドグラスの窓がある装飾過多な家のホールから玄関に向かい、その前に張り出したフランス風の車寄せのアーチを抜けた。石畳の庭が現れる。新緑を身に纏い始めた木々が、その途中途中に現れる。広い庭から静雄の薔薇園に行くために歩くのはちょっとした運動だ。まだ少し冷たい風が、布の繊維の隙間を通ってわたしの体に触れる。わたしは長すぎる黒髪をそのまま風になびかせ、紺色のワンピースの裾をさばきながら勢いよく歩く。


 石畳が終わるころには、もじゃもじゃと様々な植物に囲まれたイギリス風の洋館が見える。明治時代の日本の建築物によく似ている。淡い紫色をした、二階建ての大きな家だ。確か、コロニアル様式の建物だと聞いた。二階にバルコニーが見える。わたしはこちらの家のほうがいい。わたしの家は真四角のフランス風洋館で、家の中はどこもかしこも甘ったるいアール・ヌーボー調。義母がわたしのために用意する服くらい甘ったるい。

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