第6話

 二○五‪✕‬年、十一月某日。


 某大手製薬会社に勤める一人の社員から内部告発があった。


 端的に言えば会社の研究施設で非人道的な実験を繰り返し、それを隠蔽し続けていたという内容だ。


 反社会的勢力が会社との癒着があり、そこから借金のカタに売られた未成年を仕入れては、実験台として扱った。

 特に非道な扱いを受けていたのは、山口ハナという少女だった。彼女は下手をすると死に至る可能性が高い非常に危険な実験を毎日毎日行われていた。


 この詳細を知った監査の人間は、戦慄き、嘔吐し、嗚咽を零した。


 マスコミも放って置かなかった。

 製薬会社の悪逆非道な行いと、被害を最も被った天涯孤独の悲劇の少女の存在を大々的に喧伝させ、全国を震撼させた。


 内容により心臓麻痺を起こし病院に搬送された高齢者が全国各地で現れるほどの衝撃的な内容だった。


 ハナは与り知らないところで、一躍時の人となっていた。


 世間はハナを始めとする被験者として使い棄てられた少年少女に同情した。同時に製薬会社に誹謗中傷に近い非難を連日浴びせ続けた。


 警察は本格的に捜査に乗り出した。

 叩けば出てくるほこりのように、これまでの悪事や汚職が発覚する。


 間もなくして捜査と逮捕の為に大勢の刑事がわらわらと研究所に現れ、所内は混乱を極めていた。


 それと同時に、ハナにとって運命的な瞬間が音を立てずに迫りつつあった――――

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