第91話
「大事ないか?」
労るように覗き込んできた、あまりにも美しい女の顔に、みりおは慌てて背を向けた。
「何ともない!」
「そうか」
深みのある声で笑った女が、今夜は私のところで寝るが良いと囁く。
良い香りのする絹の羽織に包まれた、粗末な木綿の寝間着と裸足の自分を美しい女に見られたくなくて、みりおは羽織を脱ぎ捨て突き返す。
「・・戻ります」
女は驚いたように目を見開く。
「また酷い目にあうぞ?」
「今夜逃げたところで、明日には戻るのだから同じ事」
大部屋へ戻ろうとするみりおの腕を女が掴む。
「いいから、今夜は来なさい」
広くはないが、品の良い設えの部屋へ入ると、新しい寝間着を与えられた。
髪を解き白い夜着に着替えた女は更に美しく、みりおの胸を波打たせた。
「明日、瀬奈様に頼んでみるから、今夜はここで寝るように」
奥の間に敷かれた布団は、人が二人寝ても余る程に大きく、上等なものだった。
こんなに柔らかく清潔な布団に入ったことのないりおは、隣に横たわった女の艶やかな黒髪と白い首をただ見詰めていた。
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