第79話

「真咲様・・・また溜息」


幾度目かになる深い溜息を指摘され、真咲は苦笑した。


ひろむや壮との対面時、下座に通される事に抗議し、早速衝突したという凰稀。


大奥のしきたりについての話の途中で「もうよい」と欠伸をし、女官に菓子を所望する。


真咲に菓子を勧めながら、おっとりと美しく微笑む凰稀の様子に、青筋を立てるのが馬鹿らしくなってきた。



壮の部屋から、凰稀を迎える宴と称した、酒宴の騒ぎが聞こえる。


鳳稀の部屋からは、女官達と絵合わせでもしているのか、笑い声が響く。



小机に積み上がった、婚儀までの様々な段取りが記された書物を前に途方に暮れている真咲。


その眉間に深く刻まれた苦悩の表情に、りおの胸は締め付けられた。


「真咲様、私何でもしますので言って下さい」


後ろから両手でそっと包み込んでくる、りおの香りに真咲は眼を閉じる。


そのままぎゅっと抱き締められると、体中に入っていた力が抜け、甘い痺れが全身を溶かしていく。


胸元に重ねられたりおの手を取ると、真咲は自分の襟の合わせにその手を滑らせる。


りおは驚きながらも、柔らかい胸の感触に誘われ、更に深く手を差し入れる。


「真咲様、また?」


そう言いながらも、乱れた胸元から覗く赤い襦袢と、真っ白い肌から目が離せない。

肌に直接指を這わすと、すぐに息を乱し出す。


結い上げた髪をするりと解き、何も言わずに見つめてくる。


「りお・・早く」


少し掠れた、甘い囁き声に抵抗できるはずもなく。

りおは真咲を畳に倒し、広げた胸元に顔を埋める。



忘れたい事があると、快楽に逃げるあなたの癖は変わらない。


苦しい事を忘れるように乱れる姿が、悲しくも綺麗で、離すことが出来ない私も同じ罪なのだろう。


こういうあなたも好きだけど、苦しむ姿は見たくない。


あなたを煩わせるものは私が、汚い事でも全て引き受ける。


乱れる吐息混じりに「りお」と囁く唇が愛しくて。


遠くから聞こえてくる女官たちの笑い声に耳を傾けながら、必ずこの人を守ってみせると、腕に力を込めるりおであった。



おわり



大奥第二部です。

大風呂敷という名の、なんでもありプロローグ。


なんかみりまさの和風えろが一番、大奥書いてるな~って感じがします。


まったりゆっくりお楽しみいただけたら嬉しいです。

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