第66話
それ以上言わせたくなくて、瀬奈はひろむの身体を引き寄せ抱き締めた。
一瞬困ったような瞳で瀬奈を見上げたひろむだが、その瞳が閉じられ腕が背中に回される。
お互い呼吸ができなくなる程、強く抱き締めあった。
言葉にするのは嘘ばかりだが、本当の想いはこんなにも伝わるものなのか。
ひろむの息が上がるのを感じ、瀬奈は腕を緩める。
いつかのように突き放されるのかと、怯えたような目で見上げるひろむに瀬奈はそっと口付けた。
「ひろむ」
そう呼ばれたのはあの夜以来の事で、忘れようとしていた記憶が蘇る。
恐怖や抑えられなかった声、耐えられない程の羞恥を思い出し、瀬奈を見上げる瞳が潤んでくる。
「このまま、忘れてしまった方が楽ですよ?」
「分かってる・・嫌か?」
「嫌ですよ」
固まるひろむをもう一度強く抱き締めながら、瀬奈は搾り出すように呟く。
「忘れたいんです」
それでも瀬奈の唇は耳から首筋を辿っていく。
それだけで息を乱し身体を震わすひろむを見つめ、苦しげに息を詰める。
夜着の上に重ねた羽織を脱がし、そのまま畳の上にひろむの身体を押し付けると「ここでは・・・」と抗う。
奥の寝所に伸べられた寝具の上に、背を向けて座るひろむ。
襖を閉めた瀬奈はひろむを背後から抱き締めた。
襟元に手を差し入れると、柔らかい膨らみを包み込むように指を這わす。
いきなりの感触に身を固くするひろむの耳元に瀬奈は囁く
「女らしい身体になりましたね」
胸を愛撫されながらの言葉は、暗にゆうひとの事を言われているようで、ひろむの身体は羞恥で熱くなった。
片方の手で夜着の裾を開かれ、膝から太股、その奥まで指を伸ばされる。
座ったまま露わにされていく肌と、瀬奈の動く指、濡れた音を立てる自分の身体が目に入るのが耐えられずひろむは震えた。
瀬奈の顔が見えないまま、漏れる声と腰が動いてしまうのが止められず、瞳から涙が零れる。
更に進む指にひろむの身体は反り返り、閉じていた膝が開いていく。
ひろむの長い髪を片側にまとめ、露わになった首筋に紅い痕を残しながら
「そして感じやすく、綺麗になりました」
座っていられず、瀬奈の身体にもたれて悶えるひろむの身体をそっと横たえる。
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