第48話

慌てて後を追う真咲と、もりえ達。


廊下を足早に進み、すれ違う女中達を驚かせながら、ひろむは御膳所へ向かった。


食事に何かを混ぜられていた事は確実だと理解した。


思えば、どこでどう作られているのかも知らない、自分の食事だった。


御膳所にひろむが訪れた事を聞き、食べていた饅頭を喉に詰まらせながら、仲居頭の十輝が慌てて出る。


「これは御台様、このようなところへ、いかがいたしましたか?」


「仕事中すまないな、私の食事が保管されるという部屋はどこだ?」


十輝は隣の小部屋を案内する。


薬はどこに?と目で指示され、無くなっていてくれと願いながら、茶棚を開く真咲。


懐紙入れは以前と同じ場所にあった、中には赤い薬の包み。


十輝をはじめ、さすがのひろむも青ざめる。


「十輝、この事は知っていたか?」


「いいえ、御膳所には薬の類の持込は出来ないはずですので・・・」


「・・・この部屋へ立ち入るのは?」


「瀬奈様でございます」


「え・・・・?」


言葉を失うひろむから、思わず顔を背ける真咲。


「毒見の済んだ御膳はこの部屋へ運ばれ、瀬奈様の確認の元、御台様のお部屋へ運ばれます」


十輝はふと思い出したように、「確認の際、お人払いをされる事もよくありました」と。


ひろむは、懐紙入れの中の薬包の束をじっと見つめたまま動かない。


以前は、家の使いで薬屋へ出向く事もあった。

様々な色の薬包を目にしたが、赤い包み決まって劇薬の類ではなかったか。


瀬奈が、自分に毒を?

まさかという思いと、恐ろしさで手が震え出す。


そこへ、廊下が騒がしくなり、当の瀬奈が現れた。

小部屋の中のひろむや真咲たちの姿を見回し、やれやれという表情。

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