第39話

ひろむの着物を調え寝具に寝かし直すと、泣きながら「私のせいです」と繰り返すりお。


反応がお可愛らしくてと、香の話を白状するりおには呆れたが、原因はそんな事ではないだろう。


血の気のない顔で横たわるひろむの手を握り、もしこのまま目覚めないような事になったら、自分を許す事ができないと真咲は思った。


知っていながら守れなかった、何も出来なかった。


「真咲様、瀬奈様を・・・」


「呼ぶな!」


今、瀬奈の姿を目にしたら、何を口にするか分からない。

ひろむの唇から漏れる小さな呼吸を聞き逃さないよう、真咲はただ祈った。


御殿医と共に現れた瀬奈は、部屋の香に気づくとりおを睨みつけ、部屋の空気を入れ替える。


ひろむの傍らに座ると、身を屈め口付けるかのように顔を近づけ、呼吸を確かめる。


「上様、心配ありませんのでお部屋へお戻りください、酷いお顔の色です」


お前達も、と促すと「いいえ、下がりませぬ」と瀬奈を見据える真咲。


「聞こえないのか?」


瀬奈は静かにりおに視線を移す、ゾッとしたりおは慌てて真咲の手を引き、立ち上がらせる。


「瀬奈様!私知ってます・・・」


瀬奈に言い放ち、抵抗する真咲を、引き摺るようにして部屋の外へ連れ出すりお。

渡り廊下でも手を離さず、自室まで戻る。


さすがに廊下では騒がないが、部屋に入った途端


「りお、あれは瀬奈様が毒を飲ませたせいや」


「なっ・・・」


「瀬奈殿が人払いをする御膳所の小部屋に、赤い薬包があった、今中を調べさせているところだ」


それでここのところ様子がおかしかったのか。

もっと早く気づいていれば・・・と涙を流す顔があまりにも蒼白で怖いほど。


「こうしているうちにも御台様が・・・」


泣きながら部屋を飛び出そうとする真咲様の腕を掴み、きつく抱く。


「瀬奈様を敵に回すおつもりですか?」


心のままに突っ走るあなたは可愛いけれど、今は別だ。


「もし毒が本物だとして、瀬奈様を裁ける者がここにいますか?」


「だからと言って・・・」


「あなたが潰されるだけです」



つづく



今後の予告


「瀬奈・・・本当にこれが毒でないと言うのなら、今飲み干してみろ」



「私はいつ死んでもいいと思っていたが、今は違う」



今回の話ではたった一つ、ゆうひさんゴメン!!!!(いいトコで)



第六話 おわり

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