第11話

「御台様に叩かれたとか?」


扇子で真咲の顔を上げさせ、様子を見る瀬奈に「私の口が過ぎたこと」と。


そうか、と頷き次は「みりお」と。


「好きなのは構わないが、私情を表に出さないの」


「ですが瀬奈様、真咲様が・・・」


「明日の検分は私一人で行う、お目付けも不要と将軍付きに伝えてある」


真咲がはっと顔を上げる、


「お一人でとは?!」


お目付け無しは良いとして、瀬奈様お一人、それではまるで・・・


「まさお、お前の最初と同じだ」


顔を赤らめ下を向く真咲と、それを横目で見てふっと笑う瀬奈。


そんな二人を見比べて、腑に落ちない顔をするりお。


「瀬奈様まで、御台様には何か変です!」


「りお、呉服の間には仕事を急がせるように」


「瀬奈様~」


「みりお、元の部屋へ戻されたいのか?」



田舎の出で、元は大奥の雑用係をしていたりお。

まだ幼く、その容姿と性格で目を付けられやすく、格上の女中たちに手篭めにされそうなところを真咲に助けられた。


その頃既に瀬奈付きであった真咲が願い出、特別にりおにも同じ待遇が与えられた。


折を見て上様のご側室に推すという話ではあるが、りおはいつまでも真咲のそばに居たかった。


同じ田舎の出で、よく揉め事を起こしていた自分と御台様が少し重なり、余計に腹が立った。


自分に優しかったように、御台様を労わる真咲の気持も理解できて胸が苦しい。


御台様は瞳のきらきらとした、真っ直ぐなお方。

きっと真咲様は・・・


腹の中で黒いものが渦巻く自分に、りおはぞっとした。



つづく




ごめんなさい。

調子に乗って予告なんて書いたのに、降って湧いたまさみりなんて書いていたら、まったく辿り着きませんでした。

嵐の前の・・・的な一話ですが、とりあえずアップします。



懲りずに第三話 予告


「怖ければ目を閉じて、私の指を思い出していれば良い」


「ひろ、私の隻眼がそんなに恐ろしいか?」


鏡越しに、見たこともない表情で妖艶に笑うひろむに、私は魂を奪われた。



今度は確実です、すみません。


第二話 おわり

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