第2話

おれの家は住宅と田んぼが入り混じる、中途半端な場所にある。低い山の上に、のしかかるようにして雨雲がかかる。ものすごい色だ。汚れきった布団綿のような。雨足はとまらない。強くはないがしっかりとした雨の音が聞こえてくる。舌打ちが出た。


 車通りの多い国道に出る。潰れてしまった煙草屋の軒下で雨宿りをしていた千歳が、手を振るでもなくおれをじっと見ていた。制服姿だった。今日は土曜だったのに、と不思議に思いつつ駆け寄ると、千歳はにこりともせずに言い放った。


「傘、一本しか持って来んやったと?」


 あ、と思った。いつもの癖だ。いつもは千歳と二人で傘に入るから。


「大おばさんたちに変に思われるやん」


 それどころではない、とは言えず、おれは無言で千歳を傘に入れた。彼女は自然な様子で歩き出し、やけに無口なおれが気になったのだろう。おれの横顔を見ていた。

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