第2話
おれの家は住宅と田んぼが入り混じる、中途半端な場所にある。低い山の上に、のしかかるようにして雨雲がかかる。ものすごい色だ。汚れきった布団綿のような。雨足はとまらない。強くはないがしっかりとした雨の音が聞こえてくる。舌打ちが出た。
車通りの多い国道に出る。潰れてしまった煙草屋の軒下で雨宿りをしていた千歳が、手を振るでもなくおれをじっと見ていた。制服姿だった。今日は土曜だったのに、と不思議に思いつつ駆け寄ると、千歳はにこりともせずに言い放った。
「傘、一本しか持って来んやったと?」
あ、と思った。いつもの癖だ。いつもは千歳と二人で傘に入るから。
「大おばさんたちに変に思われるやん」
それどころではない、とは言えず、おれは無言で千歳を傘に入れた。彼女は自然な様子で歩き出し、やけに無口なおれが気になったのだろう。おれの横顔を見ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます