第5話世界樹の苗木
「行商?」
それは夜遅くに帰ってきたシルヴィーナから聞いた言葉だった。
「はい、私の兄がやっているエルフの行商で」
「エルフが行商ねぇ?」
「普段は人の姿に変装してやってますので」
「あ、そーなの」
「お金も貯まっているし、買い物するかぁ。街には行けなさそうだしね」
「それと宜しければユグドラシルの所に行って見ませんか」
「ユグドラシル? もしかして世界樹?」
「はい」
私は少し悩んで明日行くことにした。
その間に畑の手入れや作物の収穫を行うことにした。
「相変わらず巨大な作物」
ゲームさながらの巨大な作物を収穫してはアイテムボックスに入れて行く。
家の冷蔵室ではとても間に合わない。
その点アイテムボックスだと時間経過もしないと神様に教わった。
使わない手はない。
「それはそれとしてお腹が空いた。ブラッドフルーツ囓るのも良いけどやっぱり食事がしたい」
そう言って搾りたてのミルクと、スクランブルエッグ、それから購入したパンを口にする。
「はー美味いわ!」
そう言いながら食べる私。
するとノックする音が聞こえた。
「はーい?」
扉を開けるとアルトリウスが皿に肉塊をのせてやって来た。
「わーすごーい! お肉だ! 何のお肉?」
「ジャイアントディアーの肉だ、美味いから食べてくれ」
「ありがとー!」
受け取り冷蔵室にしまう。
「よし、次のご飯は決まったな!」
「……本当に、貴方は吸血鬼なのか?」
「一応そだよー。ブラッドフルーツ食べたら美味しかったし」
「生を?」
「うん」
そう言うとアルトリウスは悩み出した。
「日中は行動はしないのは吸血鬼特有だが、こうして普通の食事をするのはあり得ないし、だがブラッドフルーツを食べて美味いというのは吸血鬼やダンピールならあり得る事だ……」
「深い事は気にしないー!」
ブツブツと悩むアルトリウスの背中を軽く叩いて、私は畑仕事に戻る。
「……そもそも、何故神は愛し子を吸血鬼にしたのだ?」
なーんてアルトリウスは言ってるけど、吸血鬼にロマンを感じた私が頼んだからなんて事は言えませんでした!
仕方ないねー……(遠い目)
翌日──
「ふぁあ、畑仕事とか終わったらユグドラシルの所まで行ってみるかー」
のそのそと棺桶から起きて畑へ向かう、家畜小屋のみんなから収穫して、加工のメーカーにぶち込んだり、販売したりして、それから畑の収穫をして、葡萄とブラッドフルーツは酒造メーカーにぶち込んだりして、あとイチゴとサクランボもいろんなのにぶち込んだりした。
漬物メーカーを作ってカブとかをぶち込んだ。
「シルヴィーナさーん、ユグドラシルって何処ー?」
「えっとこっちです!」
やることを終えてからシルヴィーナさんに案内されながらブラッドフルーツを朝食代わりに食べる。
「うまうま」
「そういう所は吸血鬼なんですね?」
「いや、朝食作るの面倒だったから」
「な、なるほど……」
シルヴィーナさんに案内されて一時間、巨大な木の根元にたどりついた。
「うわー! 世界樹ってでっかい! すごーい! おっきー!」
『愛し子よ……』
「んー? 声がする」
シルヴィーナさんやリサさんとは違う女性の声が聞こえた。
「世界樹、ユグドラシルの声です」
「マジか」
『愛し子よ、どうか聞いてほしい、世界は危機に瀕している』
「なんですと?」
『他の土地の世界樹は切り倒されてしまっているだから……』
にゅっと二つの木が生えた。
『この子達を貴方達の土地に植えてほしい……』
「植えてお世話すりゃいいの?」
『ええ……そうすればこの土地の魔力は増し世界の瘴気は薄らいでいくでしょう……』
「取りあえず掘り起こさないと」
スコップを取り寄せて二本のユグドラシルの苗木を手にし、抱える。
「じゃあ、良さそうな場所に植えるので」
『お願いします……』
「あ、あと、良ければ葉っぱ少しくれません?」
と言うとどさっと落ちてきて葉っぱまみれになるシルヴィーナさん。
「シルヴィーナさん、ユグドラシルの恨みなんか買った?」
「買ってませんー!」
『不慮の事故です、もうしわけない』
取りあえず、袋にユグドラシルの瑞々しい葉っぱを詰め込んでいく。
10袋位できた。
それをアイテムボックスに入れる。
「じゃあ、葉っぱが必要になったらまた来ます」
『ええ、その子達を頼みますよ』
苗木達はまだうんともすんとも言わない。
「さーて、あんなにでかい樹になるなら相当距離を取った方がいいわな」
「そうですね」
私は拠点に戻り、樹を上ってどこら辺がいいか辺りをつける。
そしてそこまでひょいっと移動して、其処にユグドラシルの苗に肥料を上げ、水を与え、土でしっかりと根付くように祈る。
「妖精さん、精霊さん、どうかユグドラシルの苗木をお願いします」
そう祈ってから別の場所に行き同じように動作と祈るのを繰り返した。
『わーユグドラシルの苗木だ!』
『愛し子が頼んだんだ、しっかりやらないと!』
『……僕おおきくなれる?』
『なれるよ勿論!』
妖精と精霊がそんな会話をしているのを聞いたのはシルヴィーナだけだった。
「ふへーユグドラシル、世界樹切るとか頭やべぇんじゃないの?」
「それがユグドラシルの声を聞ける者はほとんどいなくなって……」
「あ、そうなの」
「はい、ですから只の大樹と思って切られる事が多いんです……」
「普通考えれば大樹だと思うのはないんじゃ?」
「……そう、ですね」
ふむ、何か事情があるらしい。
「まぁ、いいや。何か新しい作物植えよう」
私はスマートフォンを起動させる。
「林檎おお、いいね。植えようか。それとラベンダーとかも植えよう、ポプリとか作れそうだし」
購入していき、目の前に並んだ苗達を畑に持って行った。
「林檎は此処で……」
林檎の木を植えているとちょっとだけ大きな蜂が飛んできた。
「あぶねっ!」
思わず避ける。
すると蜂はブンブンと羽をならしながら目の前に来た。
『いとしごさまー?』
「蜂がしゃべった⁈」
『なにかおやくにたてることはありませんかー?』
「そうだな……蜂蜜が欲しいの」
『わかりましたーあたらしいおうちをよういしてくださればていきょうできるかとー』
「おうち、つまり養蜂箱ね、分かった」
私はクラフト能力で養蜂箱を作った。
すると蜂の群れが現れて養蜂箱の中に皆入って言った。
『あとはおはなたくさんくださいー』
「了解!」
私は購入した花の苗たちを植えて水をかける。
「早く大きくなって咲き誇れー♩」
そんな風に歌いながら。
翌日の夕方、花が咲き誇っていて、ミツバチが蜜をため込んでいるのを教えてくれて、嬉しい悲鳴を上げるのは予想外だった。
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