第4話シルヴィーナと……?
「では、シルヴィーナさん、あとはお任せしますー」
「はい!」
梢に頼まれ、シルヴィーナは畑の世話をした。
『愛し子じゃないとやる気が出ないー』
「そ、そんなこと言わないでください! 梢さんは貴方達を今は頼りにしてるんですよ⁈」
『そっかぁ! じゃあ頑張ろう!』
『頑張ろう!』
『育てよう!』
あっという間に作物に実がなる。
ブラッドフルーツの木も大きくなり真っ赤な実をつけている。
「ああ、私が取ったら駄目にしそう……よし、他の事をしよう」
シルヴィーナは聖獣達を外に出し、少しだけ乳や、卵を貰い街へと出掛けた。
「やぁシルヴィーナ」
「レイヴンお兄様!」
行商をやっているシルヴィーナの兄レイヴンがやって来た。
「持ってきてくれたかい?」
「少量ですが……」
と、瓶に入った銀牛の乳と、黄金鶏の卵を見せる。
「おお……やはり本当なんだね!」
「はい」
「なら、頼みがある」
「なんですか兄様?」
「実は定住地を探しているドワーフがいるんだ」
「ドワーフ、ですか」
シルヴィーナは眉をひそめた。
「梢さんだっけ? 極東からきた吸血鬼にして神の愛し子」
「はい……」
「何でもできるとは聞いてるけど、彼女一人じゃ限度があるはずだ。だから、私や彼らの手が必要になるだろう」
「……分かりました、では梢さんに報告して許可をとってみますね」
「うん、頼んだよ。神森はハイエルフでも拒否されれば迷いの森と化すからね」
「はい」
シルヴィーナは梢に見せる為に森へと戻った。
「梢さん、お早うございます!」
「うーお早う……」
私は棺桶から出て、欠伸をする。
時刻は夕方。
「さてー収穫するかー」
「あ、あの!」
「なぁに?」
「実は街で行商をやっている知り合いと会い、そこでその行商から行く当てのないドワーフがいるから受け入れて──」
「
「は、はい! では伝えに行ってきます!」
「いてらー」
ひょいひょいと走り去って行くシルヴィーナを見て私は思った。
「知り合いっていうか友人か兄弟の二択じゃねもしかして」
そう呟いてから、開拓を始める。
まずはメーカー小屋を作る。
硝子が必要だが、ないので購入する。
「クラフト」
呟けば、メーカー小屋と出て来た。
「よっしゃ作るぞ」
それをタッチすればクラフトの方法が頭に入って来て一瞬で大きなメーカー小屋ができた。
ただし、それは外側だけ、中身はまだない。
「酒造メーカーとジャムメーカーと布・糸メーカー作るか」
そう呟いて同じ行動を取る。
あっという間に三つのメーカーができた。
「ふふ、これでワインとかお酒を造れるぞ!」
私は畑に出て収穫を行う。
「葡萄と、ブラッドフルーツと、サツマイモ!」
酒造メーカーの瓶の中に一杯になるように入れる。
「早くできますように! 精霊さん、妖精さん、お願いします!」
と呟いてから。
「あ、乳製品メーカーと調味料メーカーあるじゃん、つくろ!」
と材料を買って乳製品と調味料のメーカーも作ることにした。
夜、レイヴンの元にシルヴィーナがやって来た。
「よい、との事だそうです」
「そうか、ドワーフの方にも一応長は吸血鬼である旨は話しているから大丈夫だと思う」
「そうですか……」
「何か不安なのかい?」
「いえ、前回森にイブリス教の聖職者達が押しかけてきたのが不安で……」
「その梢さんは吸血鬼だけど神の愛し子なのだろう? なら大丈夫だよ」
「そうならいいのですが……」
「さて、私も一旦里に戻って行商の為の仕入れやら何やらをしてこなくては、ああ行商の事も伝えてくれると嬉しいな」
「分かりました」
レイヴンが立ち去ったのを見て、シルヴィーナも店を後にした──
二日後の夕方──
「ん? 森に誰か来たな?」
森に誰かがやって来たのが分かった。
「多分ドワーフかと」
「じゃあ、迎えに行こうか?」
「はい!」
シルヴィーナと一緒に私は森の入り口に向かった。
すると、馬車に乗った小柄で髭の生えたおじさん達がやって来た。
「行商の言ってた森は此処であっとるのか?」
「ドワーフだからって馬鹿にされとるんでは、ここは神森じゃぞ」
「あ、合ってまーす」
何か深刻そうな顔をしているおじさん達の前に私とシルヴィーナは立つ。
おじさん達は馬を慌てて止める。
「お、お嬢ちゃんが、吸血鬼で神森を開拓できる神の愛し子なのか?」
「はいそうですよー、あ牙ありますよ、みますー?」
と言って牙を見せる。
「本当じゃ、牙がある」
「開拓地はこっちなのでこっち来て下さいー」
旗を振りながら案内する。
「おお……」
「本当に開拓されとる……」
「ドワーフさんの住居は……え、基本洞窟? 参ったなーここら辺に洞窟ないし……あ、そんな時は!」
てってれ~クラフト~!
クラフトと呟き、モニターのように表示されている場所にドワーフの住居があった。
「ふむふむ、鍛冶場併設の方がいいよね」
タップして素材をだす。
「おりゃー!」
クラフトの力で人口の石の家を作った、洞窟っぽい奴。
ちゃんと人数分六名が入れる位の広さで。
「できましたー」
といって後ろを見れば、おじさん達はぽかんと口を開けて呆然としている。
「こ、ここ、儂等いていいんじゃろか……」
「い、いいんですよー! あれは梢さんが愛し子だからできるんですから!」
シルヴィーナが自信を無くすドワーフのおじさん達を慰めていた。
「おおーいい場所じゃな!」
「鍛冶場と空気の入れ換えも行える、良い出来じゃ!」
「交代で見張れるのぅ」
「後は酒があれば……」
「そうじゃのう、酒があれば……」
ドワーフのおじさん達が口々に言う。
特に最後のお酒。
私はメーカーの所に行って見る。
すると、瓶一本分のワイン、ブラッドワイン、芋焼酎ができていた。
ブラッドワインはアイテムボックスに入れて。ワインと芋焼酎を渡す。
「宜しかったらどうぞ、私は飲まないので何となく作った物ですが」
「これは……ワインじゃな、なんといい香りじゃ、問題は味じゃがな」
「ほー! 甘いな! 甘い! じゃが美味い!」
「こっちのは?」
「芋焼酎です」
「芋で作った酒か? 聞いた事がないが、うむ良い香りじゃ」
「うほー! なんちゅー酒じゃ! 酒精が強くていい酒じゃ! 美味い!」
「引っ越してきたお祝いということで差し上げますね」
「おお、ええのか?」
「はい」
「……梢様は本当に心が広い御方じゃなぁ……」
そうかな?
嫌いな奴は嫌うけど。
祝杯を挙げているドワーフのおじさん達を置いて、私はミストリア親子の家に向かう。
「アルトリウスさーん」
「私に仕事か?」
「そうじゃなくて、はいブラッドワイン」
「‼ わざわざ作ってくれたのか⁈」
「だって、血の代わりにこれが必要なんでしょう?」
「……狩りしかできないのに、なんと礼を述べたら……」
「狩りでお肉を持ってきてくれるだけで嬉しいですから」
私はそう言って家を出た。
そして私は何となく、ブラッドフルーツを見た。
大きな実がなっている。
一個だけ貰い、齧りつく。
血の味がする、だが甘く濃厚に感じた。
「うん、美味い。やっぱり私は吸血鬼なんだね」
鑑定したら「吸血鬼用の果実。人間は血の味がして食えない、代わりに増血剤の元などになる」と書かれていた。
吸血鬼であるのに納得しつつ、夜の作業に取りかかることにした──
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