第3話住民増加と妖精と精霊




「ふぁ……」

「梢さん!」

「おはよシルヴィーナさん……」

 夕方私は棺桶から出てシルヴィーナさんに挨拶をする。

「今日も作物は?」

「重くて収穫できませんでした……」

 シルヴィーナさんがもうしわけなさそうに言う。

 まぁ、猪より重い作物なんてどんなだよと未だに思う。


「さて、今日は家づくりをしようか」


「家づくり?」

「シルヴィーナさんも、ミストリア親子もいつまでも私の家にいるのはプライバシーのあれこれあるでしょう? だから──」

 私は木を切り、開墾する。

 そして家を建てた、クラフト能力で。


「よっしゃできた」

「す、すごい……」


 あっという間に家が二軒建った。

 ベッドと棺桶常備のミストリア親子の家と、シルヴィーナさんの家二軒。


 その後、動物たちを小屋に入れ、卵などを貰う。

 ソレが終わって──


「じゃあ、話していただけますか?」


 私の家に皆が集まり、紅茶を飲みながら話を始める。

「つまり、お二人は吸血鬼の父親と三人で暮らしていたのですね?」

「はい、ですが吸血鬼を嫌うイブリス教の信者に見つかり、夫は私達を逃がすため犠牲に……うう、カイン……」

 女性が顔を覆います。

「なるほど、で二人の名前は?」

「私はマリア・ミストリア。そして息子がアルトリウス・ミストリアです」

「ミストリア……もしかして吸わずのミストリアですか⁈」

「ええ」

「シルヴィーナ知ってるの?」

「勿論です、吸血鬼でありながら血を吸わず、ブラッドフルーツのみで喉の渇きを潤す温厚な吸血鬼と」

「ブラッドフルーツ?」

「吸血鬼なのにしらないんですか?」

「すいません、そこら辺疎くて……ちょっと事情がありましてね」

「はぁ」

 二人がちょっと信じられないような顔をしている。

「ブラッドフルーツは、増血剤にも使われる血の味のする果実で、それをワインにすることでブラッドワインとなるんです。血を飲まない吸血鬼には必須なんですよ」

「じゃあ、育てようか。アルトリウスさんの為に」

「え」

「それはつまり……」

 私はけろっとした顔で言う。

「二人とも此処に住みなよ」

「し、しかし……!」

「ご迷惑になるのでは⁈」

「全然! じゃあ、ブラッドフルーツの種を購入……」

「私持ってます」

「じゃあ、くださいな」

「はい」

 そう言って私は種を貰った、ハートの形をしている。

 可愛いな。

「じゃあ畑広げて植えるか」

 今の畑じゃ手狭になってきたので木を切り倒し、畑を拡張する。

 開墾し、畑にして種を植え水をやる。

「早く芽を出せブラッドフルーツ」

 そんな事を言いながら水をかける。

「どれくらい時間かかるの?」

「一年はかかるかと……」

「芽を出すのに?」

「はい……」

「早く収穫できるようになれー」

 と言いならが肥料の入った水をかける。

 体がチクチクしてきた。


「じゃあ、私寝ますんで、後はシルヴィーナ。お願いね」

「はい!」

 のそのそと自宅に戻り棺桶に入ってぐっすりと眠った。


「こ、梢さん‼」

「ふぁ⁇」

 夕方頃たたき起こされて畑に連れて行かれる、すると。

「……なんか子どもくらいの背丈だけど木になってるねぇ」

「これ、間違いなくブラッドフルーツの木です」

「マジかぁ」

 そういえば、ここの作物、皆成長早いし、実とかもかなり大きいし、良いよな。

「早く実をつけろー」

 そう言って栄養剤入りの水をかける。

 そして他の果物や野菜も収穫する。

「ワイン作るのとかあったらいいかな?」

 とか呟いているとスマフォが鳴る。

「おっと」

 出てみる。

「もしもし──?」

『儂じゃ、神様じゃよ』

「おーちょうど良かった、実はですなぁ」

 神様に事情を説明する。

『それならクラフトと呟いてみるんじゃ、するとクラフト小屋の項目がでできてその中にメーカーという酒だったりジャムだったり、布だったり、糸だったり作れるメーカーを設置できるようになるからの』

「おおー」

『ワインなら酒造メーカーがいいじゃろ』

「あざっす! ところで何で電話を?」

『おぬしは気づいていないようじゃったが、おぬしには儂等の加護がある、それで成長が早まり、その上精霊や妖精が来て作物の成長をさらに早め、肥大化させておるのじゃ』

「えーマジすか⁈」

『おぬしの所のエルフの娘っこは精霊と妖精に関しては何となく気づいているようじゃがの』

「私が気づくのは……」

『当分先じゃろ、おぬしは腐っても転移したての吸血鬼だからな、儂等の愛し子であっても闇の精霊と妖精以外は感知しづらいのじゃよ』

「マジっすかー」

『マジじゃよ』

「ま、いいか。頑張って作物作ります」

『応援しておるぞ、ああそうそう、たまに儂等にも酒とか農作物とかを捧げ物にすると良い事を起こしてやろう』

「現金ですなぁ」

『そういうもんじゃよ』

「お供えするときはどうするので?」

『スマートフォンの「お供え」のアプリを立ち上げ写真で取るとお供え物がこちらに転移される』

「分かりましたー」

『ほっほっほ、楽しみにしておるぞ』

 通話が終わる。

「あの、梢さん。誰とお話を?」

「ん? ちょっと神様と」

「神様ってぇえええ⁈」

「それよかシルヴィーナさん、シルヴィーナさんは妖精や精霊が作物とかを活性化させていたの気づいてたんですよね?」

「はい……」

「言って欲しかったなぁ」

「す、すみません! 何せ、梢さんあんなにもたくさんの妖精と精霊にまとわりつかれているのに」

『私達が見えないのですか?』

『僕達は闇だから多分見えるよ、精霊様!』

「あ、見えた。黒いのが」

 黒い靄の中に何かがいた。

『『『『やったー!』』』』

「どわー⁈」

「梢さんー⁈」

 黒い靄達が私に突撃してきて昏倒する。

「あいたたた……ちょっとは手加減して!」

『ご、ごめんなさい』

『すみません……嬉しくてつい』

 黒い靄──闇の精霊と闇の妖精が私に語りかける。

 どうやら中々気づいてもらえず寂しかったらしい。

「なーんで気づいたんだろ、今頃」

「さぁ……」

 悩んでるとまたスマートフォンが鳴る。

「はい、もしもしー」

『我だ、闇の神だ』

「ご無沙汰しておりますー」

『そなたの体は特別故、世界に馴染むには時間がかかったのだ、世界のルールから外れているようなものだからな。これから時間をかけ、この世界で食物を食べていき、そして眠ることで他の精霊と妖精も見えるようになるだろう』

「解説有り難うございます!」

『困ったことがあったらいつでも電話をするといい』

「あーい」

『ではな』

 通話が終わる。

「あの、もしかしてまた神様?」

「うん、闇の神様!」

「す、凄いですね」

「そだねー」

 引きつるシルヴィーナを適当に流すように私は言った。


「さて、とりあえず。精霊さん、妖精さん、ありがとー!」


 と、叫んでみる。

 見えないけれど。





『愛し子にお礼を言われちゃった!』

『これからも頑張ろう!』

『儂の出番はまだかの?』

『あたしの出番も──!』


 梢の側で聞こえないのを知りながらも嬉しそうに精霊と妖精達はしゃべり出す。

 それをシルヴィーナはどこか遠い目で見ていた。






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