第2話スローライフしてたら突然の来訪者と侵入者




「ふぁ……」

 三日目の夕方がやって来た。

 外に出ると、シルヴィーナさんが猪っぽい生き物を解体していた。

「シルヴィーナさんが取ってきたの?」

「はい!」

 シルヴィーナさんは誇らしげに言った。

「ところでさ、吸血鬼ってこの世界ではどんな扱い?」

「それは……」

 言いよどんだ彼女の反応を見て、良くないものとされてるのが分かった。

「あー、いーよいーよ。今の反応で大体分かったますますこの森から出ない方がいいね」

「で、でも。梢さんは違うと確信しました! この森に認められて生活できるなんて吸血鬼どころか聖女でもありえませんから」

「え、そうなの?」

「はい!」

 ますますここから出ないで暮らすべきだなぁと思った。


「さて、夕方になったし、小屋の中に戻って貰うか」

「あの、聖獣なのですから名前をつけてみてはどうですか?」

「あー……シロガネ?」

 銀色の牛にそう名付けると、より輝き、嬉しそうに声を上げて鳴いた。

「じゃあ、中にいる子にもつけないと」

 そう言って中に入ると──


 ピヨピヨ


「は?」

 無精卵と思われる卵を一日温めていたら、実は有精卵でヒヨコが孵るなんてあり?

「あーこどもが孵ったんだね、良かったねえっと……スバル」

 コケっとスバルは鳴いて、頷き嬉しそうにバタバタと羽をばたつかせた。

「で、この子は……ラン」


 ピヨピヨ!


 ヒヨコランは嬉しそうに私の周囲を駆け回り手のひらにのっかった。

「よしよし」

 ランをふかふかの床に置き、私とシルヴィーナは小屋の掃除を少しする。

 汚れた箇所を捨てるだけで新しいのが出てくるから凄いな、この小屋。

 広い家畜小屋を見ながら、いずれ動物で一杯になるんじゃないかと私は夢想する。


「さて、シロガネの乳搾りしないと」

「バケツ持ってきました!」

「有り難う」


 搾乳用のバケツに乳を搾り続けると、五個分になった、前より増えているし心なしかきらめいているようにも見える。


「試しに飲んでみようか」

「いいんですか⁈」

「うん」


 家に戻り、コップで牛乳を飲む。

 本当はこう言うの衛生上良くないけど、神様に聞いて大丈夫って言われたからやってみた。


「美味しい、最初飲んだ時よりずっと美味しい!」

「今まで飲んだどの牛の乳より濃厚で美味しいです!」


「でも、一日にこれだけ毎日とれるなら少し売ってもいいよね」

「売るといってもどうやって?」

「こうやって」

 残りの四つのバケツをスマートフォンで写す。

 売るモードだ。


 カシャ


 すると、予想通り、バケツは空になった。


 チャリンチャリン、どさ。


 袋がテーブルに現れる、中身を確かめると金貨が200枚。

「最初売った時より増えてる……」

「銀牛の乳ですから、高価なんですよ……というか今のは一体⁈」

「神様から貰ったもの、売るときはこれで売るやつを写すと売却できる」

「な、なんだか凄いですね……」

「残りは冷却庫で冷やそうか、瓶があるし」

「はい!」

 残りを瓶に移し替えて、冷やす。

「疲れたよね、昨日作ったプリンを食べない?」

「ぷりん?」

 そう言って私は小さな器に入ったプリンを出した。

「卵で作ったお菓子なの、寝る前に砂糖とか買って作ったの」

「い、いただきます」

 スプーンでシルヴィーナさんが口にすると目を丸くした。

「美味しい! ぷるぷるしてつるつるしてて……美味しいです!」

「それは良かった」

「さて……」

 プリンを食べ終えてから、私は何かを見る。

「何か買えないかなー家畜系で……」

 スマートフォンの購入画面で、神様からの欄を見る。

 すると、金貨50枚で黄金羊と言う羊を購入できるそうだ。

「よっしゃ、黄金羊、どんなのかしらないけど買うぞ!」

「ぶふっ⁈ 今、黄金羊って言いました?」

「言ったよ?」

「それも聖獣の一つです。 黄金色の手触りの良い毛を毎日刈らせてもらえるんです、愛情をかけるほど、量は大きくなります」

「よし、買おう。シルヴィーナさんにベッド作りたい」

「せ、聖女や教皇、王族が使うような代物ですよ‼」

「かまへんかまへん、いつまでもシルヴィーナさんが雑魚寝は可哀想だし」

「梢さん……」

「ぽちっとな」

 購入ボタンを押すと、金貨が半分になった。

 そして、私とシルヴィーナは小屋へ向かう。

 すると黄金の毛の羊がいた。

「来てくれてありがとうねー」

 というと、羊はメェ~~と嬉しそうに鳴いて私にすりよった。

「今日から君の名前はゴルドだよ、よろしくね」

 ゴルドは嬉しそうな顔をした。

 私は毛を丁寧にハサミで刈り取り、昨日切り倒した木と組み合わせてクラフトした。

 すると、ベッドができた。

「布は別購入したけど、これで雑魚寝とはおさらばだよね」

「本当に、有り難うございます!」

「じゃ、家に運び込もう」

 ひょいとベッドを持ち上げて運びこむ。

 シルヴィーナの部屋に運び込むとシルヴィーナは眠たそうにしていた。

「まだ、毛布は作ってないからあれだけど、休んでね」

「はい、お気遣い有り難うございます」

「おやすみなさい、シルヴィーナさん」

「おやすみなさい、梢さん」

 私はそのまま夜の畑へと出た。


 もう作物達は実っており、しかも肥大化していた。

 大きなカブ、程ではないがかなりずっしりと重く収穫は私一人でやった。

 それを料理したり、そのまま売ったりして新しい種を買い畑を広げていった。


 そんな生活を一ヶ月程続けたとある日の夜。


「……」


 がさがさと音が聞こえる。

 距離はかなり遠いが、すぐにいけないほどではない。

 踏ん張り、一気に加速する。


 すると、布で顔を覆った二人を追いかける──聖職者達が居た。


「ここで何をしている」

 静かに、威圧的に声を響かせると、全員が立ち止まった。

 私が姿を現すと、聖職者達は十字架やニンニクや白木の杭を向けた。

 多少臭いな、とか思うが特に思うことはなく。

 これも神様の加護効果なのかなと一人思う。


「貴様のような吸血鬼がこの神聖な森で暮らしているだと⁈」


 ああ、この人達も目標だったけど、私も目標なんだ、誰から──まぁ、シルヴィーナさんだよな、日中出かけられそうなの彼女位だし。


「だったら何?」


 と言うと白木の杭が飛んできて刺さった。

 血が流れる、いでぇ。

 私は抜くとそれをへし折った。


「なんだと⁈」

 聖職者達はざわめき出す。

 すると、声がした。

 あの子の声が。

「シロガネ」

 巨大になったシロガネが現れ、鼻息を荒くして聖職者を見る。

 私は指さし。

「やっちゃえ」


 ブモー!


 シロガネは突進し、聖職者達は慌てて逃げ出した。


 聖職者達がこの森から居なくなったらしくシロガネは戻って来た。

 その時は元のサイズに戻っていた。


「エルフ達の間で話題になっていた、聖獣を飼い慣らし畑仕事をする吸血鬼……本当に、本当にいたのか……⁈」

「はい、私でーす」

「どうかお願いがある、私の事はいい。母を保護してくれないか⁈」

「アルトリウス‼ 貴方を置いてはいけません‼」

「面倒なので二人とも保護保護ー」

 私は二人を抱えてその場から離れた。

 シロガネはちょっと早い速度で付いてきてる。


 取りあえず朝方になるのを待った。

「ふぁー、梢さん、おはよう……その方達は⁈」

「その前にちょっと質問ー。シルヴィーナさん、街にたまに行って同胞エルフに私の事話してた」

「う、バレてしまいましたか。はい、そんな加護を持つ人物居ないと言ったのですが、ちょっといただいた黄金羊の毛や黄金鶏の卵を見せると皆半信半疑ながら信じるんです……」

「なるほど……後の話はちょっと眠いから夕方になってからしよう、眠い……」

 私は二人を置くと、そのまま棺桶の中に入り眠りに付いた。

 さて、どんな事が起きてるのやら──






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