神森の開拓者~異世界転生で吸血鬼になったけど、スローライフしたい~

ことはゆう(元藤咲一弥)

吸血鬼になって異世界スローライフ!

第1話吸血鬼になってスローライフしたい~矛盾の塊~




 その日は私の心とは違い、とても澄んだ晴れの日だった。


 日課の散歩に出掛けていたら、急に知らない男の人とおじいちゃんのいる雲の上に居た。

 私にも何が起こったか分からない。


「すまんのぉ、闇の神と討論して熱くなったら儂等神の雷をおぬしにぶつけてしまったんじゃ」

「はぁ」

 あんな雲一つない空からゴロゴロと不自然に鳴っていたのはそれか、と今気づく。

「ソレで、其方は死んでしまった。すまない」

 白い服を着たおじいちゃんと、黒い服に黒髪の男性はそう言って頭を下げた。

「お詫びに、おぬしを別世界でやり直しをさせて貰おうと思っている」

「要望があれば可能な限り応じよう」

 と二人が言うので私は悩んで口にした。

「あのですね、私吸血鬼になりたいんです」

「それなら可能だが」

「でもスローライフしたいんです、動物飼って畑耕して」

「それは吸血鬼でやりたいことなのか?」

 訝しんで男性は言う。

 そりゃそうだ、吸血鬼は植物枯らすもん!

 水だって苦手だ。

「やりたいんですよ、吸血鬼にはロマンがある!」

「ふーむ、では『神森』と呼ばれる『始祖の森』におぬしをその姿のまま吸血鬼に転生させよう、ただし、普通の吸血鬼とはまるっきり別物と解釈してくれ、連絡が必要ならおぬしのスマートフォンを使って連絡してくれ」

「はいなはいな」

「それと、街で買い物──等はできんだろうからスマートフォンで売買をできるようにした、それで金を入手し、発展させていけ」

「おおー」

「それと餞別に種を」

 おじいちゃんはそう言って袋を渡してくれた。

「家畜を取りあえず二匹渡そう、牛、蚕、鶏、羊、どれがいい?」

 男性が言うので私はしばし考え。

「牛と鶏で」

「よし、分かった」

 男性はそう言った。

「スマートフォンの電源はお前さんの活力だから毎日元気よく過ごす事じゃ、後クラフト能力と鑑定能力、異世界の言語発音読み書き能力を追加しておこう」

「了解でーす」

「ではな」



 そうして場面が変わり、森の中に居た。

 死んだ直前の格好のまま。

 水を見てみると、目は真っ赤で髪は黒く、口を開けると牙があった。

「へー水には映るんだ。いや、私普通の吸血鬼じゃないから違うのかも?」

 と考えていると、すぐ側に一軒家と動物小屋らしきものがあった。

 動物小屋には囲いがある。

 私は動物小屋に入ると変わった牛と鶏がいた。

 牛は銀色に輝いており、鶏は黄金色をしていた。

「……」

 問答無用でスマフォを取りだし、すっからかんになった電話帳の創造神の欄をタップし電話する。

『何かあったのかのう?』

「あのー牛が銀色で、鶏が金色なんですが」

『ああ、そやつ等は餌ではなくお前さんの愛情が餌の聖獣じゃ、愛情を与えれば極上の乳や卵が得られるぞ』

「あーそうなんですか」

『そうじゃ、そのためにはブラシが必要じゃな、ほれ』

 と、ブラシが現れ落ちる。

 私はブラシを手に取る。

『あと、外に出してあげるのもてじゃぞ、そやつ等は賢いから言えば出るし、戻る』

「ありがとうございますー」

 私は通話を終え、家畜、いや聖獣を撫でる。

「これから宜しくねー」

 二匹は鳴いた。

 嬉しそうに。

 私はブラシをかける。

 そして頭上を見上げ、月が出ているのを見る。

「外に出すのは寝ている間がいいわね」

 そう呟くと、私は一軒家に向かう。

 道具箱があり、農業道具などが一式入っていた。

「イージーモードじゃん」

 そんな事を言いながら、畑を作り、耕し、種を蒔いた。

 どんなものが実るのだろうと思いながらじょうろで水をかける。

 そして斧で木を切り倒し、薪を作る、家に暖炉があったから。

 そうこうしていると、ちくちくと体が痛みが感じ始めたので、動物小屋に入り。

「外でていいよー」

 というと、二匹は外に出て寝転んだりしていた。

「おやすみ」

 挨拶をすれば、返事が返ってきて、私は手を振って一軒家に入った。

 寝室には棺桶。

 私は棺桶に入るとそのまま、眠りについた。


 遠くから見ている影なんか気づかずに。





「ふぁーあ」

 夕方起きると私は小屋に向かった。

「小屋に戻って──」

 そういうと小屋に戻った。

 畑仕事をしてから小屋に向かうと乳を張らした牛さんと、黄金色の卵を複数個産んでいる鶏さんがいた。

「え、ちょ、マジ⁈」

 私は慌てて卵を一個残して他のだけ貰うと、家に戻り、搾乳のバケツを持って小屋に戻り乳搾りをして、バケツが三個ほど満たされると落ち着いたのか牛は眠り、鶏は既に眠っていた。

 私はふぅと息をして、バケツを一つずつ持って家に入り、スクランブルエッグと牛乳で朝食ならぬ夕食を取った。

 牛乳は濃厚で美味しく、スクランブルエッグも卵だけなのに旨みが凝縮されていた。

「よし、売ろうか」

 バケツ二杯分と、卵三個をスマートフォンの「売る」の機能を使いカメラに収めると、牛乳だけ鳴くなり、バケツは空になった。

 卵も皿に盛り付けてたのだが皿だけ残された。

 チャリンチャリン、と音がした。

 袋が出現し、金貨が四十枚入っていた。

「ワーオ」

 鑑定してみても金貨四十枚と出た。

 どれほど価値があるかは分からないが、金貨だ、きっとかなりのお金だろう。

 そう思いながら家の外に出ると人影っぽいのが木の上に居た。

「どなたですかー!」

「⁈」

 その人物は枝から足を滑らせた。

「危ない!」

 私は駆け寄り、キャッチした。

 軽いな。

 あ、そうか私吸血鬼じゃん。

「あ、有り難うございます」

「いえいえ」

「あ、あの。貴方は吸血鬼ですか?」

「んー神様に吸血鬼にしてもらった」

「はい?」

「血はあんまり吸いたいと思わないかなー今日のご飯卵料理と牛乳だったし」

「ええ⁈」

 落ちてきた人──耳がとがっている女性は驚いている。

「こ、この始祖の森で何を?」

「スローライフ」

「はい?」

「あ、えっと。畑作って、動物飼って自給自足を目指してる」

「あの……此処がどんな所か知らないんですか⁈」

「知らない」

「……私はシルヴィーナ。貴方は」

こずえ。梢御坂みさか

「極東の国の吸血鬼⁈ そんな吸血鬼が何故……」

「あー」

 私は異世界の人間だということを除外して、神様達に転生させられたこととかをシルヴィーナさんに伝えた。

 すると納得したようだった。

「なら、納得いきます。始祖の森はエルフも立ち入らぬ森ですから」

「どして?」

「神聖で、木等も神の加護無しでは切れないからです。『神森』と呼ばれる一種の森です」

「ふーん……」

 私は家にも取り、斧を取り出した。

 そして昨日切った木の隣の木に斧を当て、振り下ろす。


 バキ……メキョ……


 木は倒れ、私はソレを抱えて、家の前に持ってきた。

「切れたよー」

「と、と言うことは貴方は神の加護をいただいてるということですね⁈ どうか是非私をお供にさせてください‼」

「いいよー」

「即答⁈ 迷惑じゃないんですか⁈」

「全然ー。日中は私寝てるからその間手入れしてくれると嬉しいな」

「是非!」


 こうして、私はシルヴィーナさんという日中に働いてくれる人を見つけた。

 シルヴィーナさんは、宿無しだったので、家を見つけた。

 ただ、ベッドが無いので早めに羊を飼いたい。

 買えるかな?




 こうして、私の異世界吸血鬼だけどもスローライフが幕を開けたのだった。

 吸血鬼要素はどこか?

 知らんがな、取りあえず日中は動くのはできない位かな、眠気とチクチク感で。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る